アニマ・メア わが魂~中世の聖なる音楽

聴き手の耳は、時空間を越えて

中世の音楽に惹かれ、それが
どんなものかよくわからないまま、
いくつか音盤を購入しています。
本盤もその一つです。
「アニマ・メア わが魂
~中世の聖なる音楽」と題された本盤、
不思議な音楽空間が広がります。

「アニマ・メア-わが魂
 ~中世の聖なる音楽」

今日のオススメ!音盤

作者不詳:
 汝の婚礼の間を飾れ(Erfurt,1301)
 われは信ず、わが贖い主はいきたまう
  (St.Gallen,after 1000)
ハース:
 天主の聖母マリア
作者不詳:
 救いのうちにある者
  (St. Gallen, after 880)
 光なり日なるキリスト
  (Milan,before 534)
 水と求める鹿のように
  (St.Gallen,after 880)
ヒルデガルト・フォン・ビンゲン:
 おお新緑よ、その生命力よ
作者不詳:
 われらは粗布と灰をもちて
  (Erfurt,1301)
 あがめよ、主の十字架を憐れみたまえ
  (Paris,after 1150)
 あがめよ、主の十字架を憐れみたまえ
  (Notre Dame,after 1200)
 マニフィカト
  (Regensburg,after 1250)
 主よ、われらの祈りを聞きたまえ
  (Erfurt,1301)

アンサンブル・コスメディン
録音:2009年

本盤に収録された音楽の多くは
「作曲者不詳」。
「作曲」という概念もなく、
したがって「作曲者」の名前も
記録として残されていないのです。
何度か聴いていますが、中世の音楽は、
やはりわかりません。
わかりませんが、心が揺さぶられます。
これまでとりあげたものとしては
いくつかの「グレゴリオ聖歌」のほかには
デラー・コンソートによる
「ランス大聖堂の音楽と
パリ・ノートルダム楽派の音楽」

そしてマンロウによる
「ゴシック期の音楽」といったあたりが
それにあたります。本盤は、
それらともまた異なる音楽であり、
一層の神秘性を帯びています。

ANIMA MEA

1曲目「汝の婚礼の間を飾れ」、
2曲目「われは信ず…」は、
そうしたノートルダム楽派の音楽に
近いものを感じます。
記載されている
(Erfurt,1301)
(St.Gallen,after 1000)は、
ドイツの地名
(エアフルト、ザンクトガレン)であり、
どちらもキリスト教の栄えた地です。
数字はおそらく作曲されたと
考えられる年代でしょうか。
この2曲で、聴き手の耳は、
時空間を越えて中世のドイツの地へと
転送されるのです。

ところが3曲目でいきなり、
演奏団体アンサンブル・コスメディンの
メンバーであるクリストフ・ハースの
自作曲が挿入されます。
伴奏は中世の薫りがするのですが、
歌というよりは
朗読のようなものが語られ、
ほんの少しだけ風景が変化します。

そして4曲目から6曲目にかけて、
さらに時代は遡った印象を受けます。
4曲目「救いのうちにある者」は、
演奏時間が13分強。
その間、音楽というよりも
呪術のような世界が続きます。
5曲目「光なり日なるキリスト」に
いたっては「神秘の音」という印象です。
もはや宇宙空間に
突き抜けてしまったかのようです。
6曲目で再び
中世ヨーロッパへと帰還します。

7曲目はヒルデガルト・フォン・ビンゲン
いくつかの音盤を所有していますが、
ヒルデガルドの音楽はやはり
「神との交唱」というべき
崇高さを持っています。
8曲目以降は「作者不詳」。
それぞれの曲はドイツ
(エアフルト、レーゲンスブルク)と
フランス(パリ、ノートルダム)に
またがります。

Amazon Music Unlimited

すべての曲は
「C.ハース編曲」となっています。
どこをどれだけアレンジしたのか
不明ですが、
ここで演奏されている音楽が
そのまま1000年前の姿ではないと
いうことでしょう。
それでもここには神々しいまでの
中世の祈りが聴き取れます。
心を癒やす音楽を求めている方に
お薦めします。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

(2024.12.10)

〔関連記事:中世の音楽〕

「ゴシック期の音楽」
「ランス大聖堂の音楽」

〔NAXOS:中世の音楽〕

Gordon JohnsonによるPixabayからの画像

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