その3 近現代曲
今年8月末に登場した「小澤BOX」。
繰り返し、しみじみと聴いています。
日本を代表する指揮者・
小澤征爾のCD-BOXであり、
しかも完全限定。
買って良かったと思えるBOXです。

今回は小澤の得意分野、
近現代曲の音盤6枚を取り上げます。
このBOXには、近現代曲が
数多く収録されているのですが、
日本人作曲家のものや協奏曲については
それらでひとくくりにし、
ここからは外してあります。
Disc13

ストラヴィンスキー:
幻想曲「花火」Op.4
バレエ音楽「春の祭典」
シカゴ交響楽団
小澤征爾(指揮)
録音:1968年
Disc20

ストラヴィンスキー:
組曲「火の鳥」(1919年版)
バレエ音楽
「ペトルーシュカ」(1947年版)
ボストン交響楽団
マイケル・ティルソン・トーマス(p)
小澤征爾(指揮)
録音:1968年
まずはストラヴィンスキーの
バレエ音楽3曲を収録した2枚です。
21世紀に入っての
ロト盤やクルレンツィス盤、
90年代のブーレーズ盤、
T.トーマス盤など、今でこそ
名盤に事欠かない状況になりましたが、
かつてはストラヴィンスキーといえば
小澤の代名詞でした。
まだ30代の小澤が、
世界に向けて羽ばたきはじめた、
情熱が迸る名演だと思います。
最もその情熱ゆえの名演が、
現代では冷徹な分析の末に
演奏されている上記の盤に
取って代わられているのですが、
小澤盤の価値が
減じたわけではありません。
このBOXの中でも注目の2枚です。
Disc5

オネゲル:
劇的オラトリオ
「火刑台上のジャンヌ・ダルク」
ヴェラ・ゾリーナ(ジャンヌ・ダルク)
アレック・クリューンズ(僧ドミニック)
チャールズ・トーマス
(廷臣3・ワーウィック伯爵・
石臼とっつぁん)
バーバラ・ヒックス(酒樽おばさん)
グィニス・アニア(S/処女マリア)
ヘザー・ハーパー(S/マルグリット)
ヘレン・ワッツ(S/カトリーヌ)
アレクサンダー・ヤング
(T/豚・廷臣1・司祭)
フォーブス・ロビンソン
(Bs/騾馬・廷臣2)
レスリー・サマーズ(子供の声のソロ)
ジル・ウィルソン(子供の声のソロ)
ジャンヌ・ロリオ(オンド・マルトノ)
オービントン・ジュニア合唱団
ロンドン交響楽団&合唱団
小澤征爾(指揮)
録音:1966年
続いてオネゲルです。こちらも
小澤が得意にしている曲であり、
このロンドン交響楽団との
66年盤のあと、
フランス国立管と89年に再録音、
サイトウ・キネン・フェスティバルを
はじめとする数々の演奏会で
取り上げられていた曲です。
若い段階で
このような曲を選択するなど、
小澤がいかに野心的だったかが
うかがえる一枚です。
こちらもドラマティックな熱演が
展開しています。
Disc19

オルフ:
カルミナ・ブラーナ
イブリン・マンダク(S)
スタンリー・コーク(T)
シェリル・ミルンズ(Br)
ニュー・イングランド音楽院合唱団
ニュー・イングランド音楽院児童合唱団
ボストン交響楽団
小澤征爾(指揮)
録音:1969年
オルフのカルミナ・ブラーナです。
この曲はそれ以前の67年に発表された
ヨッフムの名盤の陰に隠れがちですが、
そちらとは異なる味わいに
満ちています。
ヨッフムの泥臭さを好む方にとっては、
この小澤の洗練された表現は
味気ないものに感じられるのでしょうが
音楽そのものに何も加えず
何も引いていない小澤の演奏は
もっと評価されてしかるべきだと
感じています。
なお、この演奏スタイルを
突き詰めたのが、
88年のベルリン・フィルとの
再録音でしょうか。
Disc12

メシアン:
トゥーランガリラ交響曲
イヴォンヌ・ロリオ(p)
ジャンヌ・ロリオ(オンド・マルトノ)
トロント交響楽団
小澤征爾(指揮)
録音:1967年
続いてメシアンの
「トゥーランがリラ交響曲」です。
こちらはなんと作曲者監修による
北米初録音でした。
新しい音楽に果敢に挑戦していた
若き小澤の姿勢に脱帽です。
音楽カタログを見ると、
この曲についても90年代の
チョン・ミュンフン盤、シャイー盤、
21世紀に入ってからの
カンブルラン盤など、
新録音が相次いでいるのですが、
この小澤盤もまだまだ
色褪せてなどいません。
この複雑な構成の曲を、
見通しよくすっきりとまとめて
提示しています。
アナログながらも一つ一つの楽器の音が
鮮明な優秀録音であり、
決してデジタル録音に負けていません。
Disc8:20世紀のカナダの音楽

フリードマン:
交響組曲「映像」
マクミラン:
弦楽のための2つのスケッチ
メルキュール:
トリプティク
モレル:
黒い星
トロント交響楽団
小澤征爾(指揮)
録音:1966年
注目すべきはこの一枚です。
「20世紀のカナダの音楽」と題された
こちらは、全く聞いたことのない
作曲家の4曲が収録されています。
ネット検索で調べてみても、
フルネームで入力しなければ
ヒットしないという
レアな作曲家たちです。
でも素敵な音楽です。
小澤がいかに先進的だったかが
よくわかるアルバムとなっています。
なお、この4人の作曲家の
名前と生没年のみ記しておきます。
アーネスト・マクミラン
Ernest MacMillan 1893-1973
ハリー・フリードマン
Harry Freedman 1922-2005
フランソワ・モレル
Francois Morel 1926-2018
ピエール・メルキュール
Pierre Mercure 1927-1966
この6枚が、このBOXの中で
最も小澤らしい音盤であるといえます。
そしてやはり小澤は世界を代表する
指揮者であると感じます。
素晴らしいBOXです。
ワーナーから出されている小澤BOXは
購入しましたが、
グラモフォンのBOXは
買い逃してしまいました。
グラモフォン、デッカ、フィリップスの
小澤録音全集BOXの登場を
心待ちにしたいと思います。
やはり、音盤は愉し、です。

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