
スキップ・センペによる自由な表現
DHM-BOXⅡに収録されている
一枚です。
バッハのチェンバロの独奏曲・協奏曲が、
それぞれ2曲収録されています。
単に「バッハを弾きました」という
音盤ではなさそうです。
センペによる独自の表現で立ち現れた
バッハ像が愉しめます。
J.S.バッハ
「シャコンヌ&チェンバロ協奏曲集」

J.S.バッハ:
シャコンヌ ニ短調 BWV1004
(無伴奏ヴァイオリンのための
シャコンヌによる
スキップ・センペによる即興)
チェンバロ協奏曲第3番
ニ長調BWV1054
パルティータ第4番ニ長調 BWV828
チェンバロ協奏曲第4番
イ長調BWV1055
カプリッチョ・ストラヴァガンテ
Manfredo Kraemer(vn)
Katharina Wolff(vn)
Claudia Steeb(va)
Michel Murgier(vc)
Dane Roberts(violone)
Kenneth Weiss(cemb)(BWV1055)
スキップ・センペ(Cemb&指揮)
録音:1993年
1曲目の「シャコンヌ」は、
言わずと知れた
「無伴奏ヴァイオリンのための
パルティータ第2番」の終曲です。
チェンバロ独奏への編曲は、
バッハ自身も行っていますが、
センペはそこに即興を交え、
より自由な解釈で曲を再現しています。
途中から速めのテンポで
ぐいぐいと推し進めているのですが、
安定した技巧で乗り切っています。
色彩感の豊かな演奏であり、
チェンバロでここまで表現できるのかと
驚かされます。
本盤は、この一曲を聴くだけでも
価値のある一枚といえます。
2曲目「チェンバロ協奏曲第3番」も
速めのテンポで軽快に進行します。
まるでスポーツ・カーに乗った
バッハです。
聴き慣れた曲ではあるものの、
いたるところに新鮮な印象を
感じてしまいます。
センペの設立した
古学アンサンブルである
カプリッチョ・ストラヴァガンテの
サポートも見事です。
なおカプリッチョ・ストラヴァガンテは、
上記の通りの5名による
室内楽的演奏となっています。

3曲目「パルティータ第4番」も、
センペの独奏であり、
その個性が光ります。
緩急を使い分け、
曲の陰影を深く彫り込んでいるのです。
ともすれば単調に感じることもある
バッハの曲を、
このようにドラマティックに
表現できる奏者は
そう多くはないでしょう。
そうした表現を求めるのであれば、
ピアノによる演奏の方が
より多く見つかるのでしょうが、
本演奏のようなチェンバロの限界に
挑戦したような試みは、
十分に評価されるべきです。
4曲目「チェンバロ協奏曲第3番」も
「第3番」と同じような傾向です。
なおクレジットを見る限り、
この曲のチェンバロの独奏者は
Kenneth Weissなる演奏者であり、
センペは指揮に徹しているようです。
こうして一通り聴き終えると、
スキップ・センペの個性が際立つ一枚と
感じます。
チェンバロという
楽器の制約を乗り越え、
チェンバロの魅力を
最大限に引き出しています。
それによって多彩な音色が現れ、
曲全体の彩りが
豊かなものになっています。
即興的な部分も
随所に見られるとともに、
積極的に装飾も施し、
独自の表現に徹しています。
「バッハかくあるべし」という
従来の虚像を粉砕し、
若く瑞々しいバッハ像を
打ち立てているのです。
新しい時代と新しい聴衆を意識した
試みは素敵です。

やや気になるのは、
協奏曲におけるチェンバロと伴奏の
音量バランスです。
チェンバロが後ろに引っ込み、
その味わいが
十分に伝わってこないのです。
そこに不満はあるものの、
音質は良好であり、
一つ一つの楽器の音を
明瞭に聴き取ることができます。
好演奏が好録音で聴けるのは
喜ばしいことです。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。
(2025.8.26)
〔関連記事:DHM-BOXⅡ収録音盤〕


〔スキップ・センペの音盤〕

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