アーノンクールのベートーヴェン4&5

アーノンクールからのラスト・メッセージ

早いもので、指揮者・アーノンクール
亡くなってすでに7年が過ぎています。
このところ、オーケストラ曲など
カロリーの高い音楽を
あまり聴かなくなっていたのですが、
ふとしたことから
アーノンクールの音盤を聴き、
その芸術性の高さを
再確認した次第です。
今日聴いているのは
最後の録音となった一枚です。

Beethoven 4&5

ベートーヴェン:
 交響曲第4番変ロ長調op.60
 交響曲第5番ハ短調op.67「運命」

ニコラウス・アーノンクール(指揮)
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
録音:2015年

発売後しばらくして購入しましたが、
あまり聴くことなく
CD棚の片隅に追いやられていました。
久しぶりに取り出して聴いていますが、
やはり素晴らしい演奏です。
1990年代の交響曲全集録音は
オケがヨーロッパ室内管弦楽団で
あったのに対し、今回は古楽器団体
ウィーン・コンツェトゥス・ムジクス。
私の耳が古楽器に馴染んできたせいか、
購入当初より音が豊かに
響いてくるように聴き取れます。

私はあまり第4番を
好んで聴く方ではありません。
交響曲全集に手を伸ばすと、
5番もしくは7番を
取り出してしまうことが多く
(最近は2番の良さが分かってきたが)、
4番をスルーしてしまうことが
少なくなかった気がします
(おそらくみなさんも
そうなのではないかと思うのですが)。
しかし、アーノンクールの4番は
深みを感じさせる演奏です。

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まず、思ったよりも
ゆったりめの演奏です。
もちろん往年のロマンティックな
演奏に比べると
格段に早いのでしょうが、
他の古楽器演奏の録音に比べると、
ややゆったりしているように感じます。
本盤の録音データでは、
 第1楽章 12:29
 第2楽章 9:28
 第3楽章 6:01
 第4楽章 6:50
となっています。
これが90年代の旧録音では、
 第1楽章 12:14
 第2楽章 9:17
 第3楽章 5:43
 第4楽章 6:41
なのです。
最近よく聴いていたインマゼールが
アニマ・エテルナを振った盤では、
 第1楽章 10:19
 第2楽章 9:39
 第3楽章 5:26
 第4楽章 6:37
ですから、第2楽章以外は
ゆっくりとしているのです
(もちろんそれぞれの演奏で
反復の有無などがあり、単純に
時間だけでは判断できないのですが)。
そうしたテンポ感以上に、
曲全体に力強さが漲っているのが
この演奏の特色です。
一般的にベートーヴェンの交響曲の
奇数番号は男性的、偶数番号は女性的、
などと言われています。
特にこの第4番は、
シューマンが評したように
「二人の神話の巨人(第3番・第5番)に
挟まれた乙女」の
イメージが強いのですが、
本盤の第4番を聴く限り
決して麗らかな乙女が像を結びません。
ところどころで
筋肉美を見せつけているのです。
優しい表情を見せたかと思えば、
猛々しい一面も見せる、
まるでボディメイクした
藤澤五月さんのような演奏なのです。

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第5番も、古楽器特有の
テンポの速さは感じられず、
全体としては
落ち着いたテンポ設定です。
したがって、こちらの方も
力強さが目立つ演奏となっています。
ただしエネルギッシュに棒を振ったと
いう単純なものではありません。
ベートーヴェンが緻密に設計した
第5番を、正確にかつダイナミックに
積み上げたような演奏なのです。
一通り聴き終えると、
巨大な建造物を仰ぎ見たような
錯覚に襲われます。

古楽器演奏では、第1楽章を
「速く活発に」駆け抜けるようなタイプが
近年主流となり、
私はそちらの方が好きなのですが、
この盤では一つ一つの音に
意味を持たせたかのような、
腰を据えての演奏となっています。
それでいて、
テンポ感と緊張感を両立させ、
切れの良い響きを
醸し出しているのです。
第2楽章では、
楽譜に隠された曲の素顔を、
丹念に彫刻したかのような
音づくりがなされています。
そして第3楽章では
いよいよ緊張感が高まり、
聴き手の心を頂点まで高めていきます。

最後の第4楽章が圧巻です。
発売元のHPの宣伝文句にあるように、
「トロンボーンの驚くべき強調、
ピッコロの独自のバランス、
最後の和音連打のタメ」など、
聴き慣れたはずのこの曲から、
さらにその奥に隠された素顔を
暴き出したかのような
試みがなされています。
強大な構築物のその最上階に、
とりわけ見事な天守閣が
施されたような印象を受けます。

かつてのロマンチックで重厚な
ベートーヴェンでもなく、
颯爽としてスポーティな
ベートーヴェンでもない、
まさにアーノンクールが
長い音楽人生の末にたどり着いた
ベートーヴェン像が
開陳されているのです。

1770 Beethoven

発売前は、
「2度目のベートーヴェン交響曲全集の
第1弾」という触れ込みだったのですが、
その後アーノンクールの引退発表があり
(2015年12月)、
その4ヶ月後に彼は永眠(2016年3月)、
結局「ラスト・レコーディング」と
なってしまった音盤です。もし、
神が彼にあと幾ばくかの時間を与え、
残り7曲が完成されていたならば、
私たちはどのようなベートーヴェン
交響曲全集を手にしていたのか?

いやいや、それを考えても
どうしようもありません。
この2曲が、アーノンクールからの
ラスト・メッセージとして
残されたことを、
素直に感謝すべきなのでしょう。
やはり、音盤は愉し、です。

〔アーノンクールの音盤はいかが〕
本番と同時期に録音された
ベートーヴェンの
「ミサ・ソレムニス」です。
残念なことに自身への葬送曲と
なってしまいました。

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2007年録音のベートーヴェン
オラトリオ「オリーヴ山上のキリスト」も
素敵な録音です。

エマールのピアノによる
ピアノ協奏曲全集、三重協奏曲、
クレーメルとのヴァイオリン協奏曲など
一連の協奏曲録音も名盤ぞろいです。

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旧全集を含む14枚組のBOXも
素敵なセットです。

〔関連記事:ベートーヴェン交響曲〕

(2023.9.10)

【今日のさらにお薦め3作品】

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