天国に誘われるような気分に浸れる一枚
古学の宝箱ともいえる
「vivarte 60CD collection」で、
特に私が気に入ったのが
ウエルガス・アンサンブルの
録音でした。
第1集ではアグリコラやゴンベール、
第2集ではピペラーレやブリュメル、
フレーチャやフェスタなど、
ルネサンス期の作曲家の録音が
秀逸でした。
この「DHM BOX」でも
素敵な演奏を披露しています。
BOX2 Disc16
イートン・クワイアブックからの音楽
ジョン・サットン:
7声のサルヴェ・レジナ
ウィリアム・ホーウッド:
5声のマニフィカト
エドモンド・スタートン:
喜んでください、キリストの
母であるおとめよ(6声)
ジョン・ブラウン:
6声のスターバト・マーテル
ロバート・ウィルキンソン:
9声のスターバト・マーテル
パウル・ファン・ネーヴェル(指揮)
ウエルガス・アンサンブル
録音:2011年
「クワイアブック」とはそもそも何か?
これは1490年頃から1502年にかけて
イートン・カレッジの聖歌隊のために
写譜されたといわれている
3冊からなる大型の楽譜のことです。
「ランベス・クワイアブック」、
「カイウス・クワイアブック」、
そしてこの
「イートン・クワイアブック」があります。
これら3つのクワイアブックに
含まれた作品は、
英国独自の様式によって
作曲されているものが多く、
イタリアやフランスのこの時期の音楽
(フランドル楽派が中心)と
またひと味違うものとなっています。
3つのクワイアブックの中でも
特に有名なのがこの
「イートン・クワイアブック」であり、
24人の作曲家による音楽が
含まれています(ただし、
完全な形で残っているのはごく僅か)。
イギリスの
初期ルネサンス・ポリフォニーの
発展の段階を示す重要な作品が
収められているといわれています。
本盤に取り上げられた5人の作曲家、
ジョン・サットン、
ウィリアム・ホーウッド、
エドモンド・スタートン、
ジョン・ブラウン、
ロバート・ウィルキンソン、
すべて私の手元の
三省堂「クラシック音楽作品名辞典」には
掲載されていない名前です。
ネットでも
まったく情報を探すことができません。
この時期のイングランドの音楽は、
まだまだマイナーだったと
いうことなのでしょう。
さて、収録されている5曲ですが、
5声から9声という声部の多い音楽を
愉しむことができます。
アカペラ作品が紡ぎ出す、
透明感に満ちた、
清楚かつ豊かな響きは、
聴く者の心を
清浄にする作用があります。
元来、教会で歌われていた音楽です。
天国に誘われるような気分に
浸れるのも当然のことかも知れません。
ここでもウエルガス・アンサンブルは
精緻な演奏を聴かせます。
ルネサンス期の音楽を、
次々に発掘・再現している
ウエルガス・アンサンブルならではの、
魅力に溢れた一枚となっています。
やはり、音盤は愉し、です。
〔ウエルガス・アンサンブルについて〕
この団体のCDをすべて集めたら、
ルネサンスの声楽を俯瞰できそうです。
ウエルガス・アンサンブルは
DHMレーベルへの録音も
多数あるのですが、
なぜかBOX第1集第2集には
この一枚しか採用されていません。
他の録音を、
今後購入していきたいと思います。
〔関連記事:ウエルガス・アンサンブル〕
(2022.10.22)
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