古楽器演奏ゆえの特徴的な存在感を発揮している
この半年間はまり続けている
「vivarte 60CD collection」第1集に
収録されている
ビルスマとインマゼールによる
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ全集。
BOX購入以前にすでに
単独発売されているものを
購入していました。
素晴らしいです。
古楽器の響きになれてくると、
より一層味わい深く感じられます。
「ベートーヴェン:チェロ・ソナタ全集」
Disc1
ベートーヴェン:
チェロ・ソナタ第3番イ長調op.69
チェロ・ソナタ第1番ヘ長調op.5-1
チェロ・ソナタ第2番ト短調op.5-2
Disc2
チェロ・ソナタ
第4番ハ長調op.102-1
チェロ・ソナタ
第5番ニ長調op.102-2
「魔笛」の主題による
12の変奏曲ヘ長調op.66
アンナー・ビルスマ(vc)
ジョス・ファン・インマゼール(fp)
録音:1998年
ベートーヴェンが
多くの器楽曲で試みたように、
チェロとピアノはそれぞれが
対等の立場で演奏されることが
要求される曲となっています。
チェロとピアノは
時には寄り添い合うのですが、
個を主張するような展開が
多くの場面で見られます。
それ故、高い技量を持った
二人の演奏家が必要となるのです。
ビルスマもインマゼールも
自由闊達に旋律を弾ききりながら、
決してお互いを邪魔してはいません。
調和を崩さずに
朗々と歌い上げているのは見事です。
さすがは名手の二人です。
この盤の特徴は「古楽器演奏」であり、
それによって好き嫌いが
分かれると思います。
古楽器の響きに
馴染んでいなかった頃には
見向きもしなかったのではないかと
思うのですが、
その響きの味わい深さに慣れた
今となっては、
聴き飽きない魅力を持っている演奏と
感じます。
フォルテピアノのややくすんだ音色が、
チェロと一体化して捉えられるのです。
現代楽器演奏では
ピアノの煌びやかな部分に
気をとられてしまっていたのが、
古楽器ではそうした部分でさえも
チェロとピアノが一つの音楽として
耳に飛び込んできます。
さて、この曲の構成上、
名手二人の演奏は当然のことであり、
名盤と呼ばれるものの多くは
チェリスト、ピアニストともに
大物を揃えた演奏ばかりです。
多くの方がそうであるように、私も
ロストロポーヴィチ&リヒテル盤、
フルニエ&ケンプ盤、
フルニエ&グルダ盤を
これまで愛聴してきました。
デュ・プレ&バレンボイム盤も
捨てがたい魅力を感じます。
近年登場してきたものでは
ガスティネル&ギィ盤、
カピュソン&ブラレイ盤、
ケラス&メルニコフ盤など
優れたものが目立ちます。
それらの中にあって、本盤は
古楽器演奏ゆえの特徴的な存在感を
発揮しています。
いろいろ愉しめるのはいいことです。
これからどんな演奏が出てくるのか。
ベートーヴェンのチェロ・ソナタ演奏が
ますます活況となっている状況は
素晴らしいことです。
(2021.11.27)
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