プロコフィエフのvnソナタは2曲揃えて
「ヴァイオリン・ソナタ」という形態の
音楽を聴くとしたら、
まずはベートーヴェンの10曲でしょう。
ではその次は?と尋ねられたら。
ブラームスかもしくは
ラヴェル&ドビュッシーと答える方が
多いのではないでしょうか。
私はプロコフィエフの
ヴァイオリン・ソナタが大好きで、
気に入ったヴァイオリニストの録音を
見つけては愉しんでいます。
最近よく聴くのは
このイブラギモヴァです。
プロコフィエフ:
ヴァイオリン・ソナタ集
プロコフィエフ:
vnソナタ第1番ヘ短調Op.80
vnとpのための
5つのメロディOp.35bis
vnソナタ第2番ニ長調Op.94bis
アリーナ・イブラギモヴァ(vn)
スティーヴン・オズボーン(p)
録音:2013年
プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ
第1番ヘ短調Op.80は、
第2番に遅れて完成されています
(着手は先)。
プロコフィエフというと、
鬱屈としてどこかすっきりしない旋律が
特徴ですが、この第1番などは
その最たる例でしょう。
戦争の時代に創られた音楽ですから、
感受性の強い作曲家がその影響を
受けなかったはずはありません。
イブラギモヴァは
激情に流されるのではなく、
冷徹に分析し、
細部を明確に描くことによって、
聴き手にその真の姿を提示しています。
ことさら悲劇性を強調するのではなく、
丁寧に陰影を彫り込むことに
成功しているのです。
ヴァイオリンソナタ
第2番ニ長調Op.94bisは、
1942年から1943年にかけて作曲された
フルートソナタを
1944年に改作した作品です。
着手していた第1番が存在したために、
第2番とされました。
フルートもいいのですが、
ヴァイオリンの方は
もっと完成度が高いと感じます。
第1番とは異なり、
幻想的な印象を受ける
不思議な感覚の曲です。
イブラギモヴァのヴァイオリンは
この第2番を美しく弾ききっています。
明晰かつ流麗であり、
この曲の美しさを
しっかりと引き出しています。
特に弱音部の美しさは最高です。
オズボーンというピアニストは
これまで知りませんでしたが、
バランス感覚に優れていると思います。
曲の構造を細部まで理解し、
ヴァイオリンの旋律を
際だたせるような演奏を
しているように思えます。
プロコフィエフの
ヴァイオリン・ソナタは、
2曲揃って一枚の盤に収められることが
望ましいと考えています。
どちらか一曲を、他の作曲家のそれと
組み合わせたものもあり、
そうしたコンセプトも
嫌いではないのですが、
この2曲は対になって初めて
それぞれの良さが引き立ってくると
考えます。
そうした意味でもイブラギモヴァの
この一枚は、
「5つのメロディ」とともに、
プロコフィエフの音楽を
十分に愉しませてくれます。
ぜひご一聴を。
(2022.2.20)
【当盤鑑賞に最適のSAKE】
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