こちらも管楽入り「四季」、でもドイツ版

ヴィヴァルディの「四季」ドレスデン版

前回、ヴィヴァルディ「四季」の
管楽入りヴァージョンを
取り上げましたが、
実は20年以上前にもそうした音盤が
リリースされていました。
前回は
「フランス化」した「四季」でしたが、
今回は「ドレスデン版」という
呼称があるように、
ドイツ流のアレンジとなります。
いったい通常の「四季」や
フランス版「四季」とどう異なるのか?

「四季」管楽付きドレスデン版
「四季」によるスケルツォ・アルモニコ

今日のオススメ!音盤

ヴィヴァルディ:
 「四季」(協奏曲集
   「和声と創意の試み」Op.8より)
   (ドレスデン版)
  協奏曲ホ長調 RV.269「春」
  協奏曲ト短調 RV.315「夏」
  協奏曲ヘ長調 RV.293「秋」
  協奏曲ヘ短調 RV.297「冬」
グイード:
 「四季」による
  スケルツォ・アルモニコ Op.3
   「春」(5曲)
   「夏」(2曲)
   「秋」(2曲)
   「冬」(2曲)

フェデリコ・グリエルモ(vn・指揮)
ラルテ・デラルコ
録音:2001年

ヴィヴァルディの「四季」といえば、
1725年にアムステルダムで出版された
楽譜(ル・セーヌ版)が一般的ですが、
ドレスデン版は
それとは系統が異なるようです。
そのドレス版の仕掛け人は、
当時ドレスデンの宮廷楽団の
コンサートマスターだった
ヨハン・ゲオルク・ピゼンデルという
人物です。
ヴィヴァルディの弟子であり
親友でもあった彼は、
師ヴィヴァルディから直接譲り受けたり
自ら書き写したりして楽譜を持ち帰り、
それがドレスデンに
残されているのです。

1678 Vivaldi

ピゼンデルとそのオーケストラ
(ドレスデン宮廷楽団)団員は、
その強力な管楽器セクションを
活かすために、自分たちで
ヴィヴァルディの楽譜に手を加え、
演奏したのです。
それが「ドレスデン版」の正体です。
このドレスデン版は、
ヴィヴァルディがのちに出版した
「完成版」よりも前の時期の形を
留めているといわれています。
いわば「初稿」や「異稿」に
近い存在なのです。
「系統が異なる」とはそういうことです。

そしてこの演奏は、
ドレスデンのザクセン宮廷に残る
それらピゼンデル写本を参照し、
それを演奏様式として
グリエルモが再構築したものなのです。

実際に聴いてみると、
既存の「四季」との違いに驚かされます。
スピーカーから聴いたことのない音が
次から次へと飛びだしてきて、
「四季」のイメージをことごとく
ひっくり返していきます。
ソロ・パートも従来の演奏よりも
技巧的に聞こえる部分があるかと思えば
逆にシンプルになっているところも
あります。
これらがピゼンデルの
装飾や改訂の結果なのか、それとも
指揮のグリエルモの研究成果なのか、
浅学の私には判然としませんが、
耳には十分に刺激的です。

加えて、ドイツ風の響きを
出そうとしたのでしょう、
複数の楽器を使い分けるなど、
通奏低音が厚みのある響きを
創り上げています。

さらに同じ管楽入りの
フランス版と比較すると、
このドレスデン版の方が、管楽器が
前面に出ているように感じられます。
小鳥の声などを
リコーダーなどの管楽器で
より写実的に表現しようと試みた
フランス版に対し、
このドレスデン版は
管楽器奏者の腕前を披露することを
目的としたかのように、
ところどころで管楽器が
目立った存在感を発揮しているのです。
ときにはヴァイオリン・ソロの難所を
肩代わりするなど、
より積極的な役割を担っています。
まるでヴァイオリン協奏曲集
「四季」ではなく、
合奏協奏曲(コンチェルト・グロッソ)
「四季」といったイメージです。

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さて、前回のフランス版、
そして今回のドレスデン版と、
前者は色彩豊かな
表題音楽的表現のための管楽器使用、
後者は凄腕集団のための華麗で重厚な
響きを狙った管楽器導入と、
その目的に「お国柄」が顕著に
表れているのが面白いところです。
イタリア生まれの「四季」には、
フランスとドイツの
「ご当地アレンジ」が存在していたことに
驚きと感動を覚えます。
優雅でファッショナブルな
フランス流で情景の美しさを堪能し、
構築的でダイナミックな
ドイツ式で豪華な宮廷気分を味わう。
21世紀を過ぎてから、
「四季」の素敵な演奏が
次から次へと登場しているのです。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

〔追記:グイードの「四季」について〕
本盤もまたグイードの「四季」が
抱き合わせで収録されています。
実は同じ「四季」どうしだからという
単純な理由だけではなく、
この二曲には
少なからぬ因縁があります。
そうしたことも含めて、
グイードの「四季」については
別の機会に取り上げたいと思います。

(2026.2.17)

〔関連記事:「四季」フランス版〕

ヴィヴァルディ&グイード「四季」

〔関連記事:ヴィヴァルディ〕

ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ集
ヴィヴァルディ:「四季」

〔グリエルモの音盤〕

Helmut H. KroissによるPixabayからの画像

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