
もっと聴かれるべき作曲家、C.シュターミッツ
これまであまり注目してこなかった
作曲家の一人が、
このカール・シュターミッツです。
クラリネット協奏曲集に
含まれていたかな、という程度の
認識しかありませんでした。
こうしてBOXものに
単独の作品集があると、
理解が深まっていきます。
DHM-BOX第2集の一枚です。
C.シュターミッツ
「シンフォニアと協奏曲」

カール・シュターミッツ:
ヴィオラ協奏曲ニ長調
ウルリヒ・コッホ(va)
コレギウム・アウレウム
カール・シュターミッツ:
ヴァイオリン、ヴィオラ、
チェロのための協奏交響曲イ長調
フランツ=ヨーゼフ・マイアー(vn)
フランツ・バイヤー(va)
トーマス・ブレース(vc)
コレギウム・アウレウム
カール・シュターミッツ:
シンフォニア変ロ長調
コレギウム・アウレウム
録音:1963年
カール・シュターミッツは
1745年生まれですから、
モーツァルトの11年前、
ほぼ同世代の作曲家であるといえます。
バッハと同様、シュターミッツも
音楽一族であり、
特にカールの父・ヨハンは
マンハイム楽派の開祖として有名です。
したがってカールはヨハンから
十分な音楽教育を施され、父親同様、
マンハイム宮廷楽団で
活躍していました。
後年はヴァイオリニストとして
パリ、プラハ、ロンドン等を
渡り歩き、活躍を重ねました。

1曲目、ヴィオラ協奏曲ですが、
出だしを聴く限り、モーツァルトです。
いや、この時代(古典派)の
作曲家の多くは、
こうした明るく愉悦のある音楽を
創り上げていたのでしょう。
そしてそれらの音楽は
モーツァルトに集約され、
他の作曲家はモーツァルトの陰に
隠れてしまったことがわかります。
この曲のヴィオラ・パートは、
技巧的な要素が
あまり盛り込まれていないせいか、
美しい旋律がそこここに聴き取れます。
古典派ならではの
華やかで優雅な音楽に、
ヴィオラの渋みのある音色が
見事に調和しています。
それでいて、独奏部に入ると
憂いを湛えた旋律が響き渡り、
その対比が鮮やかな曲となっています。
C.シュターミッツはヴィオラ協奏曲を
複数曲作曲したようですが、
演奏されるのはもっぱら
このニ長調だけのようです。
音盤で探しても、
これ以外は見つかりませんでした。
なお、モーツァルトに
ヴィオラ単独の協奏曲が
存在しないことを考えると、
この曲はもっと評価されていいような
気がします。
2曲目はヴァイオリン、ヴィオラ、
チェロのための協奏交響曲。
多作家だったC.シュターミッツは、
バロックの合奏協奏曲に倣った
「協奏交響曲」も40曲近く残しています。
2楽章のシンプルな構成ですが、
明るく爽やかな音楽が
広がっていきます。
なお、ヴィオラを担当している
フランツ・バイヤーは、
モーツァルトのレクイエムの校訂版
(バイヤー版)をつくった、
あのバイヤーなのでした。
3曲目はシンフォニア。
交響曲というジャンルの、
最初期の音楽です。
C.シュターミッツは全部で
51曲の交響曲を作曲したのですが、
どれもしっかりとした形式に則った、
明朗活発な音楽となっています。
この変ロ長調も、形式美のある
3楽章構成の素敵な曲です。

さて、演奏のコレギウム・アウレウムは
シュターミッツのその形式美を
しっかりと再現し、
その魅力を十二分に引き出しています。
1963年という、
いささか古い録音となってしまい、
音像が不鮮明な部分もあるのですが、
聴いて楽しめる音盤であることは
間違いありません。
かつては「管楽器曲の作曲家」として
認識されていた
C.シュターミッツですが、
作品の掘り起こしが進むにつれて、
交響曲や協奏交響曲を発展させた
功績が認められるようになりました。
それによって録音が多くなってきたのは
喜ばしいことです。しかし、
交響曲と協奏曲を50曲以上残し、
さらに多数の室内楽作品も残したという
多作家・シュターミッツです。
まだまだ十分とはいえません。
この素敵な音楽が
さらに広く知られることを望みます。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。
(2025.1.26)
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