百采「水の反映」を聴く

ユーフォニアムとピアノの豊潤な音楽世界

「日本人演奏家による
素敵な音楽はないか」と探していて
見つけた一枚です。
ユーフォニアムという
あまり馴染みのない管楽器にも
惹かれました。
聴いてみると心地良い音楽の世界が
展開していきます。

「水の反映」百采・石原悠企

今日のオススメ!音盤

エルガー:
 朝の歌 Op.15-2
フォーレ:
 シシリエンヌ Op.78
ショパン:
 序奏と華麗なポロネーズ ハ長調Op.3
W.G.ジョーンズ/
大野真理子・深石宗太郎編:
 シーリア
向井響:
 ユーフォニアムとピアノのための
  「水の反映Ⅱ」
ドビュッシー:
 美しい夕暮れ
ブラームス:
 月夜 WoO.21
 ホルン三重奏曲 変ホ長調 Op.40
  (ユーフォニアム版)

百采
 佐藤采香(ユーフォニアム)
 鐵百合奈(p)
石原悠企(vn)
録音:2024年

クラシック音楽は
40年近く聴き続けてきたのですが、
楽器そのものの知識がないため、
ホルンやチューバは理解していましたが
ユーフォニアムという楽器の存在を
ある時期まで知りませんでした。
十年くらい前でしょうか、
「響け!ユーフォニアム」というアニメ
(私は観ていませんが)のタイトルで
知った次第です。

聴いてみました。
1曲目のエルガー「朝の歌」は、
本来はヴァイオリンとピアノという
構成なのですが、
ヴァイオリン・パートを
ユーフォニアムで置き換えています。
これがまたなんともいえない
温かい音色です。
ヴァイオリン以上に
「朝」にふさわしい音楽と
なっているように感じます。

2曲目、フォーレ「シシリエンヌ」は、
チェロとピアノが一般的ですが、
ヴァイオリンやフルートなど、
さまざまな楽器で
演奏されることがあります。
そうした音盤も聴いてきたのですが、
ユーフォニアムによる演奏も素敵です。
ノスタルジックな旋律の雰囲気が
強調され、
味わい深いものとなっています。

3曲目のショパン
「序奏と華麗なポロネーズ」もまた
チェロとピアノの音楽ですが、
ユーフォニアムによる演奏は、
まったく別の音楽に聞こえます。
やはりこの曲では
ピアノとユーフォニアムの掛け合いが
聴きどころとなります。

圧巻は5曲目、
向井響「水の反映Ⅱ」でしょう。
「ユーフォニアムと
ピアノのための」という文言から
わかるように、
はじめからユーフォニアムを意識して
創られた曲だからでしょうか、
その質感が
最もよく映える曲となっています。

最後のブラームス「ホルン三重奏曲」
ユーフォニアム版も
聴き応えがあります。
この曲にはヴァイオリンが加わり、
より豊かな響きを
愉しむことができます。
やはり聴き慣れたこの曲が、
別の表情を見せて迫ってきます。

今日のオススメ!

はじめての
ユーフォニアム音楽体験であり、
この録音の素晴らしさが
ユーフォニアムという
楽器自体にあるのか、
それとも演奏している
佐藤采香の技量によるものなのか、
私には判別できません。
しかしながら佐藤は、
「2018年リエクサ国際コンクールにて
日本人初の優勝を果た」したという
ネット情報を合わせて考えると、
きわめて有望な
若手演奏家であることが推察できます。
調べてみると、すでに2枚の音盤を
リリースしているとのことであり、
そちらも聴いてみたいと思います。

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なお、ピアノの鐵百合奈も、
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集を
完成させるなど、
近年活躍の目立つピアニストであり、
注目の逸材です。
その二人の奏でる音楽ですから、
素晴らしいのも当然なのでしょう。

ユーフォニアムという楽器の
温かい音色と、
佐藤采香という才能豊かな音楽家の、
その両方の魅力を味わうことのできる、
素敵な録音です。
ぜひご賞味ください。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

(2025.5.27)

〔佐藤采香の音盤〕

〔鐵百合奈の音盤〕

fernando zhiminaicelaによるPixabayからの画像

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