ドップ指揮のグレゴリオ聖歌集

「聖歌」と「音楽」の幸せな結合の形

グレゴリオ聖歌集に興味を覚え、
いくつか聴き比べています。
以前取り上げたクエスタ神父指揮の
シロス修道院合唱団盤と、
ルーラント指揮の
ニーダーアルタイヒ・
スコラーレン盤
では、
聴いた印象があまりに異なるからです。
今回取り上げるのは
ドップ神父指揮の
ウィーン・ホーフブルクカペルレ・
コーラルスコラの演奏です。

「グレゴリオ聖歌集」

「グレゴリオ聖歌集」

「グレゴリオ聖歌集」
天よ、上より雫をしたたらせよ
めでたし、めぐみに満てるマリア
われは思いをめぐらさん
すべての国々よ主に向かいて歓呼せよ
深き淵より
幸いなるかな、心清き者
キリストはわれらのために
わが心、侮辱と悲惨によりて
主は言いたもう
全地の民よ、主に向かいて歓呼せよ
聖母マリアの
 無原罪のやどりの祝日のミサ
・イントロイトゥス:
 われ主のうちに大いに楽しみ
・キリエ第9番
・グローリア第9番
・アレルヤ、マリアよ、
  御身すべてに美し
・オッフェルトリウム:
 めでたし、めぐみに満てるマリア
・サンクトゥス第9番
・アニュス・デイ第9番
・コンムニオ:
 マリアよ御身について栄光が語られぬ
・アンティフォナ:
 めでたし女王、あわれみ深きみ母

ウィーン・
 ホーフブルクカペルレ・コーラルスコラ
フーベルト・ドップ(指揮)
録音:1983年

グレゴリオ聖歌の演奏については、
おおまかに二通りあるようです。
一つは「聖歌」として、
教会で典礼のために歌われている形を
記録・再現しようとする方向性と、
もう一つは純粋な「音楽」として
演奏しようとする考え方です。
クエスタ盤が前者であり、
ルーラント盤が後者でしょう。

さて、このドップ盤ですが、
こちらも名盤の誉れ高く、
何かとジャケットを替えて
再発売されてきました。
80年代に発売された当初の
フィリップス・レーベルは
消滅したのですが、
昨年2022年にもデッカ・レーベルから
再発されています。

こちらはおそらく
「聖歌」と「音楽」の中庸を保ったものと
いっていいかもしれません。
指揮者のフーベルト・ドップは、
ネット上の情報では
「神父」となっているのですが、
「ウイーン国立大学の教授」という表記も
見られます。
また演奏団体も修道士ではなく
れっきとした
職業合唱団と考えられます。

Gregorian Chant

聴いてみると、
実に丁寧に歌われているという
印象を受けます。
声がしっかりと
一つにまとまっています。
職業合唱団の起用は、
修道士の合唱団と比べると
この点で有利に作用していると
考えられます。
この透き通るような声を、しっかりと
捉えきっている録音も秀逸です。
残響は少なめで、聴きやすく、
かつ教会の雰囲気も
上手に醸し出されています
(教会での録音か、スタジオ収録なのか、
録音データが記されていないのが残念)。

表現としてはおとなしめで、
何かを訴えようというものでは
なさそうです。
正確に「聖歌」を再現しようとしている
姿勢と考えられます。
こうしたことを考え合わせるに、
本盤は、結果として
「聖歌」と「音楽」の「いいとこ取り」の
形になっているといえるのです。

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ただし、私は
クラシック音楽の源流として
「グレゴリオ聖歌」を捉えているし、
そうしたものとして
聴いていきたいという
願いを持っています。
ゆえにルーラント盤をもっとも愉しく
聴くことができています。
ただし、だからといって
クエスタ盤やこのドップ盤の価値が
低下するわけではなく、
こうした盤があるからこそ
ルーラント盤の立ち位置がより鮮明に
理解できるようになるのです。
「みんなちがってみんないい」という
金子みすゞではありませんが、
いろいろな形を
愉しんでいきたいと思います。
やはり、音盤は愉し、です。
グレゴリオ聖歌探求は
まだまだ続きそうです。

(2023.1.22)

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