誰もが親しめる、やさしい小品集
「DHM-BOX」に収録されている音盤は
どれもこれも素敵ですが、
その中でももっともチャーミングな
一枚はこれでしょう。
古楽は難しい、
バッハはわかりにくい、という先入観を
見事に取り払ってくれる音盤です。
「アンナ・マグダレーナ・バッハの
音楽帖より」と題されたこの一枚、
誰もが親しめる、
やさしい小品集となっているのです。
BOX2 Disc5
J.S.バッハ
「アンナ・マグダレーナ・バッハの
音楽帖より」
J.S.バッハ:
ポロネーズ ト短調BWV Anh.119
マーチ 変ホ長調BWV Anh.127
メヌエット ト長調BWV Anh.114
メヌエット ト短調BWV Anh.115
ジョヴァンニーニのアリア
「あなたの心を下さるのなら」
変ホ長調BWV518
ロンド変ロ長調BWV Anh.183
アリア「御身がそばにあるならば」
変ホ長調BWV508
クラヴィーアのためのアリア
ト長調BWV988-1
アリア「喫煙者の教訓」
ト短調BWV515a
マーチ ト長調BWV Anh.124
アルマンド ニ短調BWV812-1
コラール「汝に向かって、エホバよ、
私は歌おう」変ロ長調BWV299
前奏曲ハ長調BWV846-1
メヌエット ト長調BWV Anh.116
マーチ ニ長調BWV Anh.122
ミュゼット ニ長調BWV Anh.126
レチタティーヴォ
「私は満ち足りている」BWV82-2
アリア「眠れ、疲れし眼よ」BWV82-3
コラール「ただ神の御身に委ねる者は」
イ短調BWV691
コラール「おお永遠よ、汝
おそろしき言葉」ヘ長調BWV513
エリー・アーメリング(S)
ハンス=マルティン・リンデ(Br)
テルツ少年合唱団
グスタフ・レオンハルト(cemb)
ヨハネス・コッホ(gamb)
アンゲリカ・マイ(vc)
ルドルフ・エヴァーハルト(org)
録音:1966年
アンナ・マクダレーナ・バッハ
(Anna Magdalena Bach)は、
J.S.バッハの後妻で、
自身も声楽家であり
作曲家でもありました(1701-1760)。
この「アンナ・マグダレーナ・バッハの
音楽帖」とは、J.S.バッハが
アンナのために贈った2巻の
音楽帳のことなのです。
本盤は、その第2巻からセレクトして
収録されています。
本盤の曲目を、
CDの記載にしたがって、
上のように記しましたが、
この音楽帳に収録されている音楽は、
すべてバッハの作品というわけでは
ありません。
アンナ自身の小品もあれば、
バッハの前妻との息子である
カール・フィリップ・エマヌエルや
ヨハン・ゴットフリート・ベルンハルトの
作品もあります。
さらにはクープランや
ペツォールトといった
バッハ一族以外の作品も
滑り込ませてあるのです。
しかしその点は
余り気にする必要はないでしょう。
とにかく聴いて愉しいのです。
チェンバロ曲あり、声楽アリアあり、
合唱ありと、
聴きやすい音楽が並んでいます。
初めて聴く音楽もあるのですが、
聴いたことのある旋律も多く、
親しみやすいのです。
ここには、音楽室の壁面に掲げられた
厳めしい顔をしたバッハではなく、
愛妻への微笑みを湛えた
優しいバッハの顔が見えてくるのです。
惜しまれるのは、
全曲収録ではないことでしょうか。
LP時代の1966年の録音ですので、
45分という盛りの良くない
収録時間であるのは仕方ありません。
そこは我慢しつつ、
名手レオンハルトのチェンバロや
ソプラノのアーメリングの美声を
たっぷりと味わうべきでしょう。
やはり、音盤は愉し、です。
〔「音楽帳」の音盤について〕
CD時代に入ってからの録音を
探してみると、80分近く
収録したものもあるようですが、
それでも全曲盤は
現在一組しか見当たりません。
このクラウス・シルデ盤は、
1722年の第1巻、そして
1725年の第2巻の全曲(と思われる)を
収録している貴重な盤のようです。
現在流通しているものの中には
このようなものがあります。
いろいろ探して
聴いてみたいと思います。
(2023.5.20)
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