
名手オリヴィエ・ラトリーのオルガンで
フランソワ・クープランの
「3つのルソン・ド・テネブレ」が
気に入って、何度も聴いていました。
クープランの宗教声楽曲は、
これ以外は小曲で
録音も少ないのですが、
「修道院のためのミサ」という、
なかなかに味わい深い一曲があります。
本盤は
その最新録音(2025年7月現在)です。
F.クープラン「修道院のためのミサ」

F.クープラン:
修道院のためのミサ
キリエ(憐れみの讃歌)
グローリア(栄光の讃歌)
オフェルトリウム(奉献唱)
サンクトゥス(感謝の讃歌)
アニュス・デイ(平和の讃歌)
主よ、我らが王を救い給え
イテ・ミサ・エスト(閉祭)
オリヴィエ・ラトリー(org)
クレマンス・カリ(S)
マルト・ダヴォスト(S)
ジャンヌ・ルフォール(S)
シリル・エスコフィエ(T)
マルク・モイヨン(Br)
ジャン=マルク・ヴィエ(Br)
ジャン=イヴ・エモズ(指揮)
録音時期:2022年
この「修道院のためのミサ」は、
2曲のオルガン曲
「2つのミサ曲からなるオルガン曲集」の
一つです。
もう一つは「教区のためのミサ」であり、
こちらも本盤と同じオルガニストの盤が
リリースされています
(そちらもいずれ取り上げます)。
クープランの時代のフランスでは、
教区向けと修道院向けで
典礼音楽の様式が異なっており、
「修道院のためのミサ」は、
修道院の静謐で内省的な雰囲気に
合わせて作られたため、
厳かな雰囲気に包まれながらも、
全体的に明るく優美な雰囲気の
美しい曲となっています。

本来は声楽曲ではなく
器楽曲(オルガン曲)に分類されることの
多い曲です。
なぜならクープランが作曲したのは
オルガン部分だけだからであり、
基本的にはオルガン独奏曲なのです。
ただし、実際のミサの中で歌われる
聖歌と交互に演奏されることを想定して
書かれたもの、つまり
「アルテルナティム形式」
(聖歌隊とオルガンが交互に演奏する
形式)を前提としての構成であり、
典礼に沿った形式となっているのです。
オルガン演奏部分に
じっくり耳を傾けると、
音色はかなり多彩であることに
気づかされます。
オルガン特有の荘厳な響きの中に、
フランス音楽ならではの
優雅な旋律が織り込まれてあるのです。
色彩感が実に豊かであり、
オルガン奏者・ラトリーが
それを十全に表現し尽くしています。
クープランの旋律を十分に研究し、
オルガンに歌わせているような印象を
受けます。
そうしたオルガン演奏部分と声楽部分が
組み合わさり、
素敵な音楽世界を創り上げています。
決して厳粛一辺倒ではなく、
終始明るく温かい雰囲気が
みなぎっているのです。
歌詞はまったく判りませんが、
旋律だけ聴く分には
心が晴れやかになる気分を味わえます。
録音も秀逸です。
オルガンの艶やかな音色が
しっかりととらえられています。
セッション録音であるため、
オルガンと声楽のバランスも
聴感上問題なく
スピーカーから再現されます。
もっとも、オルガンと声楽が
同時に録音されたものはどうかは
わかりません(別収録され、
編集された可能性もあります)。
何よりも素晴らしいのは、
本盤のジャケット装幀です。
音楽配信が主流となり、
パッケージ音楽が
存亡の危機を迎えている最中、
その流れに逆行する
豪華なパッケージです。
ブックレットも80ページ超と厚く
(日本語訳がないため、
私には意味を成さないのですが)、
それがしっかりと収納される
デジパック構造であり、
まさに豪華な装幀です。
これが標準仕様なのですから、
Chateau De Versailleレーベルは
素敵すぎます。
バロック音楽のオルガン曲といえば
バッハの作品群ばかりが注目されます。
しかしクープランのオルガン曲である
「修道院のためのミサ」も、
バッハの音楽とまったく遜色のない
出来映えであり、広く聴かれるべき
音楽であると感じます。
もっとクープランの音楽を
探検していきたいと思います。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。
(2025.7.29)
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