21世紀のフォーレ・歌曲全集を聴く

フォーレの時代のピアノで奏でられた歌曲全集

フォーレの歌曲集については、
アメリングとスゼーの全集があれば
あとはいらない、そう思っていました。
しかしそちらの録音は1970年代。
やはり21世紀の録音が聴きたいと思い、
探してみましたが、2001年以降、
全集はあまり多くは出ていないのです。
数少ないものから一つ選んだのが、
本盤です。

フォーレ「歌曲全集」

今日のオススメ!音盤

Disc1
フォーレ:
 蝶と花 Op.1-1
 5月 Op.1-2
 私は口づけをしたから
 オリンピオの悲しみで
 ある修道院の廃墟で Op.2-1
 船乗りたち OP.2-2
 オーロラ
 孤独Op.3-1
 漁師の歌 Op.4-1
 リディア Op.4-2
 秋の歌 Op.5-1
 愛の歌 Op.5-2
 君なくて Op.5-3
 朝の歌 Op.6-1
 悲しみ Op.6-2
 シルヴィ Op.6-3
 夢のあとで Op.7-1
 賛歌 Op.7-2
 舟歌 Op.7-3
 川のほとりで Op.8-1
 この世では Op.8-3
 罪の償い Op.8-2
 この地上ではどんな魂も Op.10-1
 タランテラ Op.10-2

Disc2
フォーレ:
 ネル Op.18-1
 旅人 Op.18-2
 秋 Op.18-3
 揺りかご Op.23-1
 私たちの夢 Op.23-2
 秘め事 Op.23-3
 ある1日の詩 Op.21
  No.1 Rencontre
  No.2 Toujours
  No.3 Adieu
 愛の歌 Op.27-1
 歌を教える妖精 Op.27-2
 マドリガル Op.35
 あけぼの Op.39-1
 捨てられた花 Op.39-2
 夢の国 Op.39-3
 イスファーンのばら Op.39-4
 祈り
 降誕祭 Op.43-1
 夜曲 Op.43-2
 贈り物 Op.46-1
 月の光 Op.46-2
 涙 Op.51-1
 墓地にて Op.51-2
 スプリーン Op.51-3
 ばら Op.51-4
 付随音楽「シャイロック」Op.57より
  第1曲
  第3曲
 ヴォカリーズ・エチュード
 町人貴族のセレナーデ

Disc3
フォーレ:
 マンドリン Op.58-1
 ひそやかに Op.58-2
 グリーン Op.58-3
 クリメーヌへ Op.58-4
 やるせない夢心地 Op.58-5
 歌曲集「優しい歌」 Op.61
  第1曲
  第2曲
  第3曲
  第4曲
  第5曲
  第6曲
  第7曲
  第8曲
  第9曲
 金の涙 Op.72
 消え去らぬ香り Op.76-1
 アルペジオ Op.76-2
 メリザンドの歌
 牢獄 Op.83-1
 夕暮れ Op.83-2
 9月の森で Op.85-1
 波に漂う花 Op.85-2
 伴奏 Op.85-3
 一番楽しい道 Op.87-1
 山鳩 Op.87-2
 沈黙の贈り物 Op.92
 シャンソン Op.94
 トスカーナのセレナーデ Op.3-2
 平和が来た Op.114

Disc4
フォーレ:
 歌曲集「イヴの歌」 Op.95
  第1曲
  第2曲
  第3曲
  第4曲
  第5曲
  第6曲
  第7曲
  第8曲
  第9曲
  第10曲
 歌曲集「幻想の水平線」 Op.118
  第1曲
  第2曲
  第3曲
  第4曲
 歌曲集「幻影」 Op.113
  第1曲
  第2曲
  第3曲
  第4曲
 歌曲集「閉じられた庭」 Op.106
  第1曲
  第2曲
  第3曲
  第4曲
  第5曲
  第6曲
  第7曲
  第8曲

エレーヌ・ギュメット(s)
ジュリー・ブーリアンヌ(Ms)
アントニオ・フィゲロア(T)
マルク・ブーシェ(Br)
オリヴィエ・ゴダン(p)
 ※1859年製エラール・ピアノ
録音:2015年~2017年

2020年には
シリル・デュボワなるテナーが、
たった一人で全集録音を果たしました。
そちらも注目です。
しかしフォーレの歌曲は、
男声に適した曲、
女声にふさわしい曲と、
それぞれ適性のようなものがあると
思うのです。
本盤はギュメット(s)、
ブーリアンヌ(Ms)、
フィゲロア(T)、
ブーシェ(Br)の四人が、
もっとも適した声域で歌い分けていて、
聴き応え十分です。
しかも四人はカナダを代表する
実力派の声楽家たちであり、
その表現力や技巧は申し分ありません。

ソプラノのギュリメットは、
透明感のある声で、
涼やかに歌い上げています。
メゾ・ソプラノのブーリアンヌは
もう少し肩の力を抜いて歌って欲しい
場面が見られるものの、
優れた技巧を発揮しています。
テナーのフィゲロアは、
表情過多になることなく、
フォーレの繊細な詩情を
細やかに表現していて、
好感が持てます。
バリトンのブーシェも
存在感のある歌声で魅了されます。

この四人の素晴らしい歌唱が、
優秀な録音によって生々しいまでに
スピーカーから飛びだしてくるのです。
よほどよい環境・条件で
録音されたのでしょう。
歌曲はこれまで録音の優劣を
あまり気にしないで
聴いてきたのですが、
よい録音で聴く歌曲は
やはり格別なものがあります。

さらに本盤の特徴は、
伴奏のピアノにあります。
ピアニストのゴダンが使用しているのは
1859年製エラール・ピアノ。
フォーレが実際に
耳にしていたであろう音色を
再現しようという試みなのでしょう。
私は判別することはできませんが、
ピッチも当時の標準である
435Hzに調律されています。

今日のオススメ!

気になるのは、
HMVなどのサイト上に載っている、
発売元からのPR文です。
「ピッチは1859年当時一般的だった
435Hz。
フォーレ自身がまさに耳にしたであろう
音色と少し高めの調律で…」と
記載されています。
現代の標準は440Hzです。
ならば当時の435Hzは
「少し低め」であるはずです。
単純な記載ミスなのか、
それとも何か別の標準があって、
それよりも435Hzは
「少し高め」なのか、謎です。
また、そのピッチであれば
聴感上どのような効果となるのか。
浅学の私にはまったく分かりませんが、
いずれにしても435Hzという調律が、
1859年の空気を運ぶ役割を
果たしていると考えるべきなのでしょう
(どなたか詳しい方、教えてください)。

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ただ、そうしたことはさておいて、
私が聴いた限り(そして70年代の
アメリング&スゼー盤と
比較したとき)、
デュボワのピアノからは、
透明感と温かさが感じられるように
思われます。
それは四人の素敵な歌唱と
渾然一体となり、
聴き手に迫ってくるのです。
これこそまさに
21世紀のフォーレ歌曲全集です。
愉悦、ここに極まれり。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

(2025.9.23)

〔配信で聴くフォーレ歌曲全集〕

Charles RondeauによるPixabayからの画像

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