
宝石のような室内ソロ・カンタータ
スカルラッティならチェンバロ曲を
聴いていればいいのではないか?
そう思っていましたが、
鍵盤楽曲を多数残したのは
息子のドメニコの方でした。
こちらは父スカルラッティの作品集。
素敵なカンタータを
愉しむことができます。
アッレサンドロ・スカルラッティ
「ソロ・カンタータ集」

アッレサンドロ・スカルラッティ:
Ombre tacite e sole
Il genio di Mitilde
Perchè tacete, regolati concenti?
O pace del mio cor
Il Rosignolo
Il Infirmata, vulnerata
デイヴィッド・ダニエルズ(C-T)
ニコラス・マギーガン(指揮&cemb)
アルカディアン・アカデミー
録音1998年
アレッサンドロ・スカルラッティは、
生年1660年、没年1725年の作曲家です。
ナポリで生まれた彼は、
オペラとカンタータを得意とし、
ナポリ学派の歌劇の創始者として
知られています。
17世紀の初期イタリア・バロックの
声楽様式から
古典派への橋渡しのような位置づけを
持つ作風です。

バロック期のカンタータといえば、
どうしても大バッハを
イメージしてしまいます。
バッハのカンタータは、教会での
礼拝を主目的としたものであり、当然、
宗教曲としての厳かな様式となり、
その背後に
どうしても「神」を感じてしまいます。
それに対して、こちらの
スカルラッティのカンタータには
「人」の感情が最大限に表出しています。
スカルラッティのカンタータの
特徴の一つは、そのオペラティックな
表現にあるのでしょう。
それまでの時代の声楽曲にくらべ、
形式的に進化しただけでなく、
感情表現についても技巧が
尽くされているという印象を受けます。
それを受け継いで発展させたのが、
次の世代のヘンデルということに
なります。
編成という点においても、
バッハとスカルラッティとでは
大きな違いが見られます。
教会での演奏を想定した
バッハのカンタータは、
オケと合唱が中心となり、
大編成での演奏を
意識したものとなっています。
一方、スカルラッティの場合は、
主に貴族の私的な場で演奏されることを
目的とした室内カンタータという
性格が強くなっているのです。
その多くは
独唱(ソプラノまたはテノール)
+通奏低音(チェンバロ+低音弦楽器)
という最小限の編成のものが多く、
本盤収録曲も
そうした編成となっています。
なお、調べてみると、
その詩の内容も
宗教色の強いものもある一方で、
多くは恋愛を題材とした
世俗的・牧歌的なものとなっています。
したがって、
スカルラッティのカンタータについては
そのソリストの歌こそが
聴きどころとなっているのです。
本盤のソリストである
デイヴィッド・ダニエルズは
もともとテノールだったのすが、
カウンター・テナーへと転向して
成功を収めた声楽家です。
その清々しい声に魅了されます。
技巧も申し分なく、
そこに込められている感情が、
歌詞を理解できない聴き手にも
しっかりと伝わってくる
表現となっています。

555の鍵盤ソナタを創り上げた
ドメニコ・スカルラッティの父・
アレッサンドロ・スカルラッティは、
ソロ・カンタータをやはり
500曲以上作曲しているのです。
その一部しかまだ音盤となっていない
状況であり、これからすてきな録音が
次々に登場してくる予感があります。
音楽的親密さと詩的表現を追求した
宝石のような作品群の
スカルラッティのカンタータ。
心が満たされるような時間を
過ごすことができます。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。
(2025.8.5)
〔アルカディアン・アカデミーの音盤〕
ニコラス・マギーガン指揮
アルカディアン・アカデミーによる
スカルラッティのカンタータは
以下のようにリリースされています。
本盤はその第2集にあたります。
〔スカルラッティのカンタータの音盤〕
〔関連記事:DHM-BOX収録作品〕




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