ストリーミングで聴く最新の「ゴルトベルク変奏曲」

2025年9月発売の3つのゴルトベルク変奏曲

バッハのゴルトベルク変奏曲は
いったい何枚の音盤が
この世に出回っているのだろうか?
廃盤となったものを含めると、
かなりの数になるはずです。
そして現在もさらに新しい音盤が
生み出されています。
HMVのサイトで見てみると、
今月(2025年9月)だけで3枚。
それらが9月15日現在で
すべてamazon music limitedで
聴くことができました。


【今日の1枚目】ヴァイデマン

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J.S.バッハ:
 ゴルトベルク変奏曲 BWV.988

ソフィア・ヴァイデマン(p)
録音:2024年10月

一枚目はソフィア・ヴァイデマンという
女性ピアニスト。
HMVでは9月30日発売予定。
録音は2024年10月。
演奏時間は89分にもおよび、
CDは2枚組となっています。
CDであれば入れ替えが
必要となるのですが、
ストリーミングはその必要がなく、
通して聴くことができるという
利点があります。

演奏時間から判断すると、
おそらくすべてのリピートを
実行しているものと思われます。
ゆったりとした演奏ですが、
遅すぎるという感覚にはなりません。
各変奏ごとの特徴を理解し、
それを的確に表現しているため、
1時間半聞き続けても
飽きることがないのです。
その豊かな音色と
しなやかなフレージングは、
バッハの音楽世界を
見事に表現していると感じます。

また、録音も秀逸であり、
彼女のピアノの繊細な表情を
余すところなくとらえきっています。
残響は控えめで、音が濁ることなく
クリアにスピーカーから響いてきます。

今日のオススメ!

このヴァイデマン、
年齢や国籍に関する情報はないのですが
どうやらドイツを拠点として
活動している
若いピアニストのようです。
音盤はこの録音の前に
「一年~音楽と文学の出会い」という
タイトルで、
ファニー・メンデルスゾーンの作品を
録音しています。
文学と音楽の融合を目指したような
企画となっていて、
こちらの方も興味深く感じます。

〔ヴァイデマンの音盤はいかが〕


【今日の2枚目】モク

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J.S.バッハ:
 ゴルトベルク変奏曲 BWV.988

マルセル・モク(p)
録音:2024年5月

二枚目はマルセル・モクの録音。
HMVでは9月20日発売となっています
(他のルートでは
すでに7月頃に流通していたらしい)。
録音は2024年5月。
ジャケット写真を見る限り
どことなく東洋系の
顔立ちをしていますが、
HMVのサイトによると、このモク、
「ドイツと台湾にルーツを持つ」と
あります。

演奏時間は約80分。
リピートについては
細かく確認していませんが、
ほぼすべて実行しているように
思われます。
ところどころに速いテンポで
駆け抜けるところがあるとはいえ、
グールドほど
極端なところはありません。
奇をてらったようなところは
特に見当たらないのですが、
それでもところどころに
ハッとさせられるような
部分があります。
若手ながら完成度の高い演奏という
印象を受けました。
どうやらこの録音が
音盤としてのデビューとなるようです。
よほどバッハもしくは
ゴルトベルク変奏曲に
思い入れがあるのでしょう。
このあとの音盤に期待が持てます。

ただ、やや残響の多い録音であり、
その点は好き嫌いが
分かれるところかもしれません。
そのためかピアノの音の
クリアさという面では、
ヴァイデマン盤に
一歩譲る部分があります(私の
再生環境のためかもしれませんが)。
HMVのデータでは録音場所が
ベルリン・アンドレアス教会と
ありますので、
環境によるものなのでしょう。


【今日の3枚目】ディルク・ルイメス

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J.S.バッハ:
 ゴルトベルク変奏曲 BWV.988

ディルク・ルイメス(ハーモニウム)
録音:2024年5月

三枚目はやや異質の
ハーモニウムという楽器での演奏。
ハーモニウムとは、
奏者が足踏み式のふいご(ペダル)で
空気を送り、
金属製のリードを振動させて音を出す
鍵盤楽器です。
パイプオルガンに似た
柔らかく温かみのある音色を持つのが
特徴です。

しかしながらこのハーモニウムの誕生は
19世紀初頭。
バッハが亡くなってから
70年以上経過した後の楽器なのです。
したがってチェンバロでの演奏とは
まったく意味が異なります。
HMVのサイトの紹介文では、
ハーモニウムを使用する理由として
「チェンバロやモダン・ピアノにはない
「歌う」「囁く」ような表現が可能」と
あるのですが、
演奏を聴く限りどこがそうなのか
今ひとつわかりません。
また、「左右で異なる音色設定が可能な
Double Expression機構を
用いることにより、対位法的構造を
声部ごとに異なる音色で際立たせる
ことができる」とあるのですが、
これもよく理解できません。
いずれにしてもゴルトベルク変奏曲を
現代的に再解釈しようという
試みということなのでしょう。

難しいことはさておいて、
実際に聴いてみるとこのハーモニウム、
なかなかに心地よい音色を響かせます。
オルガンというよりは
アコーディオンのような雰囲気です。
フランスの街角で
辻音楽師の弾くメロディを
しみじみと聴いているような錯覚を
覚えます。
これはバッハではない!などと
いきり立つのは野暮でしょう。
バッハの音楽は
それだけ懐が広いということなのです。
考えてみれば日本の演奏家もこの曲を
琴で弾いてみたり
トイ・ピアノを使ってみたりと、
面白い演奏を模索しているのです。
このハーモニウムの味わいも
捨てたものではありません。

ディルク・ルイメスは、
世界でも稀少なハーモニウム専門の
プロ奏者として国際的に注目されている
オランダの音楽家です。
その経歴は非常に多彩で、
演奏家としてだけでなく、
教育者・研究者・芸術監督としても
活躍しているのです。
バッハの「マタイ受難曲」に関する
書籍も出版するなど、
バッハの音楽について
深く研究している学者でもあるのです。
このゴルトベルク変奏曲も、
単なる好奇心からのものではなく、
知的探求のたどり着いた
末のことなのかもしれません。

〔ディルク・ルイメスの音盤はいかが〕


1685 J.S.Bach

これからもいろいろな演奏家が
このゴルトベルク変奏曲を録音し、
音盤を世に送り出し続けるのでしょう。
それだけ演奏者を引きつける音楽であり
聞き手を愉しませる
音楽ということなのでしょう。
あまたある録音を
すべて購入することは不可能です。
現代はこうして
ストリーミングがあるのですから、
存分に愉しみましょう。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

(2025.9.30)

〔ゴルトベルク変奏曲はいかが〕

〔関連記事:バッハ作品〕

J.S.バッハ「管弦楽組曲全曲」
「シャコンヌ&チェンバロ協奏曲集」
「インヴェンションとシンフォニア」
Kerstin RiemerによるPixabayからの画像

【今日のさらにお薦め3作品】

「エリザベス朝のヴァージナル音楽」
F.クープラン「修道院のためのミサ」
「ヴィヴァルディ・四季」

【こんな音盤はいかがですか】

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