アンサンブル・ディドロ「パリ・アルバム」

知らない作曲家ばかりの「トリオ・ソナタ集」

2つの旋律楽器と
1つの通奏低音のために作曲された
トリオ・ソナタ」。
17世紀末から18世紀初めにかけて
特に人気のあった音楽形式であり、
コレッリ、ヴィヴァルディ
バッハなど、バロック期の作曲家
多くが作品を残しています。
本盤は「パリ・アルバム」と題された
「トリオ・ソナタ集」なのですが、
知らない作曲家ばかりです。

「パリ・アルバム」
アンサンブル・ディドロ

「パリ・アルバム」アンサンブル・ディドロ

ジャケ・ド・ラ・ゲール:
 トリオ・ソナタ ト短調
ブロッサール:
 トリオ・ソナタ イ短調
  「デッタ・ラ・プリモジェニータ」
カンプラ:
 トリオ・ソナタ第1番変ロ長調
ブロッサール:
 トリオ・ソナタ ハ長調
  「デッタ・ラ・セコンダ」
クープラン:
 ラ・コンヴァレサント
クレランボー:
 トリオ・ソナタ
  ト長調「ラ・フェリシテ」
カンプラ:
 トリオ・ソナタ第2番イ長調
ブロッサール:
 トリオ・ソナタ ニ長調
ルベル:
 リュリ氏のトンボー

ヨハネス・プラムゾーラー(vn)
アンサンブル・ディドロ
録音:2018年

本盤はアンサンブル・ディドロを主宰する
バロック・ヴァイオリンの名手・
ヨハネス・プラムゾーラーが、
フランスの初期トリオ・ソナタを探して
収録したものなのです。
プラムゾーラーはこの盤のほかに
「ドレスデン・アルバム」
「ロンドン・アルバム」
「ベルリン・アルバム」と
トリオ・ソナタ集を録音していて、
そのいずれも高い評価を得ています。

今日のオススメ!

トリオ・ソナタ集については
当サイトでは先日、
ルベルを取り上げました
(アンサンブル・ルベル盤)。
その盤にも収録されている
「リュリ氏のトンボー」は、
本盤にも収められています。
そのリュリの死を悼み、
リュリの作品をコレクションしたのが
ブロッサール(1655-1730)であり、
本盤に3曲収録されています。
ブロッサールと同年生まれで
親交のあったジャケ・ド・ラ・ゲールの
作品も取り上げられています。

フランス貴族社会で
権勢をほしいままにしたリュリの死は、
フランス音楽のイタリア様式吸収の
流れを促しました。
クレランボーはそうした
フランスとイタリアの両様式の混淆に
成功した作曲家の一人です。
カンプラは早くから
イタリアの要素を取り入れたため、
リュリが亡くなるまでは
宮廷に近づくことのできなかった
作曲家の一人です。
同様に、クープランもイタリア様式の
吸収に努めた作曲家であり、
イタリア風のトリオ・ソナタを
イタリア風の偽名で
発表していたくらいです。

フランス的要素とイタリア的要素が
入り交じり、新しいフランス音楽が
創られようとしていた時代の
貴重なトリオ・ソナタ集なのです。
その契機となったリュリの死を悼む
ルベルの曲が最後に配されているのも
納得です。

さて、
このアンサンブル・ディドロですが、
その変革の時代の音楽を、
颯爽とした演奏で
心地よく聴かせてくれます。
全曲、今まさに
生まれ出た音楽といった感触で、
新鮮な響きを聴くことができます。
これは主宰している
ヨハネス・プラムゾーラーの
感性そのものなのでしょう。

本盤のPR用でしょうか、
YouTubeに動画が載っていました。

The Paris Album by Ensemble Diderot

この音盤の
制作会社「Audax Records」も
プラムゾーラーが立ち上げた
自主レーベルです。
「ドレスデン・アルバム」
「ロンドン・アルバム」
「ベルリン・アルバム」でも、
本盤同様バロック時代の
知られざる作曲家を
精力的に紹介しています。
目の離せない、いや、耳の離せない
ヴァイオリニストが、また一人
見つかりました。
やはり、音盤は愉し、です。

〔本盤収録の作曲家〕
ジャケ・ド・ラ・ゲール[1665-1729]
ブロッサール[1655-1730]
カンプラ[1660-1744]
クープラン[1668-1733]
クレランボー[1676-1749]
ルベル[1666-1747]

「パリ・アルバム」アンサンブル・ディドロ

※実は本盤、「パリ・アルバム」と
 「ロンドン・アルバム」の両方が
 収納された
 ボックス・セットなのです。

「after the Italion way」

 HMVのネット販売では
 4000円以上していたのですが、
 Amazonの最後の数枚価格でなんと
 789円というとんでもない安値で
 入手してしまいました。
 感動もひとしおです。
 「ロンドン・アルバム」の方も
 近々取り上げたいと思います。

〔追記〕
新年明けましておめでとうございます。
これからも
魅力ある音盤との出会いを果たし、
その成果を
報告していきたいと思っています。
これからもどうぞ
よろしくお付き合いお願いいたします。

(2023.1.1)

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