
ザ・ナイツによるクロイツェル・プロジェクト
やはりストリーミングは素敵です。
身のまわりのすべてのものの
物価が上がり、
音盤とてその例外ではありません。
かつては輸入盤であれば2000円を切る
値段で購入できたのですが、
今では3000円を超えるものもあり、
あれもこれも買っていられる時代では
なくなりました。
というわけで、物珍しいものについては
ストリーミング。
今日はこのベートーヴェンの
クロイツェル協奏曲。
そんなものあったっけ?
つくった人がいたのです。
クロイツェル・プロジェクト
エリック・ジェイコブセン&ザ・ナイツ

ベートーヴェン/C.ジェイコブセン編:
クロイツェル協奏曲
(ヴァイオリン・ソナタ第9番イ長調
Op.47より)
コリン・ジェイコブセン(vn)
ザ・ナイツ
エリック・ジェイコブセン(指揮)
C.ジェイコブセン:
Kreutzings
ザ・ナイツ
エリック・ジェイコブセン(指揮)
クライン:
速記
コリン・ジェイコブセン(vn)
エミリー・ダジェット・スミス(vn)
マリオ・ゴトー(va)
エリック・ジェイコブセン(vc)
カレン・オズニアン(vc)
ローガン・コール(cb)
ヤナーチェク/E.ジェイコブセン編:
クロイツェル・ソナタ
(弦楽四重奏曲第1番JW7/8より)
ザ・ナイツ
エリック・ジェイコブセン(指揮)
録音:2020年
このように、わけのわからない
プログラムとなっているのですが、
発売元のHPには、
こう書かれてあります。
「ベートーヴェンの
ヴァイオリン・ソナタ第9番、
通称「クロイツェル」から触発されて
ロシアの小説家トルストイは
「クロイツェル・ソナタ」を書き、
そしてその
「クロイツェル・ソナタ」から
インスピレーションを受けた
ヤナーチェクは弦楽四重奏第1番
「クロイツェル・ソナタ」を
作曲しました。それらの作品に、
トルストイの「音楽は
感情の速記である」という言葉から
タイトルを付けた
アンナ・クラインの作品を加えた
クロイツェル・プロジェクト」。
つまりは
連想ゲームみたいなもののようです。
それはともかく、お目当ては
第一曲目の「クロイツェル協奏曲」。
ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ
10曲の中でも最も人気のある
第9番「クロイツェル」に
オーケストレーションを施し、
協奏曲として
聴かせようとしたものです。
これがなかなかに面白さを感じさせる
曲に仕上がっています。
ピアノ・パートであるはずの旋律が
クラリネットやフルートで奏でられ、
まったく違った印象となっています。
演奏のザ・ナイツは
小編成のオケであり、
協奏曲というよりは室内楽のような
響きで聞こえてくるのです。
録音も優秀で、それらの楽器一つ一つが
しっかりと輪郭を持って
立ち現れてくるのです
そのなかを
C.ジェイコブセンのヴァイオリンが
愉しそうに跳ねまわっています。
特に第2楽章の15分は、
愉悦に満ちた音楽が展開していきます。
ここ一週間ほど、毎日この部分を
繰り返し聴いてしまいました。
2曲目、そのヴァイオリニスト、
C.ジェイコブセンの自作曲
「Kreutzings」。
7分弱の小品ですが、
こちらも愉しい一曲です。
3曲目は
クラインの弦楽六重奏曲「速記」。
一転して、落ち着いた雰囲気、いや、
どことなくどろどろとした雰囲気の
曲が始まります。
なぜこれが「速記」?
途中から聴きやすい旋律が
現れてくるとともに、
テンポが上がってくるのですが、
とても「速記」とまではいきません。
でも、演奏時間約11分、
面白く聴くことができます。
作曲者アンナ・クラインは、
1980年ロンドン生まれ。
「2015年にグラミー賞の
現代クラシック作曲家賞に
ノミネートした
アコースティックおよび
エレクトロ・アコースティック音楽の
作曲家」なのだそうです。
最後の曲・ヤナーチェク
「クロイツェル・ソナタ」は、
弦楽四重奏曲を管弦楽版に
アレンジしたものとなっています。
ベートーヴェンの方は
室内楽的な編曲でしたが、
こちらは厚みのある
オーケストレーションであり、
また違ったイメージで
聴かせてくれます。
ゲテモノを集めたような
音楽集だと思ったのですが、
一通り聴き終えると、
企画の面白さに唸らされます。
なによりもザ・ナイツの面々が、
愉しみながら音楽を紡いでいるようすが
音から伝わってくるのです。
素敵な音楽に出会うことができました。
そのオーケストラのザ・ナイツは、
どこかで聞いたことがあると思ったら、
ギル・シャハムのヴァイオリン協奏曲の
伴奏(ベートーヴェン、ブラームス、
プロコフィエフ、バルトーク)を
担当していました。
軽快で鮮烈な演奏をしていましたが、
それはこの録音においても同様です。
なお、ザ・ナイツを創設した
ジェイコブセン兄弟のうち、
エリック・ジェイコブセンは、かつて
NHK「えいごであそぼ」に出演していた
エリック・ジェイコブセンか!?
もしや同一人物ではないかと思い
調べてみましたが
同姓同名の別人でした。
※E.ジェイコブセン(指揮者・ザナイツ)
※E.ジェイコブセン(作曲家・えいごで)
それはともかく
ストリーミングだからこそ
出会える音楽があります。
この一枚もそうです。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。
(2025.1.21)
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