イルマ・イサカーゼのゴルトベルクを聴いて驚く

美人ジャケット盤は演奏も素晴らしい

美人なお姉さんが
ジャケットを飾っている音盤を見ると、
つい買ってしまいます。
本盤もかなり前から
狙っていたのですが、
気づいたら入手困難、ようやく
中古盤で見つけることができました。
2004年の録音ですから、
すでに20年前。
お姉さんイルマ・イサカーゼは
1976年生まれであり、
このとき20代後半だったはずです。
聴いてみました。
びっくりしました。

Irma Issakadze

J.S.バッハ:
 ゴルトベルク変奏曲 BWV.988

イルマ・イサカーゼ(p)
録音:2004年

美人ジャケット盤は、演奏がハズレでも
後悔することがないという
利点(?)があります。
したがって演奏にあまり期待を持たずに
買っているのですが、
この演奏には驚きました。

J.S.バッハの「ゴルトベルク変奏曲」は、
32小節からなる「アリア」を
最初と最後に配置し、その間に
アリアの32音の低音主題に基づく
30の変奏が展開され、
全32曲となる構成です。
各曲は2部構成で
前半後半がそれぞれリピートされます。
本盤は、まずその第一曲「アリア」から
引きずり込まれてしまいます。
他には見られないような
装飾音の付け方、
ところどころに現れる独特のリズム感、
完全に曲を自分のものとして
消化しきっている感があります。

そこから展開される変奏も見事です。
30曲すべてが
異なる煌めきに満ちています。
演奏時間は、
Disc1(アリア~第15変奏)が39:53、
Disc2(第16変奏~アリア)が45:24、
計85分ちょっととなっています。
おそらくリピートを
すべて行っているのでしょう、
かなり長い演奏時間となっています。
しかし、飽きがくることはありません。
速いテンポで弾ききったり、
あえてリズムを崩したり、
聴き手の心に刺さってくるような
アイディアが随所に
盛り込まれているのです。

後半、第26変奏あたりから
テンポは次第にゆっくりめとなり、
音楽そのものを
じっくり聴かせようとする方向へと
変わっていきます。
そして静かに最後のアリアで
幕を閉じるのです。

今日のオススメ!

本盤のもう一つの特徴として、
録音が優秀であることも挙げられます。
ピアノの音が鮮明です。
残響音がほとんどなく、
一音一音の粒立ちが良く、
非常にクリアであり、
生々しい音でピアノが迫ってきます。
私の再生機がSACD非対応であるため、
CD音しか聴いていないのですが、
SACD音で再生すれば、
さらに美しく響くのでしょう。

ネットで情報を検索してみると、
やはり本盤を評価している方は
多いようです。
この素敵な演奏(と、素敵なお姉さん)の
存在に、20年間気づかずにいました。
なんという不幸!

私はバッハの音楽が
あまり好きではなく、
そしてゴルトベルクはその中でも
苦手な曲であり、結果として
これまで聴いた音盤も
数少ないものとなっています。
遅まきながらこの盤を聴き、
はじめてゴルトベルク変奏曲の
本来の姿に出会えたような気さえ
してきます。
大きな収穫でした。

美人ジャケット盤を
買い集めている立場からすると、
こう言いきることができます。
「美人ジャケット盤には名盤多し」
(自分の感覚が、ジャケットの
美人お姉さんの笑顔によって
麻痺させられている
だけかもしれませんが)。
何はともあれ
やはり、音盤は愉し、です。

(2024.4.28)

〔イルマ・イサカーゼの音盤〕

Bach: Six partitas
Italian Concerto
アザラシヴィリ

〔ゴルトベルク変奏曲の音盤〕

BEATRICE RANA
Vikingur Olafsson
Igor Levit
Peter HによるPixabayからの画像

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