リュリのディベルティスマン

「嬉遊曲」のようでそうではない

「ディヴェルティスマン」とは、
フランス語で「余興」という意味です。
したがって、
「divertimento」と語源はおなじであり、
訳すと「嬉遊曲」となるのですが、
本盤に収録された
リュリのディベルティスマンは、
「嬉遊曲」かというと、そうでないのが
なかなかに面白いところです。
「DHM-BOX」の1枚であり、
聴き応えがあります。

DHM-BOX 1

BOX1 Disc26
リュリ
「ディベルティスマン集」

BOX1 Disc26

リュリ:
 ディヴェルティスマン1
 ディヴェルティスマン2
 ディヴェルティスマン3

ギルメット・ローレンス(Ms)
カプリッチョ・ストラヴァガンテ
スキップ・センペ(hc)

バロック・オペラは長大であったため、
その途中に「骨休め」的な部分を
必要としていました。
その部分では、
オペラのストーリーとは直接関係の無い
歌や踊りをふんだんに盛り込み、
聴衆をリラックスさせるとともに、
喜ばせることを
目的としていたようです。
その「骨休め」的部分が
ディベルティスマンなのですが、
リュリの場合、
「嬉遊曲」とはいえないものがあります。

ディベルティスマン1~3を
構成している各曲は、
したがってリュリの創り上げた
オペラを初めとする作品から
抜粋したものです。
次のようなオペラや劇作品から
抜粋されています。
「プシシェ」
「ヴェヌュスの誕生」
「アルミード」
「アマディス」
「シャンボールのディヴェルティスマン」
「ミューズ」
「花の女神」
「愛の勝利」
「強いられた結婚」

今日のオススメ!

CD表記では1,2,3と
分かれているのですが、
これは演奏者センペによって、
組曲風に再構成された
配列と思われます。
ディベルティスマン1は、
以下のように配列されています。
①「アマディス」序曲
②「シャンボールの
  ディヴェルティスマン」から
③「ミューズ」から
④「ヴェヌュスの誕生」から
⑤「ヴェヌュスの誕生」から
⑥「花の女神」か
⑦「ヴェヌュスの誕生」から
ディベルティスマン2は、3曲です。
⑧「プシシェ」序曲
⑨「プシシェ」からイタリアの嘆き
⑩「アマディス」のシャコンヌ
ディベルティスマン3は、5曲です。
⑪「愛の勝利」から「アポロンのアントレ」
⑫「強いられた結婚」から
⑬「アルミード」から
⑭「アマディス」から
⑮アルミードのパッサカーユ
この配列は考え抜かれたものであり、
それぞれ一つの組曲を
聴いているかのように感じられます。

1632 Lully

では、なぜ「嬉遊曲」とはいえないのか?
もともとの楽曲が
悲劇を扱ったものであり、
したがってそこから
抜き出されたものもまた、
もの悲しい旋律となっているのです。
何曲かは声楽入りであり、
オペラアリア集の雰囲気も
湛えています。
このローレンスの歌唱が、
厳かさを感じさせる
抜群の表現力であり、
本盤の聴きどころの
一つとなっています。
なお、ジャケット裏のクレジットには、
ギルメット・ローレンスについて
「tenor」と記されているのですが、
聴く限り明らかにメゾソプラノです。
海外製作のCD-BOXは、
得てしてこういうミスが
つきものであり、仕方が無いのですが、
何とかならないものかと
思ってしまいます。

リュリの音盤はオペラ「アティス」を
所有しているのですが、これまで
あまり熱心に聴いてきませんでした。
これを機会に、リュリのオペラに
親しんでいきたいと思います。
それによって本盤の魅力を
さらに深く知ることができると
考えます。
やはり、音盤は愉し、です。

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(2023.10.22)

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