
ピリオド奏法によるモダン・トランペット
DHM-BOX第2集に
収録されている一枚です。
トランペット音楽を集めたものであり、
こうしたものは
単独で購入することがないため、
新しい音楽に出会ったような感触を
愉しんでいます。
「バロックトランペットのための音楽」

テレマン:
3つのトランペット、ティンパニと
オルガンのための協奏曲ニ長調
作者不祥(17世紀):
2つのトランペットとオルガンの
ためのシンフォニアニ長調
J.S.バッハ:
トランペットとオルガンのための
3つのコラール前奏曲:
BWV721/BWV1093/BWV1100
フランチェスキーニ:
2つのトランペットと
オルガンのためのソナタ ニ長調
作者不祥(17世紀):
5声部のクラリーノのための
ソナタ ハ長調
ヘンデル:
2つのトランペット、ティンパニと
オルガンのための組曲ニ長調
ビーバー:
「祭壇または宮廷用ソナタ集」
~2つのトランペット、
ティンパニとオルガンのための
ソナタ第12番ハ長調
2つのトランペットとオルガンの
ための「バレッティ」ハ長調
ムーレ:
4つのトランペット、ティンパニと
オルガンのための
ファンファーレ ニ長調
フリーデマン・インマー&
トランペット・コンソート
Friedemann Immer(tp)
Hans-Jorg Packeiser(tp)
Klaus Hannes Osterloh(tp)
Francois Petit-Laurent(tp)
Hannes Kothe(tp)
Eckhard Leue(tim)
Matthias Nagel(org)
録音:1988年
テレマン、大バッハ、ヘンデル、
ビーバーと、バロック期の有名どころが
名前を連ねています。
その中に混じって、
聞いたことのない作曲家も二人。
3曲目の作曲者、
ペトロニオ・フランチェスキーニは
1651年生まれのイタリアの作曲家。
元来はチェリストだったようで、
本盤収録の
トランペットとオルガンのソナタは
この作曲家にとっては
異色作なのでしょう。
8曲目のムーレが謎です。
ジャケット裏には
「Johann Joachim Mouret
(1682-1773)」と
記載されているのですが、
いくら情報を検索しても
該当する作曲家は見つかりません。
おそらくは
「Jean-Joseph Mouret」
(ジャン=ジョゼフ・ムーレ)
(1682–1738)と思われます。
「Johann Joachim Quantz」と
「Jean-Joseph Mouret」を
混同した結果として生じた
記載ミスなのでしょう。
ジャン=ジョゼフ・ムーレは
南フランスに生まれた作曲家であり、
作品の多くは
今日では演奏されていないようですが、
「ムーレのファンファーレ」という
作品だけが
かろうじて知られているようです。

演奏者として名前が
クレジットされているのは、
トランペット奏者5名と
ティンパニスト、
オルガニストだけです。
トランペットを主体とした
室内楽作品集なのです。
それでもトランペット数本による演奏は
十分に華やかで刺激的であり、
「室内楽的」というよりは
小規模のオーケストラ作品を
聴いているような感覚があります。
オルガンとティンパニが、
これほどトランペットと相性の良い
楽器であることを初めて知りました。
「バロック・トランペット・
ミュージック」という表題と
なっているのですが、
使用楽器はモダン・トランペットです。
現代楽器にバロック奏法を
十分に加味し、
バロック色を前面に押し出している
演奏なのです。
フリーデマン・インナーは
ピリオド楽器である
キー・トランペットによって演奏した
音盤もいくつかリリースしています。
本盤もキートランペットで演奏しても
良さそうなものですが、
何らかの理由があるのでしょう。
考えられることとしては、
キートランペットの
操作性の悪さでしょうか。
コントロールの難しい
キートランペットで演奏するよりも、
微妙な制御の可能な
現代のトランペットによる
ピリオド奏法のほうが
当時の音色に
近づけるということなのでしょう。
実際、本盤の演奏は、
当時の王宮の祝祭的な雰囲気を
十分に再現しています。

「楽器の音を愉しむ」ものとしては、
これまではピアノ、そして
ヴァイオリン、チェロ、
管楽器では
クラリネットくらいでしたが、
トランペットもやはり素敵です。
トランペットの音の味わいが
理解できるようになれば、
オーケストラの音もまた違った
楽しみ方ができるはずです。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。
(2025.10.28)
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