ヤーコプスの「ドン・ジョヴァンニ」

改めて聴き直したら凄かった!超絶演奏&録音

買って聴いたそのときは
あまりよくわからなかった
音盤の良さを、
何年かして思い出して聴いたときに、
はじめて理解できた、
そんなことがよくあります。
本盤もそうしたものの一つです。
2007年に発売した本盤、
オペラをゆっくり聴く時間が
とれないまま放置されていたのですが、
改めて聴くとその面白さが
ひしひしと感じられます。
ヤーコプス指揮の
「ドン・ジョヴァンニ」です。

モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」

今日のオススメ!音盤

モーツァルト:
 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」K.527
  (1788年ウィーン稿)

※補遺:1787年プラハ初演稿の楽曲
 第2幕第2場レチタティーヴォ
  「それじゃ、さっき私のマゼットを」
 第20番アリア
  「ああ、おゆるしください」
 第2幕第10場レチタティーヴォ
  「Ferma, perfido, ferma」
 第21番アリア「今こそ僕の
  愛しい人を慰めてあげて下さい」

ヨハネス・ヴァイサー
 (Br:ドン・ジョヴァンニ)
ロレンツォ・レガッツォ
 (Bs:レポレッロ)
アレクサンドリーナ・ペンダチャンスカ
 (S:ドンナ・エルヴィラ)
オリガ・パシフニク
 (S:ドンナ・アンナ)
ケネス・ターヴァー
 (T:ドン・オッターヴィオ)
スンハエ・イム
 (S:ツェルリーナ)
ニコライ・ボルシェフ
 (Br:マゼット)
アレッサンドロ・グエルツォーニ
 (Bs:騎士長)
RIAS室内合唱団
フライブルク・バロック・オーケストラ
ルネ・ヤーコプス(指揮)
録音:2006年

この「ドン・ジョヴァンニ」という作品、
筋書きがやや特殊です。
冒頭はいきなりのレイプ・シーン。
そして結末は主人公の地獄落ち。
知らない方がそこだけで判断すると
「どんだけバイオレンスなんだ?」と
誤解するのでしょうが、
それをつなぐ筋書きは、
基本的には喜劇なのです。

主人公はプレイボーイの
ドン・ジョヴァンニ。
冷酷無比で反道徳的、
殺人をもいとわないその人間性は
最低のものでありながら、
幅広い社交性と
人を引きつけるカリスマ性を
持ち合わせるなど、
多面的でとらえようのない人物です。
このオペラそのものも、そうした
主人公の性格を反映させたのか、
スリリングでシリアスな場面も
ある一方で、
軽妙洒脱な音楽が紡がれる場面もあり、
一筋縄ではいきません。

1756 Mozart

ところが20世紀の演奏を見渡したとき、
フルトヴェングラー盤に
代表されるように、
重厚で重苦しい演奏が
主流となっていたように感じられます。
それに対して本盤は、
その多面性に焦点を当て、
起伏の激しい展開一つ一つを
丁寧に彫り込んでいったような
演奏となっているのです。

「序曲」冒頭はおどろおどろしいまでに
重厚な音を響かせ、
ドン・ジョヴァンニの不吉な結末を
暗示したかと思えば、
次の瞬間には軽快な音楽を
一層明るく表現、
その起伏の大きさが
本盤の面白さの一つといえます。
悲劇的要素と喜劇的要素を、
冒頭部分から明確に描き分けている点が
秀逸です。

指揮のヤーコプスが、
自在にオケを操っているのが見事です。
一つの場面において、
歌手たちの表現のみならず、
オケの音についても
一音一音に意味を持たせ、
ドラマティックな筋書きを
陰影深く表現しているのです。
古楽器オケの名門
フライブルク・バロック管の
面目躍如たる演奏となっています。

今日のオススメ!

オケだけではありません。
もちろん歌も素敵です。
主役・ドン・ジョヴァンニの役
ヨハネス・ヴァイサーが
難しい役どころを
しっかりと演じきっています。
第11曲アリア
「Fin ch’han dal vino」では、
歌い始めから
抜群の存在感を発揮しています。
ここでの悪人らしからぬ
ゴージャスかつエレガントな雰囲気こそ
ドン・ジョヴァンニらしさなのです。
ヴァイサーは
それをうまく表現しています。
調べてみると
1980年生まれということですから、
本盤録音当時はまだ20代。
なんとも若々しい
ドン・ジョヴァンニです。
とかく近年のオペラ録音は、
歌手が弱いと
言われ続けているのですが、
往年の伝説的歌手と比較しても
意味はありません。
このヴァイサーをはじめとする
歌手陣は、しっかり愉しめます。

そしてオペラのクライマックス、
ラストのドン・ジョヴァンニと騎士長の
対決も、
速いテンポで駆け抜けているものの、
重厚な音が鳴り響いているので
迫力は申し分ありません。
ギアをシフト・ダウンせずにそのまま
6重唱に突っ込んでいきます。

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もはや小さな音で楽しむなど
不可能です。
家族の留守を狙って大音量で楽しむべき
エンターテインメント・オペラと
なっているのです。
買っててよかった!
改めて聴き直したら凄かった!
超絶演奏&録音の本盤です。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

(2025.8.19)

〔ヤーコプスのモーツァルト・オペラ〕

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