ロス・オトロス「カプスベルギアーナ」

その素朴な響きは吟遊詩人の世界

クラシック音楽の室内楽といえば、
ピアノやヴァイオリン、
チェロといったあたりを
イメージするのですが、
バロック音楽の場合は
「何でもあり」の感があります。
この一枚は、キタローネ、
ヴィオラ・ダ・ガンバ、
バロック・ギターによる編成であり、
その素朴な響きは吟遊詩人の世界を
イメージさせてくれます。

DHM-BOX2

BOX2 Disc26
カプスベルギアーナ

BOX2 Disc26

カプスベルガー:
 Toccata seconda
 Corrente seconda
 Toccata terza
 Toccata quarta
 Gagliarda,
ボニッツィ:
 La bella netta ignuda
カプスベルガー:
 Toccata quinta
 Toccata sesta
 Ballo
 Ancidetemi pur
 Toccata settima
 Correnteprima
 Toccata ottava
ベルターリ:
 Sonata in d
カプスベルガー:
 Come esser puo

ロス・オトロス
 ヒレ・パール(gamb)
 リー・サンタナ(lute)
 スティーヴン・プレイヤー(g&parc)
録音:2008年

ジョヴァンニ・ジローラモ・
カプスベルガー
は、
1580年生まれ(1651年没)の
イタリア初期の作曲家であり、
リュートやテオルボ、キタローネの
ヴィルトゥオーソとして
名を残しました。
多くの作品を創り上げたのですが、
そのリズムや旋律が
先進的かつ独創的であったため、
当時の評価は決して
芳しいものではありませんでした。
近年研究が進み、ようやく
その革新性が認識されるようになり、
再評価が進んでいる作曲家の一人です。

カプスベルガーの作品を集めた
本盤なのですが、他の作曲家の作品も
2曲収録されています。
一人はヴィンチェンツォ・ボニッツィ
(生年不明1590年以前、没年1630年)。
こちらもイタリアの作曲家であり、
オルガンやヴィオラ・バスタルダ
(ヴィオールの類の楽器)の
奏者でもありました。
もう一人は
アントニオ・ベルターリ(1605-1669)。
やはりイタリアの作曲家で、
ヴァイオリン奏者として活躍しました。
作品としてはオラトリオをはじめとする
声楽作品やオペラが目立ち、
本盤収録の器楽作品は
珍しいもののようです。

1580 Kapsberger

演奏は、
中世音楽からバロックにかけてを、
即興演奏と独特の演奏スタイルによって
表現するアンサンブル
「ロス・オトロス」です。
ヒレ・パールのヴィオラ・ダ・ガンバ、
リー・サンタナのリュート、
スティーヴン・プレイヤーの
バロック・ギターが、
素朴でありながらも深遠な世界を
紡ぎ出していきます。

やはりヒレ・パールの
ヴィオラ・ダ・ガンバの味わいは
最高です。
第1曲「Toccata seconda」の冒頭の
ひなびた音色は
味わい深いものがあります。
哀愁に満ちた旋律は
何度も聴き直してしまうほどです。
また第14曲、
ベルターリによる「Sonata in d」も
ヴィオラ・ダ・ガンバが美しく響きます。
本盤におけるこの一曲の効果と価値は
大なるものがあります。

そしてリー・サンタナのリュート、
スティーヴン・プレイヤーの
バロック・ギターの素朴な音色も
本盤の味わいどころです。
特にリュートは優しく繊細さを
感じさせる音色となっていて、
心に染み入ってくるようです。

それにしてもリュートという楽器は、
いくつか音盤も聴いてきたのですが、
それぞれの音盤(つまり奏者)によって
楽器の音色が
大きく異なって聞こえてきます。
同じリュートでも一つ一つの楽器の
構造が異なるためなのか、
奏者によって奏法が異なっているのか、
浅学の私にはよくわかりませんが、
面白さを感じてしまいます。

今日のオススメ!

なお、ネット上の情報を確認すると、
リー・サンタナの担当楽器は
リュートとなっているのですが、
本盤のジャケット裏には
chitarrone(キタローネ)と
記載されています。
キタローネという聴き慣れない楽器は、
バロック期にイタリアを中心として
発展した古楽器の一つです。
リュートのネックを大きく長くしたのが
テオルボという楽器なのですが、
そのテオルボのネックを
さらに引き延ばした、いわゆる
スーパー・ロング・ネック・リュート
なのです。
リュートにもさまざまあり、
まとめてリュート族と
分類されているのですが、
本盤の使用楽器は
通常のリュートなのか、それとも
ジャケットに記されているとおり
キタローネなる楽器なのか、
そちらも興味の湧くところです。

ドラマティックな要素は
微塵もありません。
しかし虚心坦懐に耳をすませば、
そこからいろいろな感情や情景が
読み取れる音楽世界が
広がっているのです。
素敵な音盤、素敵な音楽に、
また一つ出会うことができました。
やはり、音盤は愉し、です。

(2024.4.14)

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