児童合唱は鑑賞に値すべき素敵な音楽
「岩河三郎」と聞いて
ピンとくるでしょうか。
合唱曲「木琴」「親しらず子しらず」
「野生の馬」などの名曲は、
この岩河三郎が作曲しています。
最近の中学生は
あまり取り上げることがないのですが、
かつては三年生のクラスが
校内合唱コンクール最優秀賞を目指して
岩河三郎の曲を選択することが
多かったと記憶しています。
今日の盤は、
その岩河三郎の曲を集めた一枚です。
岩河三郎合唱作品集「城下町の子ども」
岩河三郎:
合唱組曲「祭と子ども」
花まつり
祇園祭
秋祭り
雪の祭
新座少年少女合唱団
肥田野清美(p)
岩河三郎(指揮)
録音:1982年
岩河三郎:
合唱風土記「城下町の子ども」
蔵造りのある町
道は細道
五百羅漢さん
城あとで
祭り
川越少年少女合唱団
増山美知子(p)
岩河三郎(指揮)
録音:1980年
岩河三郎
合唱バラード組曲「武蔵野の子ども」
ここは武蔵野 平林寺
おじいさんどこへ行くの
月と木枯し
武蔵野の子ども
新座少年少女合唱団
秋田邦子(p)
岩河三郎(指揮)
録音:1980年
日本の合唱曲は、
本当に味わい深いと思います。
これまでいくつか
取り上げてきましたが、
一番書きたかったのがこの
岩河三郎の三曲を収録した本盤です。
「木琴」「野生の馬」のような
中学生向きの合唱曲ではなく、
児童合唱のために書かれた曲集であり、
わらべ唄もしくは童謡といった趣です。
しかし侮るなかれ、
心が洗われるような
素敵な合唱を味わうことができます。
1曲目、
少年少女のための合唱組曲
「祭と子ども」は、その表題通り、
ふるさとの四季の祭を楽しむ
子どもたちのようすが、
生き生きと表現された曲です。
こうした日本の風景を歌い上げるのが、
岩河三郎は実に上手いと思います。
合唱の新座少年少女合唱団は、
この曲を表情豊かに歌い上げています。
児童合唱のための曲ですから、
難しい曲ではありませんが、その分、
表現力が求められる
曲集であるといえます。
田舎町の幼い子どもたちが
祭にはしゃいでいる様子が
実によく表現されています。
美しく歌うべきところは丁寧に、
元気よく歌うべきところは
子どもらしい弾けるような歌い方で、
歌いわけができているところは
聴いていて感動を覚えます。
2曲目、
少年少女のための合唱風土記組曲
「城下町の子ども」は、
さらに素敵です。
第2曲「道は細道」、
第3曲「五百羅漢さん」は、
民謡風の旋律が現れながら、
岩河独特の叙情的な音楽が
紡がれていきます。
第4曲「城あとで」は、
他の学校に転任された先生に
手紙を書いている
少女の思いが伝わってくる、
しみじみとした味わいがあります。
2曲目を歌っている
川越少年少女合唱団は、
合唱の精度も高く、
表現力も十分にあります。
たかが児童合唱、などと
なめてかかってはいけません。
ところどころで感動させられる場面が
現れます。
3曲目、
少年少女のための合唱バラード組曲
「武蔵野の子ども」は、
さらに素敵な曲集となっています。
とくに第2曲の
「おじいさんどこへ行くの」は、
亡くなったおじいさんを懐かしむ
子どもの素直な気持ちが
表現されている名曲です。
明るい曲調でありながら、
しみじみとおじいさんとの思い出を
語りあげています。
1曲目と同じく
新座少年少女合唱団は、
素晴らしい表現力を聴かせてくれます。
1曲目とは異なり、詩の内容が
難しい(第2曲だけ別ですが)のですが、
その情景がしっかりと
浮かび上がるような表現を
披露しています。
さて、10数年前、学級担任だったころ、
「おじいさんどこへ行くの」を
どうしても自分の学級の子どもたちに
歌わせたくて、
楽譜を取り寄せたことがあります。
ところがこの曲は
児童三部合唱として書かれてあり、
中学生の混声三部合唱としては
男子が歌えない部分が多く、
一度は諦めました。
でも音楽の先生に、混声三部に
編曲し直してもらうことができ、
合唱コンクールではしっかりと
歌うことができました。
いい想い出となっています。
合唱は日本の文化だと思うのですが、
今ひとつ軽んじられているようで
残念です。
若い人たちは
ロックやポップスに夢中になり、
若くない人は
クラシックやジャズこそ音楽だと
思い込んでいるのでしょうが、
日本の合唱、特に児童合唱は
鑑賞に値すべき素敵な音楽であり、
世界に誇るべき文化です。
ぜひ味わってみていただきたいと
思います。
何といっても、音盤は愉し、です。
(2023.3.21)
〔本盤の演奏の合唱団HP〕
「新座少年少女合唱団」HP
「川越少年少女合唱団」Facebook
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