ベンセクリ「Ciclo de canciones」
クラシック音楽では、
未だに新しい音楽が
生まれ続けています。
未知の曲、未知の作曲家との出会いは、
心をときめかせてくれます。
今回購入したベンセクリも、
愉しく聴くことができました。
ベンセクリ「Ciclo de canciones」
1 ヴァイオリン協奏曲
2 コロラトゥーラ・ソプラノと
オーケストラのための連作歌曲
3 クラリネット協奏曲
インチャウスティ(vn:1)
田中彩子(ソプラノ:2)
レイ(cl:3)
リヴィウ国立フィルハーモニー交響楽団
パブロ・ボッジャーノ(指揮)
1曲目のヴァイオリン協奏曲から、
不思議な世界が広がります。
「夢への喚起」「タンゴへの喚起」
「失われた世界への喚起」という
タイトルが付された3つの楽章からは、
南米の密林の奥から
響いてくるかのような旋律が
紡ぎ出されます。
3曲目のクラリネット協奏曲もまた、
南米の広大な大地を
彷彿とさせる曲調です。
クラリネットの妙技を味わうよりも、
そこかしこから聞こえてくる
南米特有のうねるようなリズムや
豊かな色彩感を
楽しむべき音楽となっています。
本盤の最大の聴きどころは
2曲目の「コロラトゥーラ・ソプラノと
オーケストラのための連作歌曲」です。
ソプラノは日本人の田中彩子。
この曲は
彼女のために書かれた作品であり、
当盤は田中彩子の歌を聴くためにある
CDなのです。
冒頭、無伴奏から
彼女の美しい高音が響き渡ります。
スペイン語(だと思う)の歌詞の言葉は
わからないのですが、
彼女の圧倒的な表現力の前では
言葉は必要ないのではないかと
思えるくらいです。
豊かな自然や大地の息吹、
生命の躍動感が、
ひしひしと心に伝わってきます。
何でも彼女は
南米最高峰コンサートホールCCKでの
国立アルゼンチン交響楽団との
シーズン開幕コンサートで
この曲の世界初演を行い、
アルゼンチン最優秀初演賞を
受賞したとのことです。
さて、このベンセクリという作曲家、
アルゼンチンの作曲家の中で
最も注目を浴びているとのことです。
3曲ほど交響曲も
書いているようなので、
それらもCD収録されることを
期待したいと思います。
※当盤のジャケット装幀が、
田中彩子の美しい肖像を
用いていないことだけが
非常に残念です。
(2020.10.18)