聴いて満足、観て納得のフランス流「四季」

ヴィヴァルディとグイードの「四季」

ヴィヴァルディの「四季」も、
もう買うまいと思いながら、
この一組を買ってしまいました。
一つは映像(DVD)付きであること、
もう一つはグイードなる
これまで知らなかった作曲家の「四季」も
収録されていること、
つまり物珍しさで
手に入れてしまった次第です。
しかし聴いてびっくり観てびっくりの
素敵な一組でした。

ヴィヴァルディ&グイード「四季」

今日のオススメ!音盤

CD1
ヴィヴァルディ:
 四季(協奏曲集
   「和声と創意の試み」Op.8より)
  協奏曲ホ長調 RV.269「春」
  協奏曲ト短調 RV.315「夏」
  協奏曲ヘ長調 RV.293「秋」
  協奏曲ヘ短調 RV.297「冬」

CD2
グイード:
 四季(四季による
   スケルツォ・アルモニコ Op.3)
  「春」
   時は移ろう
   季節はどれもすぐに変わる
   アンダンテ
   小川
   喇叭の調べ
    (トランペットのエール)
   ミュゼット
   羊飼いたちの踊り
  「夏」
   大気は燃え上がる
   西風の精がいなくなる
   カッコウの歌
   助けに飛び来たれ、ああ褒むべき
    農耕の女神セレスよ
   セレスの降臨
   刈入れをする人々の踊り
   ラルゴ
   牧神たちの踊り
   ニンフたちのムニュエ
    (メヌエット)
   プレルーディオ・アルペッジョ
    (分散和音によるプレリュード)
   セレナータ
   立派な恋人
   野蛮なる嵐
  「秋」
   秋の再来を祝おう
   酒神バッコスの仲間たちの
    歓声と笑い声
   アレグロ
   眠り
   プレスト
   アダージョ・エ・ピアーノ
   アレグロ
   狩猟
  「冬」
   霜の季節
   北風の精が我々に宣戦布告する
   昼の時間を大切にせよ
   戦士たちの行進
   笑顔の溢れる祝典
   風などいくらでも
    吹き荒れるがいい

DVD:※CD1・CD2と同一内容
アンドレス・ガベッタ(vn・指揮)
ヴェルサイユ王室歌劇場管弦楽団
録音:2020年

「あれ、何かが違う!?」。
聴いて驚いたのは、
その色彩感の豊かさです。
ともすればピリオド楽器の
くすんだ音色のために
素朴な味わいとなるべき
古楽器オケの音色が
彩り豊かに感じられるのです。
「あれ、こんな音、聞こえてたっけか!?」
しばらく聴くと、
それは管楽器の音が
加わったことによるものであると
理解できました。
リコーダー、ホルン、
オーボエ等だと思います。
さりげなく加わったこれらの管楽器が、
「四季」の外観を大きく変えることなく、
少しだけ「リッチ化」させたような
雰囲気をつくりあげているのです。

1678 Vivaldi

そもそも「四季」は、
出版譜における編成は明確であり、
ソロ・ヴァイオリン、弦楽合奏、通奏低音
(チェロ+チェンバロorオルガン)のみと
なっています。
そこに管楽器の指定は一切ありません。

ところが18世紀フランスの
宮廷や劇場では、
イタリア音楽を演奏する際に
オーボエやファゴット、時には
ホルンやトランペットなどを加えて、
音色を豊かにする
「フランス流の慣習」があったようです。
特にヴェルサイユ宮廷では、
「弦楽だけでは地味すぎる」という
考え方が強く存在し、
舞踏会や祝祭の場では管楽器を
積極的に加えた経緯があります。

しかも1720年代後半から、
フランス(特にパリ)では、
このヴィヴァルディの「四季」が
空前の大ヒットとなります。
フランス人は自然の情景を
音楽で描写する「標題音楽」が
大好きでした。
そこで、この人気曲をより華やかに、
より「フランス人好み」に合わせて
演奏しようとする動き、
つまり「フランス化」が
行われたということなのです。
鳥の声などには
リコーダーやフルート、オーボエ、
狩りのシーンにはホルン、
といった具合に用いられ、
楽器の音色によって
情景はより具体的に
表現されているのです。

この、どこに
どんな管楽器が使われているかは、
DVDの映像を観ると一目瞭然です。
実にいろいろな楽器が登場し、
音楽を彩っています。
本セットはこのDVDの付属が
貴重なものとなっています。

Opéra Royal du Château de Versailles

ところで、当時のパリにおける
ヴィヴァルディの人気は、
今で言うところの
「世界的ポップスターの爆発的ヒット」に
近いものがあったようです。
現代の私たちが想像する以上に、
当時のフランス人は
ヴィヴァルディの音楽、
それも「四季」に熱狂していたのです。
その素敵な音楽を、
もっと自分たちの国の音楽として
引き寄せたい、という思いが、
このような「四季のフランス化」による
演奏につながったのでしょう。

もちろん19世紀以降、
原典主義が広がるにつれ、
こうしたアレンジ的演奏は
なされなくなるとともに、
20世紀にはその存在すら
忘れ去られたのです。
ヴィヴァルディの時代の響きを
再現しようという試みは
いくつもなされ、
飽和状態に達していますが、
「ルイ15世が愛し、
パリの聴衆が熱狂した、
当時のフランス風のヴィヴァルディ」を
現代に再現してみようという
プロジェクトは、本盤が
はじめてなのではないでしょうか。
本演奏は単に
「珍しい編成で弾いてみました」という
レベルを超えて、
古楽の新しいシーンを切り拓いた、
画期的な録音なのです。

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このヴィヴァルディの
「四季」パリ・ヴァージョンの
存在感が大きく、
併録されているグイードの「四季」が
かすんでしまいます。
グイード「四季」も面白いものであり、
愉しめたのですが、そちらは
改めて取り上げたいと思います。
こんな「四季」も素敵です。
ぜひご賞味ください。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

(2026.2.10)

〔関連記事:ヴィヴァルディ「四季」〕

ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ集
「ヴィヴァルディ・四季」

〔Château de Versailles Spectacles〕

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