ショルンスハイムの素敵なハイドン

ハイドンのピアノソナタを聴く喜び

多作家ハイドンの作品を
すべて味わおうとするのは
無謀なことなのかもしれません。
当然、似たような曲が多数あるため、
いくつかの選集で十分と
考えるべきなのかもしれません。
それでも聴いてみたくなるのが
ハイドンです。

haydn : Die Klaviersonaten

ハイドン:
 ピアノ・ソナタ全集

クリスティーネ・ショルンスハイム
 (cemb,fp)
アンドレアス・シュタイアー(cemb,fp)
録音:2003・2004年

交響曲全集であれば
アダム・フィッシャー指揮の
オーストリア・ハンガリー・ハイドン管
による演奏のCD-BOX(33枚組)、
弦楽四重奏曲全集であれば
フェステティチ四重奏団の
CD-BOX(19枚組)を、
せっせと聴き続けてきました。
ピアノ・ソナタ全集については
モダン・ピアノと
チェンバロ、フォルテ・ピアノ等の
古楽器演奏の、
どちらがよいか迷ったすえに、
本CD-BOXにたどり着きました。

演奏している
クリスティーネ・ショルンスハイムは、
1959年生まれの
ドイツ人ピアニストです。
バロック音楽の演奏の
第一人者であるとともに、
16世紀から19世紀の
文献楽譜の研究者でもあります。
本演奏は、ショルンスハイムによる
2000年初頭におけるハイドン演奏の
研究の成果でもあるのです。

1732 Haydn

ハイドンのピアノ曲は単調であり
面白みに欠ける、といった評価が
散見されるのですが、
本盤は何とも感情豊かな演奏であり、
そのダイナミックな振幅には
目を見張るばかりです。
モダン・ピアノに引けを取らない、
いや、それ以上に表情豊かなハイドンが
立ち現れているのです。

一つはショルンスハイムの
演奏技術の高さに裏打ちされた
多様な表現によるものが
大きいのでしょう。
学者然としたところは
微塵も感じられず、演奏者自身が
ハイドン演奏を愉しんでいるのが、
スピーカーを通して伝わってきます。
レオンハルトの厳粛な演奏も
素晴らしいのですが、
こうした愉悦に満ちた演奏の方が、
繰り返し聴きたいと思えるはずです。

もう一つは、作曲年代に応じ、
楽器を使い分けていることでしょうか。
それが曲の構成と
しっかり合致していると感じます。
ちなみにブックレットの記載を
読み取ると、
Disc1・2・3・5・7はチェンバロ
(1・2・3と5・7は異なる楽器)、
Disc4はクラヴィコード、
Disc6・8~13がフォルテピアノ
(6・8~11と12・13は異なる楽器)、
計5種の楽器を使い分けているようです。
作曲技法の変化を、演奏楽器の遷移で
知ることができるという
なかなかの企画だと思います。

ちょっと驚いたのは、Disc3の5曲目
(トラック12-13)
「Partita Hob.XVIIa:2」および
Disc10の「Sonate Hob.XVIIa:1」の
2曲は連弾作品となっていて、
そのもう一人の奏者がなんと
アンドレアス・シュタイアー。
BOX裏面には
その名前はクレジットされておらず、
またAmazonやHMVのHP上の情報にも
記されておらず、
買ってはじめて各ディスクを収納した
紙ジャケット裏面の記載を見て
気づきました。

この演奏がまた愉しさに満ちています。
特にDisc10の
「Sonate Hob.XVIIa:1」は、
「先生と生徒」という
副題が付されている作品で、
先生が先に旋律を弾き、
生徒がその後を真似して
追いかけるような部分があります。
共演のシュタイアーは実は
ショルンスハイムの師。
まさに「先生と生徒」なのです。

さらに(よくわからないのですが)
各変奏曲の間に、
ノック音、携帯電話の着信らしき音、
それに反応する声など、
不思議な効果音が挿入されています。
サービス精神旺盛、遊び心満点、
子弟がともにハイドンを愉しみながら
弾いている場面が見えてくるようです。

