ストリーミングで聴く「シベリウス・ヴァイオリン協奏曲」

美しいヴァイオリンの音色で聴くシベリウス

ストリーミングでいろいろな演奏を
聴くことができる時代となりました。
当サイトでも、
一風変わった演奏を聴くという趣旨で、
ストリーミング配信の演奏を
取り上げてきましたが、
今日は「一風変わっ」ていない、
スタンダードでありながら、
かつ美しい演奏を探してみました。
シベリウスのヴァイオリン協奏曲です。
多数の音盤がひしめく中で、
美しい演奏もまた数多く存在する
曲目です。
最近何度か繰り返して聴いたこの3枚は、
いずれもあまり知られていない
演奏だと思います。

【今日の1枚目】ユン・ソヨン

【今日の1枚目】ユン・ソヨン

シベリウス:
 ヴァイオリン協奏曲ニ短調 op.47

〔併録曲〕
チャイコフスキー:
 ヴァイオリン協奏曲ニ長調 op.35

ユン・ソヨン(vn)
ピオトル・ボルコフスキ(指揮)
ゴジュフ・フィルハーモニー管弦楽団
録音:2012年

1枚目は、韓国の演奏家
ユン・ソヨンの音盤です。
1984年生まれ、現在最も脂の乗った
時期の演奏家といえましょう。
メニューイン国際コンクールを
はじめとする数々のコンクールでの
優勝経験を持つ、実力派です。
ジャケット写真は
聴き手を睨みつけているような
怖い表情なのですが、美人さんです。

今まで知らなかった演奏家でしたが、
しっかりした演奏を聴かせてくれます。
何か新しいことを
やろうとしてはいません。
オーソドックスなスタイルでありながら
芯のしっかりした、
力強い演奏を展開しています。
聴く限り、技術も十分であり、
表現力も申し分ありません。

ストリーミングだけでなく、
CDも存在しているのですが、
現在流通していないようです。
10年くらい前の、しかも
マイナー・レーベルからの
リリースですから、
廃盤になっているのかもしれません。

素敵な演奏家を見つけたのですが、
このユン・ソヨン、
録音はほとんど見当たりません。
自身がメインでの録音は
この一枚だけのようです。
他の演奏を聴きたいと思ったのですが、
残念です。
なお、YouTubeに、
ユン・ソヨンのシベリウス演奏の動画が
アップされていました。

Soyoung Yoon plays Sibelius

2011年のヴィエニャフスキ
国際ヴァイオリン・コンクールにおける
ピヤロフスキ指揮ポズナン・フィルの
伴奏による演奏です。

【今日の2枚目】エスター・ユー

【今日の2枚目】エスター・ユー

シベリウス:
 ヴァイオリン協奏曲ニ短調 op.47

〔併録曲〕
グラズノフ:
 ヴァイオリン協奏曲イ短調 op.82
シベリウス:
 ヴァイオリンと弦楽のための op.117
グラズノフ:
 グランド・アダージョ

エスター・ユー(vn)
ウラディーミル・アシュケナージ(指揮)
フィルハーモニア管弦楽団
録音:2014年

2枚目はエスター・ユー
こちらも東洋系の顔立ちの女性ですが、
アメリカ生まれの
ヨーロッパ育ちなのだそうです。
1994年生まれですので、
現在30に届いたばかりの新鋭です。
ヴィエニャフスキ国際
ヴァイオリン・コンクールの
ジュニア部門、
国際シベリウス・ヴァイオリン・
コンクール、
エリザベート王妃
国際音楽コンクールなどでの
受賞歴を持つ実力者とのことです。

こちらも素晴らしい演奏です。
この録音がデビュー盤なのですが、
気負ったところなどまったくなく、
軽々と、
しかも力強く弾きこなしているのです。
音色も芳醇で美しく、
うっとりとしてしまいます。
アシュケナージのサポートも万全、
フィルハーモニア管の演奏も
素晴らしく、
若い演奏家をもり立てています。

併録曲のグラズノフの協奏曲と
グランド・アダージョ、そして
シベリウスの作品117も
素敵な演奏です。
エスター・ユーのヴァイオリンが、
作品の持つ旨味を
最大限に引き出しています。
この音盤は機会があったら
購入したいと思っています。

【今日の3枚目】石川静

【今日の3枚目】石川静

シベリウス:
 ヴァイオリン協奏曲ニ短調 op.47

〔併録曲〕
ブルッフ:
 ヴァイオリン協奏曲第1番
  ト短調 op.26

石川静(vn)
イエジ・ビエロフラーヴェク(指揮)
ブルノ国立フィルハーモニー管弦楽団
録音:1978年

3人目のヴァイオリニスト・石川静は、
以前ミズリヴェチェク
ヴァイオリン協奏曲全集でも
取り上げました。
1972年の第6回ヴィエニアフスキ
国際ヴァイオリン・コンクールで第2位、
1976年のエリザベート王妃
国際音楽コンクールで第5位などの
受賞歴を持つ実力者です。
この録音はコンクールのすぐあとの
20代半ばでの録音となっています。

ミズリヴェチェクの協奏曲でも
感じたことですが、
石川静のヴァイオリンは自然体であり、
何か目立ったことを
しているわけではありません。
それでいてその音色は
心にじわじわと染み込んでくるような
美しさに満ちているのです。
ミズリヴェチェク以上に、
このシベリウスの協奏曲は、
その音色の美しさが前面に押し出され、
曲の魅力を十二分に
引き出しているのです。
自らの技巧で聴かせるのではなく、
その曲の味わいを
すべて音に表すことのできる
演奏家なのです。

音盤なのですが、
AmazonおよびHMVを検索しても
見当たりません。
中古を探しても、この装幀での
LPレコードしか出てきません。
ストリーミングで
聴くしかないようです。

1865 Sibelius

それにしても、音盤を購入しなくても
いろいろな演奏を聴くことができる、
いい時代になりました。
世の中を見渡すと、心を病むような
ニュースしか流れてこないのですが、
せめてシベリウスの
ヴァイオリン協奏曲を聴いて、
清らかな心を保っていたいものです。
やはり、クラシック音楽は愉し、です。

(2024.11.24)

〔エスター・ユーの音盤はいかが〕

〔石川静の音盤はいかが〕

【今日のさらにお薦め3作品】

マリア・グリンベルク
「SF交響ファンタジー第1番」
テレマン:木管楽器協奏曲

【こんな音盤はいかがですか】

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