オペラ全曲を聴きたくなるような管弦楽組曲
パーセル。名前はよく聞きます。
でも、書斎のCD棚を探したのですが、
パーセルの音楽だけの音盤は、
オペラの「ディドーとエネアス」が
2枚あったきりでした。
「vivarte-BOX」にも
収録されていません。したがって
「DHM-BOX」に収められている本盤は、
私にとって貴重な
パーセル・アルバムなのでした。
パーセルのオペラから、
器楽で演奏される音楽を集めた
アルバムです。
BOX2 Disc38
パーセル:妖精の女王~劇音楽の世界
パーセル:
歌劇「妖精の女王」Z629より7曲
歌劇「ディドーとエネアス」
Z626より5曲
歌劇「アーサー王」Z628より6曲
歌劇「アブデラザール」Z570より6曲
フライブルク・バロック・オーケストラ
トーマス・ヘンゲルブロック(指揮)
録音:1991年
ヘンリー・パーセル(1659-1695)は、
バロック期の英国の作曲家です。
イタリアやフランスの音楽の
影響を受けつつ、
独自の音楽を生み出した作曲家として
知られています。
生涯に残した曲は800曲に
およぶというのですから驚きです。
オペラの分野では、
バロック・オペラ最大の傑作の一つ、
「ディドーとエネアス」をはじめ、
40曲程度を残したらしいのですが、
現在演奏されているのは、
本盤に収録されているもの以外は
数曲程度です。
さて、オペラの抜粋盤は
数多く見かけます。
しかし、オペラから管弦楽部分のみを
取り出しての演奏は、
ビゼーのカルメン組曲が
有名であるものの、
決して多くないはずです。
パーセルのオペラが、
このように管弦楽部分を取りだしても、
立派に魅力的な音楽として
聴くことができるのは、
とりもなおさず、その管弦楽書法が
現代に通じる普遍性を
持っていたことだと考えられます。
聴いてみると、
どれもこれも緻密な構成でありながらも
絢爛な雰囲気を湛えた、
素敵な音楽です。
ファンタジーを感じさせる旋律が
愛おしい「妖精の女王」、
作曲技法上の完成度の高さが
感じられる「ディドーとエネアス」、
豊かな響きの序曲から始まる
「アーサー王」、
有名曲「ロンドー」を含む
耳に馴染みのよい「アブデラザール」。
オペラ全曲を聴いてみたいと
思わせるものばかりです。
その音楽の魅力を
十全に引き出しているのが
ヘンゲルブロックの指揮なのでしょう。
颯爽としていながら、
決してせかせかすることのない、
テンポ感が洗練されています。
それに応える
フライブルク・バロック管の音響も
見事です。
80年代の古楽器演奏は、
まだまだ「カチャカチャ」したような
音づくりが多かったのですが、
90年代に成されたこの録音では
十分に熟れた音になっています。
現在もっとも活躍している
古楽器団体の一つである
フライブルク・バロック管ですが、
この段階から素晴らしい音を
披露しています。
というわけで、
CD棚から「ディドーとエネアス」2種
(レッパード盤とヤーコブス盤)を
取りだして聴いてみました。
これまで聴く機会を
逸していたのですが、短いながらも
やはり味わい深いオペラです。
一つの盤が、他の盤の良さを
改めて感じさせてくれる。
つながりを大事にして
音楽を聴き込めば、
音盤はますますその味わいを
深めてくれます。
やはり、音盤は愉し、です。
〔オペラ「ディドーとエネアス」〕
(2023.1.28)
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