アレッサンドリーニのバッハ管弦楽組曲

軽やか・艶やか・まろやかの21世紀録音

クラシック音楽を聴き始めた30数年前、
バッハの管弦楽組曲については
「リヒターの指揮した盤(61年録音)が
あればあとはいらない」的な
評論家の言があり、それを
鵜呑みにしたまま年月が過ぎました。
大好きな指揮者
ガーディナーの盤(83年録音)と、
日本人演奏家・有田正広が加わった
ラ・ストラヴァガンツァ・ケルン盤
(94年盤)を入手した程度でした。
振り返ってみると21世紀の録音がない!
というわけで、昨年
アレッサンドリーニ盤を
購入して聴いている次第です。

J.S.バッハ「管弦楽組曲全曲」
リナルド・アレッサンドリーニ

今日のオススメ!音盤

Disc1
J.S.バッハ:
 管弦楽組曲第3番ニ長調 BWV.1068
J.B.バッハ:
 序曲 ホ短調
J.S.バッハ:
 管弦楽組曲第1番ハ長調 BWV.1066

Disc2
J.S.バッハ:
 管弦楽組曲第4番ニ長調 BWV.1069
J.L.バッハ:
 序曲 ト長調
J.S.バッハ:
 管弦楽組曲第2番ロ短調 BWV.1067

コンチェルト・イタリアーノ
リナルド・アレッサンドリーニ
 (指揮&cemb)
録音:2018年

ガーディナー盤、
ラ・ストラヴァガンツァ・ケルン盤と
同じく、このアレッサンドリーニ盤も
ピリオド楽器による演奏であり、
テンポ感よく進行していくところは
小気味よいばかりです。
しかしこのアレッサンドリーニ盤は
さらに進化しているように感じます。

一つは軽やかさの度合いが
一段アップしています。
演奏スピードは
大きく違わないのですが、
リズムをしっかり刻み、
弾むような雰囲気を強く感じます。
「舞曲」の面を強調したような
印象を受けるのです。

そして音色の艶やかさも増しています。
古楽器特有の
「枯れた味わい」で終わらず、
美しく聴かせる工夫を
行っているものと思われます。
録音の関係もあるのでしょうが、
管楽器がややこもりがちの響きですが、
弦楽器は透明感があり、
美しい響きが生み出されています。
かつての、モダン楽器はモダン楽器、
ピリオド楽器はピリオド楽器、
というような形で
なくなってきているのはいいことです。
ピリオド楽器でも
モダン楽器演奏の良さを
取り入れようとしているのが
昨今の傾向であり、好感が持てます。

したがって、ガーディナー盤に比べ、
角が取れてまろやかになった
イメージがあります。
ラ・ストラヴァガンツァ・ケルン盤も
十分に滑らかで自然体だったのですが、
このアレッサンドリーニ盤は
よりまろやかになった演奏です。

軽やか・艶やか・まろやか、
それが21世紀の
古楽器演奏なのでしょう。
新しい録音による演奏を聴く意味は、
そうした新しさに
ふれることにあるのです。

ただし、この古楽器演奏は
やはり好き嫌いが生じそうです。
特に昔ながらの
ロマンチックな「エアー」が好きな方には
お薦めできません。
「これは違うだろ!」と怒り出しそうな、
かなり抑制された、歌わせない
「エアー」になっているのです。
私は本盤のあっさりしたエアーの方が
好きですが。

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さて、本盤のさらなる特徴は
併録作品にあります。
一つはJ.S.バッハの
6歳年上の再従兄弟にあたる
J.B.バッハ(ヨハン・ベルンハルト)の
作品です。
このJ.B.バッハもまた
4曲の管弦楽組曲を作曲していて、
本盤に収録されているのは
第3番ホ短調です
(全曲盤もヘンゲルブロック指揮の
フライブルク・バロック管のものが
よく知られています)。
もう一曲は、
大バッハのみいとこ(高祖父が同じ)の
J.L.バッハ(ヨハン・ルートヴィヒ)の
ト短調序曲です。

1685 J.S.Bach

どちらも大バッハの序曲と
似た味わいです。
大バッハの曲間に挿入されているため、
ぼんやり聴いていると、
どこで大バッハ序曲が終わり、
どこからこれらバッハの親族の曲に
移行したか、気がつかないくらいです。

難点を挙げるとすれば
ジャケットデザインでしょうか。
およそクラシックの音盤には
見えない上、
アレッサンドリーニが怖すぎます。

それはともかく、
まだまだ魅力的な管弦楽組曲全曲盤が
いくつも見当たります。
クラシック音楽の音盤の世界が
ますます広がっているのは
嬉しい限りです。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

(2025.4.15)

〔関連記事:バッハの音楽〕

バッハ:ゴルトベルク変奏曲

〔バッハ「管弦楽組曲」音盤〕

ichimiによるPixabayからの画像

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