モーツァルトの時代のオーボエ四重奏曲

ピリオド楽器によるオーボエ四重奏曲集

オーボエが主役となる室内楽曲・
オーボエ四重奏曲は、探してみると
意外に少ないことに気づきます。
検索して出てくるのは
モーツァルトぐらいです。
でも、そのモーツァルトも
K.370の1曲しか作曲していないため、
音盤をつくるとすれば、
モーツァルトの他の室内楽作品との
組み合わせとなることが多いようです。
本盤は、モーツァルトと
同時代の作曲家のオーボエ作品と
抱き合わせたプログラムで、
題して「モーツァルトのまわりで
~オーボエ四重奏の黄金時代」。
魅力的な音楽が詰め合わされています。

モーツァルトのまわりで
~オーボエ四重奏の黄金時代
ベルナルディーニ四重奏団

今日のオススメ!音盤

J.C.バッハ:
 オーボエ四重奏曲変ロ長調 WB.60
モーツァルト:
 オーボエ四重奏曲ヘ長調K.370(368b)
ボクサ(父):
 とっておきのロマンス ヘ長調
ドッツァウアー:
 オーボエ四重奏曲ヘ長調 Op.37
ロッラ:
 オーボエ小四重奏曲ハ長調 BI.425
ドルシェツキー:
 キルンベルガー氏による
  4声のカノン イ短調

ベルナルディーニ四重奏団
アルフレード・ベルナルディーニ(ob)
チェチーリア・ベルナルディーニ(vn)
ジモーネ・ヤンドル(va)
マルクス・ファン・デン・ミュンクホフ(vc)
録音:2020年

1曲目、
ヨハン・クリスティアン・バッハの
「オーボエ四重奏曲」は、
もともと弦楽四重奏曲として
作曲されたものなのですが、
現在はオーボエを最上声として
演奏されることが多い曲です。
バッハ一族の音楽らしい
典雅な趣が特徴です。

2曲目が本命のモーツァルトです。
愁いに満ちた旋律の
第2楽章も好きなのですが、
それを受けての躍動感に満ちた
第3楽章が魅力的な一曲です。
ベルナルディーニは
確かな技巧と華やかな音づくりで
この曲の魅力を十分に引き出すことに
成功しています。

3曲目は
シャルル・ボクサ(1760c-1821)。
ネットで検索すると、
「通貨偽造・窃盗・重婚の三重の罪に
問われイギリスに逃亡」などと
とんでもない経歴が出てくるのですが、
生没年が異なりました(1789-1856)。
収録されているのはどうやら父親の
シャルル・ボクサの作品のようです。
8分程度の単一楽章の曲ですが、
オーボエが前面に出っぱなしで
歌いまくっているといった
印象の曲です。
オーボエという楽器の魅力を
再認識させてくれる曲であり演奏です。

モーツァルトのまわりで

4曲目のドッツァウアーの
オーボエ四重奏曲は、4楽章の構成で
20分強の演奏時間という、
かなり立派な作品となっています。
ドッツァウアーも現在
あまり顧みられることのなくなった
作曲家ですが、第2楽章の
哀愁を誘う旋律を聴くかぎり、
「もっと有名になってもいいのに」と
思ってしまいます。

5曲目のロッラも初めて聞く名前です。
ところが調べてみると
ヴァイオリンとヴィオラの名手であり、
ヴァイオリン協奏曲を20曲、
ヴィオラ協奏曲を15曲も
作曲したとあるのですから驚きです。
かなりの多作家だったのでしょう。
このオーボエ小四重奏曲は
2つの楽章からなり、
演奏時間は8分程度です。
ドッツァウアーに比べると
かなり軽めの作品であり、
オーボエ「小」四重奏曲である理由が
わかります。
しかし愉悦に満ちた音楽が
展開していきます(特に第2楽章)。

最終曲ドルシェツキーの名前も
初めて聞きます。
本番収録の作曲家の中で、
このドルシェツキーだけは
オーボエ奏者であり、
オーボエと弦楽三重奏のための曲は
17曲ほど書いているようです。
そのうちの一曲
(単一楽章で約3分)なのですが、
しっとりとした幻想的な音楽が
綴られていきます。

オーボエ奏者・ベルナルディーニは、
本盤の演奏のために、
なんと5種類のオーボエを
使い分けています。
構造的にどこがどう異なるのか
素人の私には理解できませんでしたが、
音色はやはり違いが聴き取れます。

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管楽器主体の曲というと、
これまではクラリネットと
フルートぐらいしか
聴いてきませんでした。
オーボエはかつて宮本文昭の音盤を
いくつか聴きましたが、
宮本はどちらかというと
クロスオーヴァー的な分野でしたので、
クラシック音楽としてのオーボエという
印象は希薄でした。
今回本盤に出会い、
オーボエの魅力を再確認した次第です。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

(2025.1.14)

〔関連記事:モーツァルトの音楽〕

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〔オーボエ四重奏曲の音盤〕

B. HochsprungによるPixabayからの画像

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