
ガッツァニーガの軽妙で愉悦感のあるオペラ
モーツァルトの
「ドン・ジョヴァンニ」といえば
有名すぎて、その内容を
あえて取り上げるまでもありません。
しかし同名のオペラを
ガッツァニーガなる作曲家も
創り上げています。
本盤を購入したときは
さほどの魅力を感じなかったのですが、
最近じっくり聞いてみたところ、
モーツァルト版とは異なった味わいを
感じることができました。
ガッツァニーガ
歌劇「ドン・ジョヴァンニ」

ガッツァニーガ:
歌劇「ドン・ジョヴァンニ
(または石の客)」
ダグラス・ジョンソン
(T:ドン・ジョヴァンニ)
ルチアーナ・セッラ
(S:ドンナ・エルヴィーラ)
エルツビエタ・ズミトゥカ
(S:ドンナ・アンナ/マトゥリーナ)
エディト・
シュミット=リーエンバッヒャー
(S:ドンナ・ヒメーナ)
フェルッチョ・フルラネット
(Bs:パスクァリエッロ)
カルロ・アッレマーノ
(T:オッターヴィオ公爵)
ヨハン・テイッリ
(Bs:騎士長/石像)
アントン・シャリンガー
(Bs:ビアージョ)
ヘルムート・ヴィルトハーバー
(T:ランテルナ)
シュトゥットガルト室内合唱団員
ターフェルムジーク・バロック管弦楽団
ブルーノ・ヴァイル
録音:1990年
モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」と
ガッツァニーガ「ドン・ジョヴァンニ」。
前者の台本は有名なダ・ポンテですが、
後者のそれはベルターティなる
作家のものとなっています。
台本作者が異なるのですが、
その筋書きはかなり似通っています。
もちろんスペインの伝説の放蕩者
ドン・ファンの物語、つまり
「昔話」を下敷きにしたものですから、
似通っているのは当然です
(それだけドン・ファン伝説は
オペラ化される素地があった)。
しかしあまりにも似すぎているのです。

このガッツァニーガは1743年に生まれ、
1810年に没した、
イタリアの作曲家です。
今でこそその名は
忘れ去られようとしているのですが、
当時は有名であり、
本作品「ドン・ジョヴァンニ」も
十分に成功したらしいのです。
このガッツァニーガ版の初演は
1787年2月5日(ヴェネツィア)。
モーツァルト版はその約8か月後、
同年10月29日(プラハ)で
初演されています。
いくつかの資料をあたると、
ダ・ポンテはガッツァニーガ版の初演後、
すぐにその台本とスコアを
入手したとされており、
彼の台本はベルターティのものを
「種本」として参照した可能性が
高いのです。
つまりヒットしたガッツァニーガ版を
パクった形となったようです
(当時はそうしたことは普通にあり、
何ら問題にならなかったらしい)。
モーツァルト版「ドン・ジョヴァンニ」と
比べてみると、
かなりシンプルな構成となっています。
ヴァイル指揮の本盤は
レチタティーボが
省略されているのですが、
それを差し引いてもその構成は
すっきり整然としています。
モーツァルト版は管弦楽が
ドラマティックな効果を
上げているのに対し、
ガッツァニーガ版のそれは
伴奏の範疇を超えていません。
その分、
軽妙なテンポで音楽と筋書きが進行し、
喜劇的な側面が強調されているのです。
しかもその旋律はわかりやすく
印象に残りやすいのです。
モーツァルトほど
技巧を凝らしていない結果といえば
それまでですが、だからといって
作品として未熟とは言い切れないのでは
ないかと思うのです。
強いていえば、
モーツァルトが音楽的な技巧を凝らして
登場人物の心理を重層的に表現し、
芸術的な完成度の高さを
追求したのに対して、
ガッツァニーガは娯楽性の高さと
小劇場でも上演可能な汎用性を
重視したのではないかと考えられます。
他の作品を調べてみると、
ガッツァニーガはほぼオペラ専門に
書いていた作曲家のようです。
あらゆるジャンルにおいて
傑作を書き上げた
天才芸術家モーツァルトとは異なり、
ガッツァニーガは当時幾人もいた
職人肌のオペラ作曲家だったようです。

本作品の存在は以前から知られており、
調べてみるとマイナーなレーベルから
音盤がいくつかリリースされています。
それらは本盤とは違って全曲版であり、
なんとかして聴いてみたいと思います
(すべて現在絶版中
もしくは国内流通なし)。
モーツァルト版も素敵ですが、
ガッツァニーガ版も
魅力は十分にあります。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。
(2025.9.16)
〔モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」〕

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