決して有名でない、しかし愛してやまない一枚
「クラリネット協奏曲」というと、
世間一般ではモーツァルトを
イメージするのではないかと思います。
次はニールセンくらいでしょうか。
思いつくのはそう多くはないはずです。
そもそも管楽器の協奏曲自体、
マイナーですから。
でも私はこのコープランドの
クラリネット協奏曲が大好きです。
「コープランド:管弦楽曲集」
ガンビル/ナッシュヴィル室内管弦楽団
コープランド:
3つのラテン・アメリカのスケッチ
静かな都会
クラリネット協奏曲
バレエ音楽「アパラチアの春」
(オリジナル・バレエ組曲)
ポール・ガンビル(指揮)
ナッシュヴィル室内管弦楽団
ポーラ・エンゲラー(English-hrn)
スコット・ムーア(tp)
ラウラ・アーデン(cl)
録音: 2001年
クラリネットという楽器の
素朴な音色が、ひなびた味わいを示す
コープランドの楽曲の叙情性と
非常に良くマッチしているのです。
特に心に残る旋律が
数多くあるわけではないのですが、
疲れた心と体をすっぽりと包み込んで
癒してくれるような
優しさに満ち溢れた音楽です。
一度聴いただけではその良さが
わかりにくい曲です。
でも、何度か聴いているうちに、
その雰囲気を忘れられなくなるような、
そんな愛おしさを感じてしまうに
違いありません。
この曲の収録されているCDを
いくつか持っているのですが、
NAXOSレーベルから出ているこの盤が、
私はもっとも好んで聴いています。
独奏者のラウラ・アーデンを
検索しても、この盤ともう一つ
NAXOSの他の作曲家の
クラリネット曲を集めた盤の
2枚しか見つかりません。
あまり有名ではないのでしょう。
しかし私はこの盤の
クラリネットの音色に
もっとも惹かれてしまうのです。
奏者のクラリネットの音色が
特に優れているからなのか、
オーケストラとクラリネット、
双方の音をクリアに捉えた
録音の優秀さによるものか、
あるいはその両方なのか、
自分でもよくわからないのですが、
でも惹かれてしまうのです。
この曲の有名なところとしては
ベニー・グッドマンの
演奏盤でしょうか。
もともとこの曲は
ジャズ・クラリネット奏者の
ベニー・グッドマンの依頼によって
作曲されたものであり、
CDとしてはグッドマン盤が
原点といえるでしょう
(私はまだ聴いていないのですが)。
そのベニー・グッドマンへの
オマージュ・アルバムとして編まれた
ザビーネ・マイヤー盤も
洗練された演奏です。
モーツァルトのクラリネット協奏曲の
録音で評価を得ている
デヴィッド・シフリン盤も
面白いと感じます。
Chandosレーベルの
ジャネット・ヒルトン盤の
温かみのある演奏、
Sommというレーベルから出ている
サラ・ウィリアムソン盤なども素敵です。
決して有名でない曲の、
決して有名でない盤、
しかし愛してやまない演奏。
クラシック音楽ファンなら誰しも
そんな一枚があるはずです。
私にとってはこの盤が
そうした一枚です。
(2021.11.28)
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