わかりやすい現代音楽ジュ・ヒョンギ作品を聴く

ユ・ソンヒの素敵なピアノが奏でる優しい時間

現代音楽はとかくわかりにくいので
敬遠しているのですが、それでも
何か面白いものはないだろうかと
つまみ食いしている昨今です。
かつて音楽は音盤を購入して
初めて聞くことができたのですが、
現在はストリーミングという
強力な武器があります。
つまみ食いし放題なのです。
つまみ食いで終わらず、
聴き込んでしまったのがこの一枚です。

CIRCLE
~ジュ・ヒョンギ&ビリー・ジョエル

今日のオススメ!音盤

ジュ・ヒョンギ:
 子供時代
  星の王子さま
  スターダスト
  涙を隠して
  レミーの1歳の誕生日
  古代の子供時代
  カタツムリのための詩
  さまよいながら不思議に思うこと
  何も知らない少女
  風船が飛んでいくのを見ながら
  子供時代 1979
 シャンデリア
 ファンク・イェー!
  フォー・フォー・ハンズ
ビリー・ジョエル/ジュ・ヒョンギ編:
 ピアノのための組曲Op.8
  (スター・クロスド)
  恋人
  シャーベット
  妄想
 独白(別れについて)Op.1

ユ・ソンヒ(p)
ジュ・ヒョンギ(p)(track12)
録音:2024年

韓国人作曲家ジュ・ヒョンギと
あのビリー・ジョエルの作品の
組み合わせです。
なぜ韓国の現代作曲家と
米国のポップスターの作品を
並べるのか疑問に思う方も
いらっしゃるのではないでしょうか。
ビリー・ジョエルはもともとは
クラシックの教育を受けており
(16歳頃まで正式な
クラシック・ピアノのレッスンを
継続していた!)、
彼のポップスのヒット曲である
「素顔のままで」や
「ピアノ・マン」の中にも、
ベートーヴェンやショパンの語法が
随所に散りばめられているのです。
そして2001年には
「Fantasies & Delusions」という
全曲クラシック・スタイルの
ピアノ曲集をリリースしているのです。
このアルバムは
ショパン、シューマン、リストなどの
ロマン派音楽へのオマージュが
強く感じられるスタイルで、
ポップスの要素はほぼありません
(そのアルバムの演奏は
リチャード・ジューなるピアニストの
演奏であり、本人は弾いていない)。
そのアルバムからの2曲が
ジュ・ヒョンギのアレンジによって
本盤に収録されているのです。

なお、このジュ・ヒョンギの作品が
現代音楽っぽくなく、
すんなりと入り込んでくるのです。
つまり前衛的な現代音楽に
よく見られる、
無調や特殊奏法、構造実験などとは
距離を置き、
ロマン派の音楽を
現代に引き寄せながら、
旋律美・情緒・叙情性を
重視するタイプといえるでしょうか。
収録された組曲「子供時代」からして
シューマンの「子供の情景」や
ドビュッシーの「子供の領分」を
連想させます。

1973 Hyung-Ki Joo

ジュ・ヒョンギの作風としては、
調性を保ちながらも
現代的な響きを追究しているという
ことが挙げられます。
完全な無調には踏み込まず、
調性の枠内においての
作品となっています。
ただしその和声は
ロマン派作品に比べると
やや曖昧模糊となり、それが
独特の透明感を生み出しています。
ラヴェルやドビュッシーのような
後期印象派の作風に
現代的な静けさやミニマルな反復を
トッピングしたような感触でしょうか。

何よりも
「難解さ」のないことが素敵です。
現代作曲家には珍しい、
旋律線がはっきり歌うタイプなのです。
そのため耳に残るフレーズが多く、
感情の流れが自然に伝わってきます。
私のような現代音楽に
苦手意識のある人間の耳にも
すっと入ってくる柔らかさこそ、
ジュ・ヒョンギの魅力なのでしょう。

演奏しているユ・ソンヒのピアノも、
そうしたジュ・ヒョンギの作品を
よく理解しているのでしょう、
透明感のある音色で、穏やかな旋律を
優しく歌い上げています。
組曲「子供時代」では、そうした情感を
豊かに表現することに成功しています。

今日のオススメ!

ユ・ソンヒはこれまで
NAXOSレーベルなどに
カゼッラとカプースチンの録音を
発表しています。
後期ロマン派以降の作曲家に
やや傾斜しているようですが、
彼女の演奏でラヴェルやドビュッシーを
聴いてみたいものです。

YouTubeにレーベルからの動画が
公開されています。

Circle | Sun Hee You

なお、このアルバムの
トラック6「カタツムリの詩」に、
おそらくはユ・ソンヒ自身のものと
考えられる、
日本語と英語(と思う)による短い語り
(というよりもつぶやき)が
入っています。
はっきりしませんが、
「この雨の降る中、どっちに行って
いいのかな」と聞こえます。
カタツムリ視点でつぶやいたのでは
ないかと考えられるのですが、
このあたりも素敵な演出となっています
(もっとも、なぜ韓国語ではなく
日本語なのかは疑問、彼女はそんなに
深く日本に関わっているのか?)。

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新しい作曲家を知り、
新しい作品を知り、
新しい演奏家を知る。
ストリーミングの時代となり、
そうしたことが容易となりました。
今こそ知られざる音楽を探訪し、
その喜びを味わうときです。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

(2026.2.24)

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〔ユ・ソンヒの音盤はいかがですか〕

wal_172619によるPixabayからの画像

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Bach To Black
Katherine Bryan Plays
「SILFRA」

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