ストリーミングで始めるクラシック音楽 オルフ「カルミナ・ブラーナ」

声楽と合唱を、ロックのノリで体感できる音楽

クラシック音楽のCDは
何から買ったらいいかわからない。
私もかつてそうでした。
今なら大丈夫。買わなくても
ストリーミングがあるのですから。
契約していれば、
あとは何曲でも聴き放題。
だからクラシック入門に最適なのです。
今回はオルフの「カルミナ・ブラーナ」。
クラシックにも
こんなノリのいい曲があったのか!
そんな思いを抱くことができる
一曲です。


【今日の1枚目】
アンドレア・バッティストーニ

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オルフ:
 カルミナ・ブラーナ

ヴィットリアーナ・デ・アミーチス(S)
彌勒忠史(C-T)
ミケーレ・パッティ(Br)
新国立劇場合唱団
世田谷ジュニア合唱団
東京フィルハーモニー交響楽団
アンドレア・バッティストーニ(指揮)
録音:2024年

一つめは、バッティストーニによる
日本のレーベルからのリリースです。
冒頭から、
大編成のオケの迫力に圧倒されます。
しかも演奏はリズミカル。
指揮者の推進力の大きさが感じられる
演奏となっています。
指揮者バッティストーニの個性が光る
好演です。
ただし、演奏のエネルギーが大きい分、
聴く側も体力が必要となるような
印象です。

だからといって力任せで
押し切っているのではありません。
繊細さもあり、一つ一つの楽器を
きちんとコントロールしているのです。
録音の良さと相まって、
楽器の音が明瞭に聞こえる
録音となっています。

そして何よりも合唱の美しさに
感銘を受けます。
合唱団のレベルが高いと感じます、
大人も子どもも。
日本の合唱の素晴らしさが
実によく現れた演奏であり
録音であるといえます。

クラシック音楽初心者の方が聴けば、
クラシックにも
このようなエネルギッシュな曲があり、
エネルギッシュな演奏があることに
驚くのではないかと思うのです。
この曲の、適度に野蛮な曲想は、
「クラシックとは
高級で行儀の善いもの」という先入観を
拭ってくれるはずです。
日本人の演奏家が活躍している本録音、
クラシック初心者のみならず、
カルミナ・ブラーナ・ファンの方に
ぜひ聴いて欲しい演奏です。


【今日の2枚目】
パーヴォ・ヤルヴィ

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オルフ:
 カルミナ・ブラーナ

アリーナ・ヴンダーリン(S)
マックス・エマヌエル・ツェンチッチ(C-T)
ラッセル・ブラウン(Br)
チューリッヒ・ジングアカデミー
チューリッヒ少年合唱団
チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)
録音:2022年

今をときめく
巨匠パーヴォ・ヤルヴィの、
つい最近音盤が発売となった録音です。
これまでヤルヴィの
この曲の録音がなかったことが
不思議なくらいです。
録音は2022年であり、
バッティストーニよりも
2年早い時期の録音でありながら、
リリースは今年になっています。

聴いてみると、これまで聴いた同曲の
イメージとはやや異なります。
器楽演奏部分になったとたんに
猛烈なスピードで
駆け抜けていくのです。
だからといってこちらも
力業に訴えているわけではありません。
合唱部分はこれでもかというくらい、
たっぷりと歌わせているのです。
この極端ともいえる緩急ですが、
この曲の本質が合唱にあるのだと
再認識させてくれる解釈です。

その合唱・声楽部分の音が、
実によく録れています。
バリトンのブラウンの表現の細やかさに
心を打たれます。
この曲でのカウンター・テナーは
もしかしたら
珍しいものかもしれませんが、
ボーイ・ソプラノあがりの
ツェンチッチが見事な表現力で
聴かせてくれます。

録音も素晴らしいものであり、
この曲の新しい定番となりそうな
出来映えです。
なおYouTubeでこの演奏の
プロモーション・ビデオとみられる
映像が配信されています。

Carmina Burana by Paavo Järvi

【今日の3枚目】
ロン・ユー

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オルフ:
 カルミナ・ブラーナ

アイーダ・ガリフッリーナ(S)
トビー・スペンス(T)
ルドヴィク・テジエ(Br)
ウィーン・ジングアカデミー
上海交響楽団
ロン・ユー(指揮)

〔併録曲〕
劉天華:
 良宵(Enchanted Night)

上海交響楽団
ロン・ユー(指揮)

中国民謡:
 茉莉花(ジャスミンの花)

ウィーン・ジングアカデミー
上海交響楽団
ロン・ユー(指揮)
録音:2018年

3つめは、最大手レーベルDGから
リリースされたにもかかわらず、
日本ではほとんど
話題にならなかった一枚。
中国人指揮者&オケ、そして
中国北京の故宮でのライヴ録音。
これがまた迫力満点の演奏です。
野外での演奏のようです、
反射音が残響のように記録され、それが
不思議な音響効果を生み出すとともに、
なんともいえない味わいを
醸し出しています。

上の2つの録音とは異なり、
こちらはやや力技を
繰り出しているように感じられます
(アンサンブルの乱れを感じる、
ライヴならではの瑕かもしれないが)。
「ドイツ・グラモフォンの
創立120周年を記念する
ガラ・コンサート」という
名目ですので、気合いが
入りすぎていたのかもしれませんが、
この曲であればそれもありでしょう。

こちらも
プロモーション・ビデオとしての映像が
配信されています。

Orff’s Carmina Burana

この録音については、映像盤Blu-rayも
リリースされています。そちらは
トリフォノフをソリストとして迎えた
ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番も
収録されるなど、
豪華な内容となっています。
買おう買おうと思っているうちに、
絶版状態になってしまいました。
残念。


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さて、音盤としては私は、
定番のヨッフム盤、
そしてあまり評価されないのですが、
小澤の新旧両盤、
異色の出来映えのインマゼール盤を
所有しています。
実は定評のあるヨッフム盤よりも、
小澤新盤とインマゼール盤を
愛聴しています。
ヨッフム盤はあまりにも泥臭く(それが
この曲の味わいなのでしょうが)、
凄い演奏だと思うのですが、
「数年に一回聴けばいい」という
感じです。何度も聴くとすれば、
丁寧に合唱を聴かせている小澤盤、
そして曲の構造を細部まで明らかにした
インマゼール盤の方に
手が伸びてしまうのです。

1895 Carl orff

今回、amazon music unlimitedでの
配信曲をいくつも聴いてみたのですが、
録音の新しいこの3曲が
新鮮味に溢れるとともに、
この曲の魅力を十二分に引き出し、
初心者の方の耳にもしっかりと響く
演奏であると考えました。
ここからクラシック音楽の森に
分け入ってみてください。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

(2025.2.11)

〔ストリーミングで始めるクラシック〕

第1回 ラプソディ・イン・ブルー
第2回 ショパン:ピアノ曲集
第4回 モーツァルト:クラリネット五重奏曲

〔カルミナ・ブラーナの音盤はいかが〕

johnwpphillipsによるPixabayからの画像

【今日のさらにお薦め3作品】

モーツァルト:オーボエ四重奏曲
イザークの音楽
グリンベルクのベートーヴェン

【こんな音盤はいかがですか】

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