ヘンデル「テオドーラ」を聴く

マクリーシュによる端正なアプローチのオラトリオ

ヘンデルのオペラやオラトリオを
聴いていこうと思い、
「メサイア」をはじめとして、
「リナルド」「ジューリオ・チェーザレ」
「セルセ」など聴いてきました。
このところ聴いたのは、
数年前に入手した「テオドーラ」。
ポール・マクリーシュの指揮した盤です。

ヘンデル「テオドーラ」全曲
ポール・マクリーシュ

今日のオススメ!音盤

ヘンデル:
 オラトリオ「テオドーラ」 HWV68

スーザン・グリットン
 …テオドーラ(S)
ロビン・ブレイズ
 …ディディムス(C-T)
ポール・アグニュー
 …セプティミウス(T)
アンガス・スミス
 …使者(T)
スーザン・ビックリー
 …イレーネ(Ms)
ニール・デイヴィス
 …ヴァレンス(Bs)
ガブリエリ・コンソート
ガブリエル・プレイヤーズ
ポール・マクリーシュ(指揮)
録音:2000年

例によって
歌詞はまったくわかりません。
ざっくりとした粗筋は、
紀元四世紀のアンティオキアを舞台に、
キリスト教徒の女性・テオドーラと
ローマ兵・ディディムスの信仰と愛、
そして殉教を描いたもの、
ということになります。
三部構成の内容は
以下のようになります。

第1部:信仰の告白と迫害の始まり
第1場:
 ローマ総督は異教の祭典を命じ、
 キリスト教徒にも参加を強制する。
第2場:
 テオドーラは信仰を理由に
 参加を拒否、牢獄へ送られる。
第3場:
 ディディムスは彼女の信仰に
 感銘を受け、彼女を救う決意をする。
第2部:牢獄での苦悩と救出
第1場:
 テオドーラは牢獄で祈りを捧げ、
 神への信仰を貫く。
第2場:
 テオドーラは深い悲しみと
 信仰の間で葛藤する。
第3場:
 ディディムスが牢獄に忍び込み、
 テオドーラと衣服を交換して
 彼女を逃がす。
第4場:
 ディディムスは代わりに捕らえられ、
 死刑を宣告される。
第5場:
 テオドーラは彼の犠牲を知り、
 戻って共に死ぬことを決意する。
第3部:殉教と救済
第1場:
 ヴァレンスは二人に死刑を宣告する。
第2場:
 テオドーラとディディムスは
 殉教と神への信頼を誓う。
第3場:
 二人は殉教し、天の救済を受ける。

1685 Handel

主な登場人物は以下の通りです。
テオドーラ
 高貴なキリスト教徒の女性。
 信仰を貫き、異教の祭典を拒否して
 投獄される。
 ディディムスと深い絆を持つ。
ディディムス
 ローマ兵だが
 密かにキリスト教に改宗している。
 テオドーラを救うために命を賭ける。
ヴァレンス
 ローマ総督。異教の祭典を強制し、
 キリスト教徒を迫害する権力者。
セプティミウス
 ローマ兵でありながら、
 ディディムスやテオドーラに同情的。
 彼らの信仰に心を動かされる。
イレーネ
 テオドーラの友人。キリスト教徒。
 テオドーラにとっての精神的支柱。
使者(Messenger)
 語り手的役割の存在。

歌詞はわからなくとも、粗筋を理解し、
歌を聴き取れればいいと考えています。
特に本作品は
ヘンデル晩年の傑作であり、
音楽が充実しています。
さらに歌手たちの表現力豊かであり、
どんな内容を歌っているのか、
しっかりと伝わってきます。
聴きどころは満載なのですが、
特に私が気に入っているところを
いくつか挙げてみます。

やはり主役のテオドーラのアリアに
魅了されます。
第2部第2場に配置された
2つのアリアが秀逸です。
「With Darkness deep as is my
Woe」(CD2・トラック8)が秀逸です。
おそらくは牢獄で歌う
嘆きのアリアでしょう。
深い悲しみが表現さています。
そして「O that I on Wings cou’d
rise」(CD2・トラック11)は、
運命に立ち向かおうとする
信念のようなものを感じさせます。
私はこの2曲を
繰り返し再生してしまいます。

続いてディディムスです。
第1部第6場のアリア「Kind Heav’n,
if Virtue be thy Care」
(CD1・トラック27)、
そして第2部第3場のアリア
「Deeds of Kindness」
(CD2・トラック15)の2曲が、
すがすがしさが感じられる
素敵な味わいです。
私はカウンター・テナーについては
歌手の好き嫌いが激しいのですが、
このロビン・ブレイズの
柔らかい語り口は耳に良く馴染みます。

筋書きの上では
あまり重要ではないのですが、
音楽の上で存在感を発揮しているのが
メゾソプラノのイレーネでしょう。
第1部第4場「As with rosy Steps」、
そして第3部第1場「Lord to thee」が
素敵です。

これにあとは第3部第6場での
アリアからデュエットへと移行する
「Streams of pleasure」、
そして短いレチタティーボを挟んでの
最終曲の合唱「O Love divine」までが
感動のフィナーレとなります。

今日のオススメ!音盤

もちろん歌だけではありません。
演奏団体ガブリエリ・コンソートは、
ピリオド楽器による端正なアプローチで
ヘンデルの音楽を再現しています。
過剰な装飾やオペラ的表現を避け、
この崇高なドラマを
粛々と織り上げているのです。

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生年がバッハと同一でありながら、
音楽史の中では軽んじられがちな
ヘンデルですが、こうした
オラトリオやオペラを聴く限り、
音楽史の正当な流れの中に
位置していたのは
やはりヘンデルのほうであることを
強く認識させられます。
ヘンデルのオペラとオラトリオ、
HWV1~71の(紛失したものを除く)
全作品を聴いてみたいと思います。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

(2025.11.4)

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