フラウト・トラヴェルソの素敵な音色
「フルート協奏曲」と名のつく曲は、
我がCD棚には
モーツァルトの2曲を収めた盤と
ニールセンの盤しか
見当たりませんでした。
私にとっては馴染みの薄い音楽です。
「vivarte 60CD collection」に
収められている当盤には、
18世紀ドイツの作曲家4人の
フルート協奏曲が収録されています。
「18世紀ドイツのフルート協奏曲」
カール・シュターミッツ:
フルート協奏曲ト長調 Op.29
フランツ・クサヴァー・リヒター:
フルート協奏曲ホ短調
ヨハン・シュターミッツ:
フルート協奏曲ト長調
ホフマン(ハイドン):
フルート協奏曲ニ長調
グルック:
精霊の踊り
バルトルド・クイケン(fl:協奏曲)
クレール・ジモン(fl:グルック)
ターフェルムジーク・バロック管
録音:1991年
1曲目はカール・シュターミッツの
フルート協奏曲です。
カール・シュターミッツは
1745年生まれの
ドイツのチェコ系作曲家であり、
マンハイム楽派の
傑出した作曲家でもあります。
そして3曲目の
ヨハン・シュターミッツは
カールの父親であり、
マンハイム楽派の開祖でもあります。
2曲目の
フランツ・クサヴァー・リヒターもまた
マンハイム楽派の代表的一員です。
つまり当盤は、
モーツァルトにも大きな影響を与えた
マンハイム楽派の協奏曲3曲が
メインとなっている
プログラムなのです。
フルート、といっても古楽器
フラウト・トラヴェルソなのですが、
現代楽器よりも柔らかく、
上品な響きが感じられます。
これこそが宮廷音楽なのではないかと
納得してしまいます。
もちろんこれは
フラウト・トラヴェルソ演奏の
第一人者であるバルトルド・クイケンの
功績が大きいのでしょう。
そして4曲目は長らくハイドン作と
考えられてきたフルート協奏曲
(実際はホフマン作曲)で、
この曲から雰囲気が大きく変わります。
旋律がより明確となり、
そこに感情の表出のようなものが
感じられるのです。
高貴な場の雰囲気を醸し出すような
役割を持っていた宮廷音楽としての
前3曲とは異なり、
音楽が芸術家個人のものとなったことが
うかがえます。
ここでもクイケンの
フラウト・トラヴェルソが
旋律に宿る微妙な息づかいを
見事に表現しています。
温かみのある味わい深い音色は、
繰り返し聴いても
決して飽きることがありません。
最後の一曲は有名な
グルックの「精霊の踊り」。
このプログラムの締めくくりとして
これ以上ふさわしい音楽は
ないかも知れません。
ただしこの一曲のみ、
演奏はクレール・ジモンが
担当しています。
ややゆったりとしたテンポで
しみじみとした演奏を披露しています。
ことさら表情をつけるわけではなく、
シンプルな演奏に徹しているところは
好感が持てます。
30年も前の録音なのですが、
vivarteレーベルの優秀な技術によって
音の鮮度が保たれたままです。
ターフェルムジーク管の
明るいトーンの演奏が
しっかりと活きています。
「フルート協奏曲」を調べてみましたが、
まだまだ多くの作曲家が
創り上げていることがわかります。
素敵な音楽は、まだまだありそうです。
(2022.5.28)
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