晴れ渡ったイタリアの青空のような澄み切った音楽
新年を迎えましたので、
少し敬虔な気持ちに浸ろうと思って
取り出したCDです。
元日の夜明け前から
4時間ほど聴いていました。
昨年購入したものの、
収録されている音楽の正体が
今ひとつわからず、でも
わからないなりに素敵な音楽であり、
折に触れて聴いています。
「Laudario Di Cortona No.91」
(全47曲)
Disc1
Venite a Laudare
Laude Novella Sïa Cantata
Ave, Donna Santissima
Madonna Santa Maria
Ave Maria, Gratïa Plena
Ave, Regina Glorïosa
Dal Ciel Venne Messo Novella
Altissima Luce Col Grande Splendore
Fami Cantar L’amor Di la Beata
O Maria, D’omelia
Regina Sovrana de Gram Pïetade
Disc2
Ave, Dei Genitrix
O Maria, Dei Cella
Ave, Vergene Gaudente
O Divina Virgo, Flore
Salve, Salve, Virgo Pia
Vergene Donçella Da Dio Amata
Peccatrice, Nominate
Cristo È Nato Et Humanato
Gloria ‘N Cielo E Pace ‘N Terra
Stella Nuova ‘N Fra la Gente
Plangiamo Quel Crudel Basciare
Ben È Crudele E Spïetoso
Disc3
De la Crudel Morte de Cristo
Dami Conforto, Dio, Et Alengrança
Onne Homo Ad Alta Voce
Iesù Cristo Glorïoso
Laudamo la Resurrectïone
Spiritu Sancto, Dolçe Amore
Spirito Sancto Glorïoso
Spirito Sancto, DÀ Servire
Alta Trinità Beata
Troppo Perde ‘l Tempo
Ki Ben Non T’ama
Stomme Allegro Et Latioso
Oimè Lasso E Freddo Lo Mïo Core
Disc4
Chi Vole Lo Mondo Descprecçare
Laudar Vollio Per Amore
Sïa Laudato San Francesco
Ciascun Ke Fede Sente
Magdalena Degna Da Laudare
L’alto Prençe Archangelo Lucent
Faciam Laude a Tutt’i Santi
San Iovanni Al Mondo È Nato
Ogn’om Canti Novel Canto
Amor Dolçe Sença Pare
Benedicti Et Llaudati
Salutiam Divotamente
フランコ・ラディッキア指揮
アルモニオーソインカント
アノニマ・フロットリスティ
録音:2013-2014年
「ラウダリオ・ディ・コルトーナ」とは、
イタリア・トスカーナ州の小さな町
コルトーナの図書館アーカイヴで
約140年前に発見された、
13世紀の写本です。
民衆宗教歌曲であり、
テキストはイタリア語で書かれていて、
イタリア最古(知られている限り)の
音楽集となっています。
当然、キリスト教の
宗教音楽・教会音楽ということに
なります。
演奏を聴いてみると、
確かに宗教音楽であるのですが、
世俗音楽的な要素が強く見られます。
そうした意味での
「民衆宗教歌曲」なのでしょう。
Disc1の冒頭の曲などは、
ハープと思われる楽器の伴奏にのって、
女声による土俗的な音楽が
奏でられます。
かと思えばDisc2の冒頭の曲などは、
無伴奏による
ポリフォニーな歌が奏でられ、
グレゴリオ聖歌の女声版といった
趣です。
この素敵な演奏しているのは
声楽アンサンブルである
アルモニオーソインカント。
ブックレットに掲載されている写真には
6人の女性が写っているのですが、
クレジットされている名前は
全部で11名です。
Disc1の前半部、
そしてDisc2の前半部は
女性のみのアンサンブルであり、
きわめて透明度の高い、
心地良い歌声が展開していきます。
古楽に興味のない方が聴いても、
十分に癒されること間違いなしです。
ただし、Disc1の中盤あたりから
男声が加わってきます。
Disc3ではほぼ男声のみに
なってくるので、
かなりグレゴリオ聖歌の雰囲気に
近くなってきます。
それでも世俗的な節回しが残っていて、
聴きやすいものとなっています。
そしてDisc3中盤以降からは、
民謡風の素朴な旋律の歌が現れ、
また雰囲気が一転します。
4枚組の音盤なのですが、
いくつもの表情を見せる
音楽集となっています。
なお、本盤の演奏には
同じく声楽アンサンブルである
アノニマ・フロットリスティが
加わっています。
本盤の男声は、
アルモニオーソインカントの
写真に写っている6名の女性以外の
男性なのか、あるいは
アノニマ・フロットリスティが
男声アンサンブルなのか、
よくわかりませんが、
いずれにしても心に染み入るような
音楽を紡ぎ上げています。
両団体とも中世からルネサンス期の
楽曲をレパートリーとし、
いくつかの音盤を録音しています。
他の音盤も
いずれ聴いてみたいと思います。
ところどころに伴奏(あるいは間奏)が
現れるのですが、ほとんどは
一つの楽器でなされています。
ブックレットによると、
フルート、ハープ、リュート、
ヴィエル(ヴァイオリンのような
初期の弓楽器)、
ハーディ・ガーディ(機械仕掛けの
ヴァイオリンのような楽器)、
ポータテイティヴ・オルガン(携帯用の
ふいごの付いた中世のオルガンの一種)
までは読み取れるのですが、
それら以外にもいくつかの楽器が
加わっているようです。
例によって歌詞はまったくわからない
(イタリア語の歌詞すら
添付されていない)のですが、
わからずとも十分に愉しめます。
グレゴリオ聖歌のような
コテコテの宗教音楽ではありません。
晴れ渡ったイタリアの青空のような
澄み切った音楽が広がっていきます
(イタリアに行ったことは
ないのですが)。
音楽は、理解することよりも
愉しむことが重要です。
こうした愉しめる音楽、
愉しめる音盤と、今年もたくさん
出会っていきたいと思います。
やはり、音盤は愉し、です。
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