クープラン「3つのルソン・ド・テネブレ」を聴く

ネルソン、カークビーの歌に魅せられる

「宗教曲」というとオケと合唱団による
大がかりで長大な曲であるかのような
思い込みがありました。
古楽を聴くようになり、
決してそうではないことに
気づきました。
小編成のシンプルな曲の方が
心に染み入ってきます。
ボッケリーニ
「スターバト・マーテル」も
大好きな曲ですが、
クープラン
「3つのルソン・ド・テネブレ」も
気に入っています。
やや古い録音となってしまいましたが、
ネルソンとカークビーの
二人のソプラノによる本盤を
愛聴しています。

クープラン
「3つのルソン・ド・テネブレ」

今日のオススメ!音盤

クープラン:
 3つのルソン・ド・テネブレ
  第1のルソン・ド・テネブレ
  第2のルソン・ド・テネブレ
  第3のルソン・ド・テネブレ
 復活祭のためのモテット

ジュディス・ネルソン(S)
エマ・カークビー(S)
ジェーン・ライアン(gamb)
クリストファー・ホグウッド(org)
録音:1977年

パリのロンシャン女子修道院のために
作られたとされる
「ルソン・ド・テネブル」。
これは深夜に行われる
聖務日課の時間のための音楽です。
表題にある「テネブル」は
「闇」を意味するのだそうです。
なんでも儀式の中で、
灯していた蝋燭を一本ずつ消していき、
最後には全て消して真っ暗にする、
その中で歌われる
歌だからなのだそうです。

1668 F.Couperin

曲の規模は宗教曲としては
きわめて小さく、
二人のソプラノ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、
そしてオルガンという
小編成で演奏されます。
二人のソプラノが
「第1のルソン」「第2のルソン」を
それぞれ分担して歌唱し、
「第3のルソン」はその二人の
二重唱によって演奏されます。

本盤の二人のソプラノですが、
どちらも古楽界の
パイオニア的存在です。
ジュディス・ネルソンは、
1939年生まれ(2012年没)であり、
本盤録音に前後する
70~80年代にかけての古楽復興期に
活躍したソプラノです。
本盤録音の時期はまさに
彼女の黄金期だったはずです。
一方、エマ・カークビーはそれより
10歳年下であり(1949年生まれ)、
本盤録音時は、若手の第一人者として
キャリアをスタートしていた時期です。
両者とも、
クリストファー・ホグウッドの
エンシェント室内管や、
アンソニー・ルーリーの
コンソート・オブ・ミュージックと
共演し、数々の名演奏を
オワゾリール・レーベルに残しました。

実は私は二人の声の区別がつかず、
「第1」「第2」の
どちらをどちらが歌っているのか、
今でもブックレットを確認しないと
わかりません。
それほど二人の声質はよく似ています。
どちらも透明感溢れる声で、
あたかも暗闇の中に揺らめいている
灯のような情景を感じさせてくれます。

バッハのカンタータのような
荘厳さがない分、
クープランのこの曲は、まさに私たちに
寄り添ってくるかのような親密さを
感じてしまいます。
あたかも天上から舞い降りた
二人の天使が、交互に
ささやきかけてくるかのようです。

併録された
「復活祭のためのモテット」は、
祝祭的な明るい曲調であり、
「3つのルソン・ド・テネブル」の後に
続けて聴くと、
深い夜が明けて明るい朝が訪れたような
ストーリーを感じてしまうほどです。
こちらも二人の二重唱が
素敵に響き渡ります。

「3つのルソン・ド・テネブレ」は、
1977年の本盤以降、
さまざまな録音が登場しています。
カークビーも、2005年には
再録音しています(私は未聴)。
しかし、本盤の魅力は
衰えることはないでしょう。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

(2025.5.13)

〔クープラン:ルソン・ド・テネブレ音盤〕

Сергей РемизовによるPixabayからの画像

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