
ルネサンス音楽の頂点としての合唱
ドイツ・ハルモニアムンディの
BOX第1集で、
まだ取り上げていなかった音盤の一つが
このパレストリーナの
宗教合唱作品集です。
無伴奏合唱の作品4篇が
集められているのですが、
心が洗われるような音楽が
展開していきます。
パレストリーナ
「宗教合唱作品集」

パレストリーナ:
「幸いなるかな天の女王」
「聖土曜日の哀歌」
「誇り高い地上の支配者達は」
「ミサ・イン・ミノリブス・
ドゥプリチブスII」
ドミニク・ヴェラール(指揮)
アンサンブル・ジル・バンショワ
コルマー少年合唱団
バーゼル・スコラ・カントゥルム
録音:1993年
パレストリーナは、
1525年生まれ、没年1594年の、
イタリアルネサンス後期の音楽家です。
カトリックの宗教音楽を数多く創作し、
「教会音楽の父」と呼ばれています。
以前、タリス・スコラーズ演奏の
「教皇マルチェルスのミサ曲」の音盤で
取り上げました。
ポリフォニー音楽は歌詞の聴き取りが
困難であるという理由で、
典礼におけるポリフォニー音楽を
規制しようとする教会に対し、
パレストリーナは
「教皇マルチェルスのミサ曲」をもって
ポリフォニーと歌詞伝達の
両立を示したというエピソードが
知られています。

その逸話は疑わしいことが
確認されているのですが、それでも
この緻密に構成されたミサ曲は、
多声音楽と宗教性が
矛盾せずに融合することを
示していることは確かです。
そしてそれは本番収録の
4曲も同様です。
無伴奏多声音楽の宗教曲として、
頂点を極めたような作品として
仕上がっているのです。
本盤をすでに何度となく聴きましたが、
そのたびに心が洗われるような思いに
浸っています。
透明感溢れる合唱の構造、
恍惚感に満ち溢れた旋律美、これが
ルネサンス音楽を聴く喜びであり、
パレストリーナの音楽は、その
頂点にあるといっていいと考えます。
特に秀逸であるのは、最後に配置された
「ミサ・イン・ミノリブス・
ドゥプリチブスII」。
5楽章34分におよぶこの曲の
比類なき美しさは、
「教皇マルチェルスのミサ曲」と
並ぶほどの完成度の高さを
示しています。
演奏は、上に記したように、
アンサンブル・ジル・バンショワ、
コルマー少年合唱団、
バーゼル・スコラ・カントゥルムです。
三つの合唱団による
合同演奏の記録となっているのです。
アンサンブル・ジル・バンショワは、
結成されてからすでに
40年を超過している
ベテラン・アンサンブルです。そして
バーゼル・スコラ・カントゥルムは、
同名の古楽研究機関に併設された
演奏団体であり、すでに古楽において
多数の録音を残しています。
両者とも定評のある演奏団体ですので、
その精度の高い合唱について
改めて書き記すことはないでしょう。

特筆すべきはコルマー少年合唱団
(コルマール?)でしょうか。
フランスのコルマールにある
男声児童合唱団であり、
歴史と伝統のある団体です。
ネットでの本盤の楽曲説明には、
「イギリス系やテルツ少年合唱団とは
違った独特の声」を持っていると
あります。
「独特の声」がいかなる違いのものか、
私にはよくわかりませんが、
おそらくは合唱の精度だけではなく、
言語の発音なども含め、
高度の教育が為されているものと
考えられます。
なお、他の音盤を探してみましたが、
やはりテルツやウィーンなどの
少年合唱団に比べ、
録音は少ないようです。
それにしても、
ルネサンス後期の作曲家となると
モンテヴェルディだけが
取り上げられる機会が多いのですが、
このパレストリーナも「大作曲家」として
認識されるべきと考えます。
素敵な音楽を収めた本盤を、
ぜひご賞味ください。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。
(2025.2.18)
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