ヴィキングル・オラフソンの「Opus 109」を聴く

どこまでも柔らかく、どこまでも美しい。

amazon music unlimitedは
すばらしい。
話題の新譜もちゃんと
聴くことができるのですから。
最近繰り返し聴いているのは
ヴィギングル・オラフソンの
最新アルバム「Opus 109」。
ベートーヴェンの作品109を
メインに据えたプログラムに
魅了されています。

「Opus 109」
ヴィキングル・オラフソン

今日のオススメ!音盤

J.S.バッハ:
 平均律クラヴィーア曲集 第1巻
  ~プレリュード第9番
   ホ長調BWV.854
ベートーヴェン:
 ピアノ・ソナタ第27番ホ短調Op.90
J.S.バッハ:
 パルティータ第6番ホ短調BWV.830
シューベルト:
 ピアノ・ソナタ第6番ホ短調D.566
  ~第1楽章、第2楽章
ベートーヴェン:
 ピアノ・ソナタ第30番ホ長調Op.109
J.S.バッハ:
 フランス組曲第6番ホ長調BWV.817
  ~第3曲

ヴィキングル・オラフソン(p)
録音:2025年

ベートーヴェンの作品109をメインに、
となると、多くの場合は
Op.109・110・111の
晩年のソナタ3曲を弾ききるのが
当然の流れといえます。
しかしオラフソン、上記のような
アプローチで攻めてきました。

今日のオススメ!

すべてホ長調・ホ短調の作品で
統一するという特殊なプログラムです。
第一曲のバッハBWV.854は、
そういう意味で、
プログラム全体の前奏曲として
置かれたものでしょう。
わずか1分40秒程度ですが、
繊細で透明な音の流れが、
プログラムの深遠さを予感させます。

続いてベートーヴェンのソナタ
第27番ホ短調Opus90。
第1楽章の出だしの音からして
違います。
粒立ちのよい、
きらめきのあるピアノの音が、
スピーカーから飛びだしてきます。
何よりも、弱音部の繊細さと美しさに
心を奪われます。
さらに第2楽章の
優しさと安らぎに満ちた表現。
ベートーヴェンのOpus90は、
こんなにも深い陰影に満ちた
曲だったのかと
改めて思い知らされました。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集の
一曲として聴くときとは違った表情を、
オラフソンのこの演奏は
聴かせてくれるのです。

そしてバッハのパルティータBWV.830。
全集の一曲として演奏される際には、
劇的な表現で聴かせるピアニストが
少なからず存在するのですが、
オラフソンのアプローチは
まったく逆です。
どこにも力んだところがありません。
ごく自然体で表現しています。
それでいて曲の輪郭が
ぼやけることがなく、
7曲の個性が際立つように
演奏し分けているのです。
アルバム全体を聴き通したとき、
本曲は第一のクライマックスと言える
表現となっているのです。

さらにシューベルトのソナタ
第6番ホ短調D.566。
シューベルトのピアノ・ソナタとしては
あまり印象に残る曲ではありません。
しかし、バッハのBWV.830と
ベートーヴェンのOpus109を
自然に連結させる味わい深い一曲として
そこに位置しているのです。

いよいよメインのベートーヴェン。
Opus109。
やはり美しさを
前面に押し出した演奏です。
作品109~111の
連続演奏に見られるような
厳粛さや荘厳さは影を潜め、
この曲の柔らかさと美しさが
耳に心地よく響き渡るのです。
それでいてスケール感は
しっかりと維持され、
こぢんまりとまとまったりは
していないのです。
もちろん第2楽章は
輪郭のはっきりした音づくりで、
曲の構造を明らかにするとともに、
雄大な音楽世界を創り上げています。
第3楽章は一転して再び柔らかく、
そして咀嚼して味わわせるかのような
展開を見せます。
主題と6つの変奏からなる
この第3楽章は、
広く知られているように、
バッハのゴルトベルク変奏曲との
関連をイメージさせるのです。
オラフソンのアプローチは、
前作「ゴルトベルク変奏曲」からの
流れとして
とらえるべきものなのでしょう。

最後は3分足らずの
フランス組曲第6番で
しっとりと締めくくります。
まるで一篇の映画の終末の
エンド・ロールを眺めているような
錯覚に陥ります。

1770 Beethoven

本プログラムは、
通して聴くべきものなのでしょう。
それによって、
バッハのパルティータも、
ベートーヴェンの2曲のソナタも、
シューベルトの2楽章のソナタも、
それぞれが全集の一部として
弾かれたときとは異なった輝きを
放っていることに気づかされるのです。
そして、パルティータが
ソナタOpus109の雄大な美しさを
際立たせる一方で、
ソナタOpus109は
BWV.830の構造美を再認識させる
効果を生んでいるのです。
D.566も、単なる
つなぎとしての音楽にとどまらず、
両曲の間に置かれることによって
その旋律の美しさが
引き立っているのです。
バッハ、ベートーヴェン、
シューベルトの音楽が、
まるで深い対話をしながら
聴き手に語りかけてくるのです。
そこに「ドイツ的重さ」はありません。
どこまでも柔らかく、
どこまでも美しい、
結晶化された音楽があるだけなのです。
ヴィギングル・オラフソン、
やはり恐るべきピアニストです。

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それを安価で提供してくれる
amazon music unlimitedも
恐るべきシステムです
(まあ、そのうち値上げされたり、
頃合いを見て
配信が終了したりするのでしょうが)。
次から次へと登場する新譜を、
すべて購入するだけの資力は
私にはありません。
ストリーミングを活用して
存分に味わいたいと思います。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

(2025.12.16)

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〔オラフソンのYouTubeチャンネル〕
「Opus 109」についての
Documentなる動画が
アップされています。

Víkingur Ólafsson on album ‘Opus 109’

〔オラフソンの音盤はいかがですか〕

Geek_Anis_StudioによるPixabayからの画像

【今日のさらにお薦め3作品】

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ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集
ベートーヴェン:後期弦楽四重奏曲集

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