全編「ノリ」と「勢い」で駆け抜けたような熱演
カバレフスキー、
名前だけは知っている作曲家。
プロコフィエフやショスタコーヴィチの
影に隠れてしまい、
現代では影の薄い作曲家と
なってしまった感があります。
当サイトでも以前この作曲家の
ピアノ協奏曲を取り上げました。
なかなかに素敵な曲を書いている
作曲家なのです。
今回は交響曲です。
カバレフスキー:交響曲第1番・第2番
カバレフスキー:
交響曲第1番嬰ハ短調op.18
交響曲第2番ハ短調op.19
交響詩「春」op.65
悲愴序曲op.64
アルメニア・フィルハーモニー管弦楽団
ロリス・チェクナヴォリアン(指揮)
録音:1997年
ピアノ協奏曲同様、
交響曲も聴き応えがあります。
ロシア音楽特有の「ノリ」と「勢い」が
色濃く刻み込まれているのです。
交響曲第1番は
ロシア革命十五周年を記念する
勝利の交響曲です。
曲そのものが
人心を鼓舞する内容なのですから、
ノリが悪いはずがありません。
全2楽章の短い曲ですが、
駆け抜けるように
耳に飛び込んできます。
第2番も
第1楽章から勢いの激しい曲です。
ところが第2楽章になると、
壮大さはそのままに、
ゆったりとしたテンポの
哀愁を帯びた旋律が響き渡ります。
そして第3楽章は
「苦悩のあとの勝利」でも
表しているのか、
明るい曲調から再び壮麗な音楽へと
展開していきます。こちらは
トスカニーニやクーゼヴィツキーらが
取り上げたことにより、
カバレフフスキーの名を
一躍有名にしてしまった曲なのです。
チェクナヴォリアンと
アルメニア・フィルといえば、
ハチャトリアンの9枚組BOXを
取り上げましたが、その録音同様、
全編「ノリ」と「勢い」で駆け抜けたような
熱演が繰り広げられます。
オーケストラも決して上手には
聴こえないのですが、
その分、十分にエネルギッシュです。
ロシア音楽の演奏について、
最もそれらしく演奏できる
指揮者とオケであるといえるでしょう。
さて、このカバレフスキー、
かのジダーノフ批判に
さらされることなく、
政府公認作曲家として
大手を振ってソ連時代を生きた
作曲家だったようです。
これらの曲も
政府の意向に沿った曲として
創られたものなのでしょうか。
ジダーノフ批判の矢面に立たされた
ショスタコーヴィチの音楽が
後世にしっかり残ったのに対し、
政府のお抱え作曲家として生きた
カバレフスキーはその分、
忘れ去られるのが
早かったのかも知れません。
現代日本を生きる私たちは、
そのような歴史的経緯は別にして、
音楽そのものを愉しむべきでしょう。
この盤もCD棚から「発掘」した一枚です。
こんな盤をいつ買ったのか?
いつ聴いたのか?
自分のことながら、
全く記憶にありません。
録音年から判断すると、
20年ほど前に
何らかの形で購入したはずなのですが。
まあ、音楽はそのときそのときで
愉しめればいいのです。
※なお、カバレフスキーはこのほかに
第3番、第4番の
2曲の交響曲を残しています。
日本人指揮者の大植英次が振った盤が
cpoというレーベルから
出ているようです。
いずれ聴いてみたいと思います。
(2022.5.29)
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