
新しい録音で聴く「クラリネット五重奏曲」
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(以下、amu)でのクラシック入門、
過去3回は、
ジャンルとしては管弦楽曲、ピアノ曲、
現代楽曲と取り上げてきました。
第4回は室内楽曲です。
室内楽はあまり売れない分野と
いわれているのですが、amuを探すと
かなりの録音が登録されています。
今回はモーツァルトの
クラリネット五重奏曲。
このクラリネットの音色から、
クラシック音楽に
はまっていって欲しいと思います。
それも新しい録音の瑞々しい音色から。
【今日の1枚目】
朱玫玲(メイ=リン・ジュ)

モーツァルト:
クラリネット五重奏曲イ長調K.581
〔併録曲〕
ブラームス:
クラリネット五重奏曲ロ短調Op.115
朱玫玲(cl)
鄧暉屯(vn)
陳偉紅(vn)
陳友梅(va)
黄立生(vc)
録音:2018年
1枚目は
朱玫玲(メイ=リン・ジュ)の録音です。
ジャケット写真を見る限り、
かわいいお姉さんのようですが、
経歴を確認すると
かなりのベテランです。
ネット情報が限られていて、
詳しくはわかりませんが、
台湾の音楽家と考えられます。
現在、台湾のNSO(ナショナル・
シンフォニー・オーケストラ、
しかしアメリカのそれとは別)の
首席クラリネット奏者として
活躍中です。
弦楽の四人も、NSOのメンバーです。
朱玫玲のクラリネットは
温かな音色であり、
日だまりの中に佇む
モーツァルトといったイメージです。
解釈としては奇をてらったところの
まったくない、
スタンダードな演奏であり、
安心して聴くことのできるものと
なっています。
特に第2楽章ラルゲットは、
旋律の持つ美しさを
最大限に引き出しています。
ついついこの第2楽章だけ
繰り返して何度も聴いてしまいます。
台湾の音楽家たちの
高い音楽性を感じさせる演奏です。
恐らくは演奏会の
ライヴ収録なのでしょう、
観客の雑音が入り込んでいるのが
玉に瑕なのですが、その分、臨場感を
感じさせる録音となっています。
なお、この録音は日本では
音盤としては流通していないようです。
【今日の2枚目】
ジェリー・チェ

モーツァルト:
クラリネット五重奏曲イ長調K.581
〔併録曲〕
ブラームス:
クラリネット五重奏曲ロ短調Op.115
ジェリー・チェ(cl)
キム・ヤンウク(vn)
ユン・ウンソル(vn)
イ・ハンナ(va)
イ・カンホ(vc)
2枚目は、韓国のクラリネット奏者
ジェリー・チェの録音です。
クレジットされている名前を見る限り、
こちらは韓国の音楽家集団のようです。
ネット情報によると、
ジェリー・チェは現在、
韓国芸術総合学校の教授であり、
2012年までソウル・フィルの
首席クラリネット奏者を
務めていたとのことです。
ジャケットがまるでK-POPのような
お洒落なデザインです。
クラシックもこれからは
こうした感性が必要なのではないかと
思っています。
演奏もスタイリッシュで
好感が持てます。
解釈そのものは
スタンダードでありながら、
洗練されたセンスの良さが
散見されます。
テンポはやや速めで明るい演奏です。
クラリネット五重奏曲は、
モーツァルトらしい明るさとともに
翳りをふくんだ、
陰影に富む曲想が魅力なのですが、
この演奏は明るい部分に
焦点をあてたものといえるでしょう。
録音も優秀であり、
一つ一つの楽器が鮮明に聞こえます。
クラシック音楽に
馴染みのない方にこそ、
ぜひお薦めしたい録音です。
※録音時期については
情報を検索できなかったのですが、
恐らくは2020年録音と
考えられます。
なお、こちらも音盤は
日本国内で流通していません。
どうも日本は欧米のものばかり
せっせと輸入し、
韓国や台湾の優れた音楽家を
無視している傾向が見られます。
amuの活用は、こうした現状の
打破に繋がるものと考えられます。
【今日の3枚目】
イェルク・ヴィトマン

モーツァルト:
クラリネット五重奏曲イ長調K.581
〔併録曲〕
ヴィトマン:
クラリネット五重奏曲
イェルク・ヴィトマン(cl)
ハーゲン四重奏団
ルーカス・ハーゲン(vn)
ライナー・シュミット(vn)
ヴェロニカ・ハーゲン(va)
クレメンス・ハーゲン(vc)
録音:2019年
3枚目は、以前ブラームスの
クラリネット・ソナタを取り上げた
ヴィトマンの演奏です。

ジェリー・チェ以上に
スタイリッシュであり、
クールで爽やかなモーツァルト像を
つくり上げています。
ウラッハをはじめとする
往年のウィーン・スタイルに
慣れ親しんだ方には、無味乾燥と
感じられる可能性があるのですが、
ローカル色を排し、
楽譜から読み取れることだけを
最大限に音にしたような演奏の方が、
私は好きです。
ちなみに私はヴィトマンが
アルカント四重奏団と入れた
2013年録音の盤を
所有しているのですが、そちらと
甲乙つけがたい
出来映えとなっています。
ハーゲン四重奏団の演奏も素敵です。
ハーゲン四重奏団が
ドイツ・グラモフォンからリリースした
音盤のほとんどを
所有しているのですが、
この録音も素敵です。
艶やかな弦の音色が、
クールなヴィトマンのクラリネットを
強力にサポートしています。
なお、併録曲はヴィトマンの
自作のクラリネット五重奏曲です。
こちらは単一楽章で40分弱という
大作となっています。
むしろこちらの方が
聴き応えがあります。
この音盤に関しては、
購入する方向で考えています。
名盤あまたあるモーツァルトの
クラリネット五重奏曲ですが、
ウラッハ、プリンツ、シュミードル、
ライスターといったアナログ時代の
ロマンティックな演奏よりも、
これら3枚のように
非ローカルな味わいの演奏の方が、
馴染みやすいのではないかと考えます。
amuに加入しているのであれば、
クラシック音楽への入門は
たやすいはずです。
まずはこのモーツァルトの
クラリネット五重奏曲をお試し下さい。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。
(2024.10.20)
〔音盤としてはこの3枚〕
以前、このモーツァルト
「クラリネット五重奏曲」の音盤について
私的ベスト3として
以下の3枚を挙げています。
モラゲス盤・シフリン盤・ハッカー盤
しかし、それ以降、
時代楽器に魅了され、以下の盤を
好んで聴くようになっています。
ナイディック盤・ペイ盤・
ホープリチ(旧)盤
【今日のさらにお薦め3作品】



【こんな音盤はいかがですか】