ヘンデル「メサイア」を年末に聴く

ドイツ語歌詞によるヘンデル「メサイア」

年末に聴くクラシック音楽といえば
ベートーヴェンの第九が
思い浮かぶのですが、
それは日本だけの習慣のようです。
出不精の私は、
年末はワーグナーのオペラを
聴くようにしていた(長い休みでないと
なかなか聴けない)のですが、
カロリー過多に感じるようになり、
今年はヘンデルのオペラやオラトリオを
聴きまくる予定を立てています。
昨日聴いたのは、この「メサイア」です。

DHM-BOX2

BOX2 Disc18~19
ヘンデル:メサイア
(1780年ヘルダーによるドイツ語版)

BOX2 Disc18~19

ヘンデル:
 オラトリオ「メサイア」全曲

(テキスト:
 ヨハン・ゴットフリート・ヘルダー
 による聖書ドイツ語訳詩[1780年])
シャロン・ロストルフ・ツァミール(S)
マリア・リッカルダ・ヴェッセリンク(A)
コビー・ファン・レンスブルク(T)
ライムント・ノルテ(Bs)
ドレスデン室内合唱団
ヴォルフガング・カチュナー(指揮)
ラウテン・カンパニー
録音:2004年

ヘンデルの「メサイア」は、
バッハの「マタイ受難曲」と並んで、
宗教音楽の双璧をなしている作品です。
「マタイ」がメンデルスゾーンによる
復活上演を経て
現在につながっているのに対し、
「メサイア」は
ヘンデル存命時から現在まで
途切れることなく演奏されてきました。
ヘンデルの生前から
演奏されてきたため、
この曲は演奏の場の状況に合わせて、
様々な改変が作曲者によって
なされた曲でもあります。
したがって、「捨子養育院演奏版」
「ダブリン初演版」など、
様々な版が存在します。

1685 Handel

「メサイア」の歌詞は英語なのですが、
英国での大好評を受け、ドイツでも
演奏されるようになりました。
その結果、本盤のような
ドイツ語翻訳版も存在しているのです。
ドイツ語訳の「メサイア」は、
「モーツァルト編曲版」もあるのですが、
そちらはルターの聖書訳に
由来するものであり、本盤は
ヨハン・ゴットフリート・ヘルダー
(1744-1803)によって
新たにドイツ語ヘ翻訳されたものが
使用されています。

実際に聴いてみると、
英語すらろくに聞き取れない
私にとっては、歌詞が
英語であろうとドイツ語であろうと、
ほとんど違和感なく感じてしまいます
(唯一「ハレルヤ」だけは
何度も聴いているため、
違和感を感じてしまうのですが)。

演奏のラウテン・カンパニーは、
ベルリンの古楽器アンサンブルです。
単純なピリオド楽器演奏にとどまらず、
多様な編成で
演奏活動を行っている団体です。
ディスコグラフィをたどってみると、
フィリップ・グラスなどの現代音楽をも
古楽器で演奏したり、
管弦楽オンリーの歌なし版
オペラ・アリア集など、
奇抜な音楽解釈をいくつも行っている、
注目すべき団体なのです。
本盤でも、
設立した指揮者・カチュナーのもと、
きびきびとした演奏を披露しています。
一時代前の宗教作品演奏にありがちな、
重く引きずるような部分が一切なく、
軽やかで美しい表現に終始しています。

ソリストたちも頑張っています。
あまり名前を聞かない歌手たちですが、
ソプラノのツァミール、
アルトのヴェッセリンクの
歌声は美しく、天国的な作品に
ふさわしい旋律を聴かせています。
ドレスデン室内合唱団の
合唱の精度も高く、好感が持てます。

今でこそバッハの方が音楽史上の
重要人物と捉えられているのですが、
「メサイア」を聴くと、
ヘンデルこそ西洋音楽史で
バロックから古典へとつながる
最重要ポイントであることが
よくわかります。
ヘンデル作品は「メサイア」以外にも、
もっともっと聴かれてしかるべき
作品群だと感じます。
ヘンデルに浸って迎える新年が、
より素晴らしいものになることを
期待したいと思います。
みなさん、
よい年末年始をお過ごしください。
やはり、音盤は愉し、です。

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