パーセルの劇音楽、ヘンデルのカンタータ

聴きどころはヘンデル、素敵なカンタータ

先週も取り上げてしまった
英国の作曲家・パーセル
今回も演奏は
フライブルク・バロック管ですが、
指揮者は異なります。
パーセルの劇音楽と
ヘンデルの合奏協奏曲から1曲、
そしてカンタータと、
なんとなく統一感のない
組み合わせの様に感じますが、
聴いてみるとしっくりくるから
不思議です。聴きどころは
ヘンデルのカンタータです。

DHM-BOX1

BOX1 Disc36

BOX1 Disc36

パーセル:
 劇音楽「予言者、
     またはダイオクリージャン」

 (Track1-10)
ヘンデル:
 合奏協奏曲 Op6-6

 (Track11-15)
 カンタータ「うるわしきアマリッリ」
 (Track16-20)
ナンシー・アージェンタ(Sp)
マイケル・チャンス(C-T)
ゴットフリート・フォン・デル・ゴルツ
 (指揮&Vn)
フライブルク・バロック・オーケストラ

最初に収録されている曲は、
パーセルが1690年に作曲した
全5幕からなる劇音楽です。
前回も記したとおり私のCD棚には、
パーセルの音楽だけの音盤は、
オペラの「ディドーとエネアス」が
2枚あったきりであり、
BOX2に収録されている
「妖精の女王」「ディドーとエネアス」
「アーサー王」「アブデラザール」からの
管弦楽曲集は貴重でした。
それらの曲に比べて、この曲は、
今ひとつ音盤が少ないようです。
全曲盤として、ヒコックス指揮の
コレギウム・ムジクム90が演奏した
録音があるようですが、
それ以外は検索できませんでした。
しかしながら、聴いてみると
魅力溢れる音楽が展開されていきます。

Track2のソプラノの歌が
まずは印象的です。
リュートか何かの
シンプルな伴奏によって紡がれる歌が
心に染み入ります。
歌(ソプラノに加えて
カウンターテナー)はこのほかにも
何ヶ所かに挿入されています。
この歌に前後する管弦楽曲と合わせて、
わかりやすい素敵な音楽が
紡がれていきます。
さらにTrack9に入っている
「Chaconne」のもの悲しく美しい旋律。
室内楽的で簡素な編成のこの曲を、
繰り返して
何度も聞き入ってしまいました。
パーセルはこんな素敵な音楽を
創り上げていたということを、
この「DHM-BOX」で理解できました。
この音楽の全曲盤、
そして他のパーセルの音盤を探して
味わいたいと思います。

続いてヘンデルの合奏協奏曲が
1曲入ります。
これがパーセルの劇音楽と
ヘンデルのカンタータをつなぐ
間奏曲的な、
一種のスパイスとして効いています。
そしていよいよ本盤の聴きどころへと
突入するのです。

Purcell & Handel

ヘンデルのカンタータ
「うるわしきアマリッリ」は、
最初に器楽ソナタを配置した
明るい雰囲気を持つ曲です。
バッハのカンタータの様に
劇的ではないのですが、その分、
リラックスして何度でも
聴くことのできる
素敵な曲に仕上がっています。
アリアとレチタティーボが
繰り返される中で、
一つの物語が展開しているものと
考えられます(歌詞対訳が
附されていないため、聴感上の
雰囲気からの判断に過ぎませんが)。

ヘンデルのカンタータにおいても、
ソプラノのナンシー・アージェンタの
歌声が素敵です。
私はどうしてもまだカウンターテナーの
声質が好きになれず、
バロック期の声楽曲については、
その点でその愉しさを十分に
味わえずにいることが多いのです。
本盤も同じで、
これが女性のアルトだったら
どんなに素晴らしいかと、
ついつい思ってしまいます。
頑張ってカウンターテナーの味わいを
見つけ出していきたいと思っています。

それにしても、
BOXは音楽体験が広がります。
こうした音楽は、
単独で出ている盤には
なかなか手が出ないものです。
パーセルとヘンデルの音楽の魅力を
さらに理解することができました。
やはり、音盤は愉し、です。

(2023.2.4)

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