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13枚をとっかえひっかえして
聴いているのですが、飽きが来ません。
ハイドンのピアノソナタを聴く喜びを
堪能できています。
それにしてもハイドンは、交響曲、
弦楽四重奏曲、ピアノソナタと、
素敵な作品群を遺してくれました。
次はピアノ三重奏曲全集でしょうか。
愉しみはつきません。
やはり、音盤は愉し、です。

(2024.6.2)

〔本盤収録曲一覧〕
Disc1
Sonate No.1 Hob.XVI:8
Sonate No.3 Hob.XVI:9
Sonate No.7 Hob.XVII:D1
Sonate No.2 Hob.XVI:7
Sonate No.28 Hob.XVI:5
Sonate No.4 Hob.XVI:G1
Sonate No.6 Hob.XVI:10
5 Variationen Hob.XVII:7
Disc2
Sonate Hob.XVI:16
Sonate No.10 Hob.XVI:1
Sonate No.5 Hob.XVI:11
Sonate No.19 Hob.XVI:47bis
Sonate No.8 Hob.XVI:5
Disc3
Capriccio Hob. XVII:1
Sonate No.15 Hob.XVI:13
Sonate No.16 Hob.XVI:14
Sonate No.13 Hob.XVI:6
Partita Hob.XVIIa:2
Disc4
Sonate No.11 Hob.XVI:2
Arietta No.1 mit 12 Variationen
 Hob.XVII:3
Sonate No.12 Hob.XVI:12
Sonate No.14 Hob.XVI:3
Sonate No.29 Hob.XVI:45
Disc5
Sonate No.38 Hob.XVI:23
Sonate No.39 Hob.XVI:24
Sonate No.40 Hob.XVI:25
20 Variation Hob.XVII:2
Fragment
Disc6
Sonate No.31 Hob.XVI:46
Sonate No.18 Hob.XVI:Es3
Sonate No.17 Hob.XVI:Es2
Sonate No.36 Hob.XVI:21
Sonate No.37 Hob.XVI:22
Sonate No.41 Hob.XVI:26
Disc7
Sonate No.30 Hob.XVI:19
Sonate No.46 Hob.XVI:31
Sonate No.45 Hob.XVI:30
Sonate No.42 Hob.XVI:27
Disc8
Sonate No.43 Hob.XVI:28
Sonate No.44 Hob.XVI:29
Sonate No.47 Hob.XVI:32
Sonate No.57 Hob.XVI:47
Arietta No.2 mit 12 Variationen
 XVII:2
Adagio XVII:9
DIsc9
Sonate No.48 Hob.XVI:35
Sonate No.52 Hob.XVI:39
Sonate No.51 Hob.XVI:38
Sonate No.50 Hob.XVI:37
Sonate No.49 Hob.XVI:36
Disc10
Sonate No.55 Hob.XVI:41
Sonate No.56 Hob.XVI:42
Sonate No.54 Hob.XVI:40
Fantasia XVII:4
Fragment (Allegretto)
Sonate No.34 Hob.XVI:33
Sonate No.20 Hob.XVI:18
Sonate Hob.XVIIa:1
Disc11
Sonate No.33 Hob.XVI:20
Sonate No.35 Hob.XVI:43
Sonate No.58 Hob.XVI:48
Sonate No.32 Hob.XVI:44
Sonate No.53 Hob.XVI:34
DIsc12
Sonate No.59 Hob.XVI:49
Sonate No.60 Hob.XVI:50
6 leichte Variationen XVII:5
 ”Thema Con variazion”
4 Variationen über die Hymne
 ”Gott erhalte” nach HobIII:77
Disc13
Sonate No.62 Hob.XVI:52
Sonate No.61 Hob.XVI:51
Andante con variazioni XVII:6
 ”Un piccolo divertimento”
Disc14
※ショルンスハイムによるレクチャー

〔ショルンスハイムの音盤〕

Haydn : 8 Concerti
Carl Philipp Emanuel Bach
平均律クラヴィア曲集 全曲

〔ハイドン・ピアノソナタの音盤〕

Ekaterina Derzhavina
Walter Olbertz
BRILLIANT CLASSICS
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