ラモー「ピグマリオン」を聴く

シンプルで素敵なラモーの一幕オペラ

以前DHM-BOXに収録されている
ラモー歌劇「イポリートとアリシー」
組曲(管弦楽組曲)
を取り上げましたが、
それ以外にも2枚のラモー作品が
収録されています。
今日の一枚は、
バレエ付きオペラ「ピグマリオン」。
一幕ものというシンプルな構成と
分かりやすい音楽が素敵な作品です。

DHM-BOX1

ラモー:バレエ付オペラ「ピグマリオン」

Rameau Pygmalion

ラモー:
 バレエ付オペラ「ピグマリオン」

ジョン・エルウィス…ピグマリオン(T)
ラシェル・ヤーカー…愛神(S)
ミーケ・ファン・デァ・スレゥス
 …セフィーズ(S)
フランソワ・ファンヘッケ…彫像(S)
リヒテ・ファン・デァ・メーア(vc)
ボブ・ファン・アスペレン(cemb)
ラ・プティット・バンド
パリ・シャペル・ロワイヤル合唱隊
フィリップ・ヘレヴェッヘ(合唱指揮)
グスタフ・レオンハルト(指揮)
録音:1980年

ジャン=フィリップ・ラモーは、
1683年生まれ(没年1764年)の、
バロック期のフランスを代表する
作曲家であり、
音楽理論家でもありました。
作品としてはクラヴサン曲が
広く知られているのですが、
それだけでなくオペラやバレエの作品も
数多く残しています。
同世代のヘンデルのオペラの陰に
隠れがちなのですが、
根強い愛好家の多いのも
確かなことです。
1748年に作曲された、
このバレエ付きオペラ「ピグマリオン」も
そのうちのひとつといえます。
一幕ものであり、50分未満という
コンパクトな構成もまた、
親しみやすさに
繋がっているのでしょう。

1683 Rameau

ギリシア神話に由来する筋書きは
よく知られているとおりです。
現実の女性に失望していた
ピグマリオンは、
自ら理想の女性を彫刻しました。
やがて彼はその彫刻に
恋をするようになるのです。
恋人であるセフィーズに去られた彼は、
その思いを一層募らせ、
彫像が人間になることを願いました。
叶うはずのない恋に憔悴していく
ピグマリオンを憐れんだ
愛神アフロディーテは、
彫像に命を吹き込みます。彫像が
ピグマリオンへの思いを打ち明け、
互いの愛が実るのです。

今日のオススメ!

筋書き同様、音楽も
分かりやすく親しみやすい旋律が
いくつも登場します。
独唱者4人の中で、
唯一の男声・エルウィスが
存在感のある歌唱を聴かせてくれます。
現代に引き寄せてしまえば
単なるオタクになってしまう
ピグマリオンを、実に堂々と歌い上げ、
清々しい人物像を描き出しています。

愛神のヤーカー、
恋人セフィーズのスレゥス、
そして彫像のファンヘッケの
3人のソプラノも、
登場機会は決して多くはないものの、
凜々しい歌声を聴かせます。
パリ・シャペル・ロワイヤル合唱隊の
合唱も見事です。
ジャケットの裏には
クレジットされていないのですが、
合唱指揮はフィリップ・ヘレヴェッヘが
行っていて、
精緻な合唱に仕上げています
(パリ・シャペル・ロワイヤルは
ヘレヴェッヘの合唱団)。

ラ・プティット・バンドの快演も
特筆ものでしょう。
巨匠レオンハルトが楽譜の隅々にまで
神経を巡らせ、
緩急を自在に操ったような
指揮ぶりを聴かせてくれます。
彫像に生命が宿ったことが
演奏そのものからも
十分に感じ取ることができる
終盤の音楽のまとめ方は
見事としかいいようがありません。
ラモーの音楽の魅力がひしひしと
聴く者に伝わってくるような演奏です。

「ピグマリオン」を収録した音盤は、
近年ではルセ盤やクリスティ盤が
登場し、彩り豊かになりましたが、
本音盤こそラモー「ピグマリオン」演奏の
先駆的存在であり、その存在は
無視することなどできないでしょう。
繰り返し聴きたくなる演奏です。
やはり、音盤は愉し、です。

※本作品はバレエ付きオペラであり、
 バレエも重要な要素なのですが、
 その点は音盤では
 どうしようもありません。
 映像盤の登場を待ちたいと思います。

(2024.3.17)

〔関連記事:ラモー作品〕

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