ヒラリー・ハーンのベートーヴェン

20年経っても失われない「新しさ」

ヒラリー・ハーン
もはや「若手」などではなく、
押しも押されもせぬ存在と
なってしまいました。
彼女の2枚目のCDが当盤です。
1998年の録音ですから、
もう20年以上の時間が
経ってしまいました。
当盤録音時、彼女はまだ
20歳にもなっていなかったはずです。

ヒラリー・ハーン
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
バーンスタイン:セレナード

Beethoven: Violin Concerto

ベートーヴェン:
 ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.61
バーンスタイン:
 ソロ・ヴァイオリン、弦楽合奏、
  ハープと打楽器のためセレナード

ヒラリー・ハーン(vn)
デイヴィッド・ジンマン(指揮)
ボルティモア交響楽団
録音1998年

多くの才能ある新人が、
デビュー当時は「技巧だけで心がない」と
酷評されることがあるのですが、
この盤が登場したときも
確かそうした批評を
目にした記憶があります。
しかし今、当盤を聴くと、
そうした批評は
的外れであるとしか思えません。
この瑞々しい表現、
決して奇を衒うわけではなく、
自らの豊かな感性を持って
堂々とベートーヴェンと対峙している
演奏です。

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20世紀末までのベートーヴェン演奏は、
とかく「立派」なものが多かったと
感じています(颯爽と弾きこなした
ハイフェッツは別として)。
オイストラフ盤、シェリング盤、
シゲティ盤などが「名盤」として
もてはやされていた頃、
「この曲はなんてつまらないのだろう」と
私はいつも思っていました。
今は違います。
このハーン盤をはじめとして、
曲の魅力をしっかりと感じさせる演奏が
いくつも登場してきました。

併録されているバーンスタインの曲も
素敵です。
この組み合わせも、当盤発表当時には
目を引くものがありました。
新人が発表する協奏曲のCDの場合、
ベートーヴェンならもう一曲は
メンデルスゾーンというように、
定番の組み合わせで
無難にこなそうというものが
ほとんどでした。
ところが当盤は「バーンスタインに
こんなのあったっけ」というような曲を
持ち出してきたのですから驚きました。
しかも2曲を並べて聴くと、
一つのプログラムとして
成立していることに気付かされます。
21世紀に入って、
CDの曲の構成もそれぞれが
工夫する時代になりましたが、
その意味でも当盤は
先駆け的存在だったように思います。

こうした「新しさ」が、
20年経った現在聴いても
全く失われていないのです。
協奏曲は演奏し尽くした感があり、
ここ数年、室内楽の作品集が
多くなっている彼女ですが、
まもなく新録音「PARIS」(ショーソン、
プロコフィエフ、ラウタヴァーラの
作品集)が発売されます。
大いに期待しています。

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※YouTubeに
 彼女のベートーヴェン演奏が
 公開されています。
 こちらの指揮者はスラットキンです。

Hilary Hahn, Leonard Slatkin

(2021.2.11)

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