カイ・トーマス「セレン」を聴く

ボーイ・ソプラノっていいですね

ボーイ・ソプラっていいですね。
不思議な魅力があります。
考えてみると、13歳くらいから
変声期がはじまります。
その前に音楽的素養を身につけ、
なおかつ生まれつき
澄んだ美しい声でなければ
ならないのですから、
ボーイ・ソプラノは、
まさに一握りの才能による、
一瞬の芸術といえるわけです。
さて、今日取り上げる、
カイ・トーマス少年による「セレン」、
最高です。

「セレン」カイ・トーマス

今日のオススメ!音盤

エセンヴァルズ:
 オンリー・イン・スリープ
ウェールズ民謡:
 スオ・ガン
ヴォーン・ウィリアムズ:
 サイレント・ヌーン
ヘンデル:
 オンブラ・マイ・フ
クロード=ミシェル・シェーンベルク:
 彼を帰して
モーツァルト:
 アヴェ・ヴェルム・コルプス
 主を褒め称えよ
ヘンデル:
 私を泣かせてください
フォーレ:
 慈愛深いイエスよ(レクイエムより)
ジョン・ブランニング:
 主は私の羊飼い
スタンフォード:
 青い鳥
ウェールズ民謡:
 とねりこの木立
ヤイロ:
 ザ・グラウンド

カイ・トーマス(ボーイS)
ロンドン・モーツァルト・プレーヤーズ
ペガサス室内合唱団
ボーン聖トーマス教会聖歌隊
ボーン・アンサンブル
アクセル・リクヴィン(Br)
録音:2019年

このカイ・トーマス君、
ただのボーイ・ソプラノではないという
印象を受けます。
単に「澄んだ綺麗な声」というだけでなく
心を揺さぶるような
周波数特性を持っています。
当時12歳であり、
技巧的には完璧などではありません。
しかし聴かせる何かがあるのです。
音の貧しいYouTubeで聴いたときには
感じなかった彼の持つ声の魔力が、
オーディオ・システムを通して
amazon musicで聴いたとき、
心と身体のすべてを
震わせてくれるように感じました。

全曲、魅力満載なのですが、やはり
4曲目「オンブラ・マイ・フ」、そして
8曲目「私を泣かせてください」の、
ヘンデルの2曲のオペラ・アリアが
最高です。
いろいろなソプラノ歌手が
これらの曲の名演を残していますが、
ボーイ・ソプラノはまた違った味わいで
心に染み入ってきます。

そして6曲目、モーツァルトの
「アヴェ・ヴェルム・コルプス」が
素敵です。
バリトンとの二重唱なのですが、
リクヴィンがカイの歌声を
しっかりと引き立て(ヴィブラートなど
技巧を使わず、丁寧に歌っている)、
その魅力を引き出しているのです。
もしかしたら「大人の声、邪魔」と
感じる方もいると思うのですが、
こうした曲にこそ、
ボーイ・ソプラノの魅力が現れると
私は思います。

9曲目、フォーレの
「慈愛深いイエスよ」も
素晴らしい出来映えです。
「レクイエム」の一節なのですが、
カイのソプラノ・パートによる
フォーレ「レクイエム」が登場すれば、
魅惑的な演奏となるのではないかと
想像してしまいます
(すでに1972年録音のコルボ指揮盤で
ボーイ・ソプラノのアラン・クレマンが
歌っているのですが)。

今日のオススメ!

ボーイ・ソプラノは素敵です。
大好きです。
でも、実はこれまで
ボーイ・ソプラノ単独の音盤を
聴きたいとは思っていませんでした。
クラシック音楽の合唱作品
(モーツァルトのレクイエム、
マーラーの交響曲第4番など)で、
本来ソプラノが歌うべきところを
ボーイ・ソプラノが
歌ったというようなものを
好んで聴いていました。
でも、2020年、
Youtubeでこの曲を聴いてから、
どうしてもこの子の音盤を
聴いてみたいと
思うようになったのです。

Cai Thomas sings Suo-Gân

なんでもクラウドファンディングでの
支援が集まって実現した
アルバム製作だったようです。
熱烈なファンが数多くいたのでしょう。
わかります。この歌声には
そうした魅力があるのです。

やはり2020年の本盤発売当初、
しっかり買っておけばよかった、
この音を音盤から聴きたかった。
今、とても後悔しています。
クラシックの音盤は
今や少量生産の時代です。
欲しいと思ったらすぐ買う。
それが鉄則であることは
重々承知しているのですが、
財力に限りがあり、新盤を
頻繁に購入するなどできない状態です。
吟味に吟味を重ねているうちに廃盤。
ああ…。

今まで何度そんな経験をしたことか。
この音盤もそうです。
気がついたときには入手困難。
2025年2月現在で、
amazonのマーケット・プレイスで
中古盤が12,600円。
出せません。
で、そんなときこそストリーミング。
いい時代になりました。

amazon music unlimited

これからもこうしたことを
繰り返すのでしょうが、
ストリーミングを活用しながら
音楽と付き合っていくべき時代です、
愉しみましょう。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

(2025.3.4)

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【今日のさらにお薦め3作品】

パレストリーナ:合唱作品集
オルフ:カルミナ・ブラーナ
モーツァルト:レクイエム

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