クララ・シューマンのピアノ曲に魅せられる

スザンネ・グリュツマンの素敵な演奏で

ロベルト・シューマンの妻・
クララの作曲した作品も、
近年ではだいぶ
録音されるようになってきました。
「クララ・シューマン:ピアノ曲全集」と
銘打たれた音盤も、
本盤以外にもいくつか見られます。
一つ一つ
チェックしたわけではありませんが、
1995年録音の本盤は、その
最初のものではないかと思われます。

クララ・シューマン「ピアノ独奏曲全集」

今日のオススメ!音盤

クララ・シューマン:
Disc1
 スケルツォ第2番 Op.14
 ロベルト・シューマンの
  主題による変奏曲 Op.20
 音楽の夜会 Op.6
 ベッリーニの「海賊」の
  カヴァティーナによる
  演奏会用変奏曲 Op.8

Disc2
 3つのロマンス Op.11
 ピアノ・ソナタ ト短調
 ロマンツェ イ短調
 4つの性格的小品 Op.5

Disc3
 4つの束の間の小品 Op.15
 即興曲「ウィーンの思い出」 Op.9
 スケルツォ第1番 Op.10
 3つのロマンツェ Op.21
 3つの前奏曲とフーガ Op.16

Disc4
 4つのポロネーズ Op.1
 ワルツ形式によるカプリス Op.2
 ロマンスと変奏 Op.3
 ロマンティックなワルツ Op.4
 ロマンツェ ロ短調

スザンネ・グリュツマン(p)
録音:1995年

いきなりDisc1の1曲目
「スケルツォ第2番Op.14」で
驚かされます。
ショパンと遜色ない
洗練された音楽です。
わずか4分弱の小品ですが、
強烈な印象で迫ってきます。
「シューマンの奥さんは
どんな曲を書いたのかな?」などと
なめてかかると火傷をしそうです。

続く「ロベルト・シューマンの
主題による変奏曲Op.20」が
また素敵です。
7つの変奏曲からなる曲ですが、
1853年6月8日のロベルトの誕生日に
贈られたという一曲なのだそうです。
悲しくも美しいロベルトの主題が、
さまざまな装飾を施されて
展開していきます。

Disc2には、
「ピアノ・ソナタ ト短調」が
収録されています。
ベートーヴェンであれば
ピアノ曲といえば真っ先に
ピアノソナタが挙げられるのですが、
ロベルトやクララ、ブラームスの
時代においては「ピアノソナタ」という
形式はあまり流行りませんでした。
クララのこの曲も、
余り注目されることのない曲ですが、
それでもロマン派の香りの濃厚な、
素敵な味わいです。

Disc3で注目は
「3つの前奏曲とフーガOp.16」です。
ロベルトとクララはバッハ研究、
そして対位法研究に勤しみ、
それぞれ対位法的な作品を
生み出しています。
このクララの「Op.16」は、夫妻の
研究成果としての一曲と考えられ、
大バッハへの傾倒も感じさせます。
ロベルトの主題を素材としながら、
バッハの対位法が生かされている構成を
じっくりと味わうべきなのでしょう。

Disc4は、Op.1~4、
作曲年では1828~1833年という
比較的初期の作品が収録されています。
すべて愛らしい曲ばかりであり、
心が和む一枚となっています。
それらの中でも素敵なのは
「ロマンスと変奏Op.3」でしょうか。
次々に曲想やテンポが変わるとともに、
美しい旋律がこぼれ落ちてくるように
展開していきます。なお、
この曲はクララが初めてロベルトに
献呈した作品ということです。

1819 C.Schumann

女性に対する偏見が
少なからずあったのでしょう、
当時は、そしてこれまでも、
作曲家としてはクララは
正当には評価されていませんでした。
「シューマンの妻」というフレーズで
説明されることの多いクララですが、
夫の威を借りずとも一人の作曲家として
十分に評価されるべき作品を
残していることが、
本盤から理解できるはずです。
なによりも彼女のピアノ作品には、
ショパンから続く
ロマン派ピアノ曲の華やかさと
ブラームスの後期作品を
予感させるような音楽的な深みの二つを
しっかりと感じさせてくれます。

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演奏のスザンネ・グリュツマンは
1964年ライプツィヒ生まれの
女性ピアニストです。
初めて聴くピアニストでしたが、
調べてみると
旧東独のピアノの巨匠である
ディーター・ツェヒリンに師事し、
のちに夫人となった人物のようです。
ディーター・ツェヒリンは
1926年生まれですので、
かなりの年齢差夫婦だったはずです。
それはともかく、
ドイツの正統派のピアニズムで、
クララのピアノ曲全集が完成したのは
素敵なことです。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

(2025.6.17)

〔クララ・シューマンのピアノ曲音盤〕

クララ・シューマン:ピアノ作品集
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〔関連記事:ロマン派のピアノ曲〕

ショパン:ピアノ曲集
ドヴォルザーク:スラブ舞曲
ラヴェル:ピアノ協奏曲
madbosによるPixabayからの画像

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ハイドン:ピアノ・ソナタ全集
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集

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