ストリーミングで聴く「モーツァルト・ピアノ協奏曲第21番」

若さ溢れる演奏のK.467を3枚!

モーツァルトのピアノ協奏曲第21番も
数多くの音盤がリリースされ、
一つ一つ購入していたら
お金がいくらあっても
足りなくなります。
だからこそストリーミング。
例によって新しい録音を中心に
聴いているのですが、
以下の3つが気に入りました。


【今日の1枚目】ダナエ・デルケン

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モーツァルト:
 ピアノ協奏曲第21番ハ長調 K.467

ダナエ・デルケン(p)
ロイヤル・ノーザン・シンフォニア
ラルス・フォークト(指揮)

〔併録曲〕
メンデルスゾーン:
 ピアノ協奏曲 ニ短調 Op.40

ダナエ・デルケン(p)
ロイヤル・ノーザン・シンフォニア
ラルス・フォークト(指揮)
録音:2014年

1枚目は、あまり新しくはない
(2014年)のですが、
ついついジャケット写真が目を引き、
聴いてみたらなかなか良かったので
選びました。
ダナエ・デルケンによる演奏です。
とにかく若々しい演奏です。
彼女は1991年生まれですから、
このときまだ20代前半。
果敢に挑戦するような演奏に
好感を持ちました。

若いながら、技巧は確かだと感じます。
軽めのタッチから
瑞々しい音色がこぼれ落ちてきます。
第1楽章は速いテンポで
弾ききっているのですが、
ところどころに変則的に聞こえる箇所が
あるのです。詳しいことは
私などにはわかりませんが、
何らかの工夫や仕掛けを
施しているものと考えられます。

第2楽章はとろけるような旋律が
しっかりと際立たせてあります。
ダナエのピアノはここでは
丁寧に音を磨いて
はめ込んでいったような趣が
感じられます。
やさしさと柔らかさに満ちた
音響空間が広がります。
彼女がこのあと年を重ねたら、
この第2楽章はさらに
慈愛に溢れたものになるのでしょう。
第3楽章は再び元気いっぱいの
モーツァルトの横顔を垣間見ることの
できる演奏となっています。

指揮のフォークトは、
もともとピアニストであり、
しかもダナエの師でもあります。
しっかりとダナエに合わせ、
サポートしています。
併録のメンデルスゾーンも
素敵な演奏であり、
一聴の価値ありの録音です。

〔ダナエ・デルケンの音盤はいかが〕


【今日の2枚目】フルネル

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モーツァルト:
 ピアノ協奏曲第21番ハ長調 K.467

 (カデンツァ:ディヌ・リパッティ)
ジョナタン・フルネル(p)
ザルツブルク・モーツァルテウム管
ハワード・グリフィス(指揮)

〔併録曲〕
モーツァルト:
 ピアノ協奏曲第18番変ロ長調 K.456

 (カデンツァ:モーツァルト)
ジョナタン・フルネル(p)
ザルツブルク・モーツァルテウム管
ハワード・グリフィス(指揮)
録音:2023年

続いて若手の
ジョナサン・フルネルの演奏です。
フルネルは1993年生まれであり、
先程のダナエ・デルケンよりも
年下なのですが、
K.456の録音は2023年であり、
フルネル30歳の演奏となります。
こちらは若々しさとともに、
自信に満ち溢れたような
力強さを感じさせます。

私はこの曲の場合、第2楽章を
じっくり聴いてしまうのですが、
この演奏については
第1楽章に魅せられてしまいました。
軽やかかつ流麗に弾いているのですが、
一音一音が意味を持って響いてきます。
確かな技巧に裏打ちされた表現力が
聴く者の心に
突き刺さってくるかのようです。

第2楽章の美しさは
いうまでもないのですが、
それに続く第3楽章がさらに見事です。
一転して力強さを感じさせるタッチで、
駆け抜けるように弾ききります。
もちろん第1楽章からみせている
一音一音をゆるがせにしないスタイルは
最後まで維持されます。
結果として堅固な構造物としての
K.456の姿を聴き手は
目の当たりにすることになるのです。

このピアニスト、なんでも
エリザベート王妃コンクールの
2021年覇者だそうで、
技巧については折り紙付きです。
しかも現在31歳という俊英。
今後が楽しみなピアニストに
出会うことができました。

また、本録音は、
アルファ・レーベルによる、
若手から中堅までの注目ソリストを
起用するという
モーツァルトの協奏曲シリーズの
一環であり、これが第8弾のようです。
このシリーズの完成も楽しみです。

〔フルネルの音盤はいかが〕


【今日の3枚目】レヴィン

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モーツァルト:
 ピアノ協奏曲第21番ハ長調 K.467

 (カデンツァ:ロバート・レヴィン)
ロバート・レヴィン(fp)
エンシェント室内管
リチャード・エガー(指揮)

〔併録曲〕
モーツァルト:
 ピアノ協奏曲第24番ハ短調 K.491

 (カデンツァ:ロバート・レヴィン)
ロバート・レヴィン(fp)
エンシェント室内管
リチャード・エガー(指揮)
録音:2021年

3枚目は古楽器演奏のK.467です。
先程のフルネル盤が
第1楽章を聴かせるのなら、
こちらのレヴィン版も
負けてはいません。
第1楽章から弾け飛んでいるような
演奏です。
速いテンポでオケがぐいぐいと
押しきりながら、
フォルテ・ピアノが
縦横無尽に駆け抜けます。
なんとも若々しいモーツァルトです。
しかし前記二人に対して
こちらのレヴィンは録音時73歳。
恐るべき表現力です。

ところが第2楽章は
それほど駆け抜けません。
このところ古楽器演奏では
第2楽章もハイスピードで疾走する
演奏が多くなりましたが、
レヴィンはここで
アクセルを踏み込まず、
丁寧にドライブしています。
そこからの第3楽章がまたもや素敵です。
レヴィンだけでなくオケも
ギアを一段上げ、春の嵐のような
演奏となっていくのです。

録音も秀逸であり、
フォルテピアノのみならず、
各楽器の音が
明確にとらえられています。
クラシック音楽鑑賞において、
良い音は大切であるということを
再認識させてくれる音源です。

いずれにしてもこれは素敵な演奏です。
私はK.467の
フォルテピアノ演奏については、
スホーンデルヴルト盤を
愛聴していますが、
それと並ぶ名演と感じます。
本演奏は音盤として
入手したいと考えています。

なお、レヴィンは1993年に
モーツァルトのピアノ協奏曲全集の
録音を開始(オワゾリール・レーベル)、
8枚をリリースして
2001年で途絶えていたのですが、
そのシリーズ再開の第一弾のようです。
本演奏含め、残り5枚を
リリースするとのことですが、
これだけ時間が
あいてしまったのですから
全曲録音してほしいものです。

〔レヴィンの音盤はいかが〕


このほかにも、K.467の
素敵な録音をいくつか見つけました。
もはやクラシック音楽において、
ストリーミング利用は
欠かせないものとなっています。
いろいろな曲、
いろいろな演奏が楽しめます。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

(2025.3.18)

〔関連記事:モーツァルトの作品〕

モーツァルト:オーボエ四重奏曲
モーツァルト:レクイエム
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〔関連記事:ストリーミング〕

ベートーヴェン:トリプル・コンチェルト
ヴィヴァルディ:四季
ショパン:ピアノ曲集
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